楽天VTとeMAXIS Slim 全世界株式(除く日本)を徹底比較

つみたて次郎です。

インデックス投資では、世界中に分散投資を行うのがセオリーです。

特に長期投資では株式をポートフォリオのメインに添えるのが好ましいですが、全世界に投資するタイプの金融商品であれば、それ1本で株式への投資が完了してしまいます。

いかなる場合でも世界中の株式市場の平均点を取り続ける、究極のインデックスファンドといえます。

今回は、国際分散を行う全世界株式型インデックスファンド2種を比較してみたいと思います。

 

楽天・全世界株式インデックス・ファンド(楽天VT)
eMAXIS Slim 全世界株式(除く日本)(Slim全世界株)

 

それぞれ投資信託なので、少額からの積立投資が可能であり、つみたてNISAの投資対象にもなっています。

また、楽天VTは楽天証券のiDeCoでも積立が可能になっています。

参考記事「楽天証券でiDeCo(イデコ)を始めるメリットとおすすめファンド

※追記…2018年10月31日よりeMAXIS slim 全世界株式(オール・カントリー)が登場し、日本株含めた国際分散投資が1本で可能になりました。

 

楽天VTの概要(2019/7/16現在)

名称 楽天・全世界株式インデックス・ファンド
運用会社 楽天投信投資顧問㈱
設定日 2017/9/29
信託報酬 0.2196%
純資産額 約238億円
運用方法 ファンド・オブ・ファンズ
連動指数 FTSEグローバル・オールキャップ・インデックス
投資対象 全世界株式(日本含む)
保有銘柄 8,069種類※

※2018年末時点。

日本株式を含む、全世界の株式に時価総額加重平均に沿った比率で投資を行うことができます。

また、ファンド内で別のファンドを保有するファンド・オブ・ファンズ形式となっており、海外ETFであるバンガード・トータル・ワールド・ストック(VT)のみとなっています。

つまり「VTを買い付けるだけの投資信託」ということになります。そのため「楽天VT」と呼ばれています。

保有銘柄は1種類のみですが、間接的にVTと同じ銘柄数に投資していることになります。

詳しい内容については参考記事をご覧ください。

参考記事「楽天・全世界株式インデックス・ファンド(楽天VT)を徹底分析。これ1本で国際分散投資が可能な投資信託!

なお、全く同じ指数に連動する商品としてSBI・全世界株式インデックス・ファンドが存在していますが、個人的には楽天VTのほうが魅力的ではないかと考えています。

参考記事「楽天VT vs SBI全世界株式(旧:EXE-iつみたてグローバル)

 

Slim全世界株の概要(2019/11/1現在)

名称 eMAXIS Slim 全世界株式(除く日本)
運用会社 三菱UFJ国際投信㈱
設定日 2018/3/19
信託報酬 0.1144%
純資産額 約95億円
運用方法 ファミリーファンド
連動指数 MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス
投資対象 全世界株式(日本除く)
銘柄銘柄 2,438種類※

※2018年末時点。

こちらは日本株式を除く全世界の株式に投資することができます。時価総額に基づいた比率というのは共通です。

楽天VTと違い、指数に採用されている銘柄を実際に保有する現物運用になっています。

設定されてまだ半年程度なので純資産総額は少ないですが、ファミリーファンド方式のためマザーファンドは巨大です。

出典「三菱UFJ国際投信

外国株式(=先進国)と新興国株式という2つのマザーファンドを利用しています。ちなみにこれはeMAXIS slim 先進国株式インデックスeMAXIS Slim 新興国株式インデックスと共通しています。

また、旧シリーズであるSlimではないほうのeMAXISも同様であり、特にeMAXIS 全世界株式インデックスは商品設計まで全く同じになっています。(信託報酬だけ0.648%と割高)

外国株式マザーファンドの残高は約3,330億円・新興国株式マザーファンドの残高は約497億円になっています。(2017/5/12現在)

ちなみに2018年8月末時点では、外国株式が88.5%・新興国株式が11.5%になっており、全体の9割近くは先進国株式になっています。

なお名前が似ているeMAXIS Slim全世界株式(3地域均等型)というファンドも存在していますが、こちらは日本株・先進国株・新興国株に3分割で投資するというコンセプトになっています。

本記事で多用するSlim全世界株は(3地域均等型)ではなく(除く日本)のことですのでご注意ください。

 

 

両者の比較(2018/7/16現在)

略称 楽天VT Slim全世界株
信託報酬 0.2196% 0.1144%
保有銘柄 8,069種類 2,438種類
日本株有無 日本株含む 日本株除く
純資産額 約238億円 約68億円

 

細かい違いはありますが、最大の違いは日本株式を含んでいるかどうかです。

時価総額加重平均の場合、全世界の中で日本株式が占める割合は約8%程度となっているので、それが含まれているのが楽天VT・除かれているのがSlim全世界株式となります。

その他大きな違いとしては、実質的な保有銘柄数に3倍以上の差がついています。

楽天VTのベンチマークであるFTSEグローバル・オールキャップ・インデックス時価総額のほぼ100%をカバーする広域な指数ですが、Slim全世界株のベンチマークであるMSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス時価総額の上位約85%をカバーするにとどまります。

銘柄数の差は、時価総額の下位15%をカバーしているかどうかの差であるといえます。

時価総額の小さい小型株は、長期的にハイリスクハイリターンになる傾向があることや、インデックス投資では可能な限り幅広い銘柄に投資するのが原理的であるため、楽天VTのほうが有利なポイントといえるでしょう。

純資産総額は楽天VTのほうが早く設定されたこともあり大きくリードしていますが、既存のマザーファンドの規模を含めればSlim全世界株式に分があります。

 

実質コストについて

楽天VTについては、先日第1回運用報告書が発表されたため、実質コストが判明しました。

参考記事…楽天バンガードの第1回運用報告書から実質コストを計算してみる【VT・VTI・VWO・VYM】

また、Slim全世界株式はまだ判明していませんが、同じマザーファンドを使用し同様の運用方針が定められているeMAXIS 全世界株式ファンドが存在するため、おおよその実質コストが予想可能です。

信託報酬と隠れコスト、その合計である実質コストは次の通りです。

楽天VT Slim全世界株
信託報酬 0.2196% 0.15336%
隠れコスト 0.2724% 0.087%※
実質コスト 0.4920% 0.24036%

※eMAXIS 全世界株式ファンドの直近を予想値として表記。

隠れコストは3倍以上の差がついています。

実質コストで見ても倍以上の差がついていおり、少なくとも現時点ではSlim全世界株が大きくリードしています。

Slim全世界株の伝統的な現物運用に対し、楽天VTは海外ETF(=VT)で運用するという独自の方法のため、隠れコストが多く発生してしまった可能性があります。

また、運用報告書に記載のある隠れコストは不完全な部分もあり、代表的なところでは三重課税によるロスが含まれていません。

楽天VTは、米国籍ETFを経由して米国外株(=米国から見た外国)に投資するため、現地国→米国→日本と3カ国で課税されてしまうという大きな弱点があります。

参考記事「投資信託やETFにおける三重課税問題について

楽天VTの投資先であるVTの配当利回りは現在2.2%であり、投資先の約半分が米国外となっています。米国外における現地課税を10%と仮定すると

2.2%×50%×10% = 0.11%

年間でこれだけのロスが発生するため、実際にはさらに大きな差が開くと思われます。

とはいえ、楽天VTはゼロからマザーファンドとを立ち上げているため運用当初における費用が多く発生している可能性があることや、Slim全世界株式は推定値に過ぎないため、あくまで参考程度の比較となります。

とはいえこれほど不利な条件が重なっていれば、楽天VTが実質コストでSlim全世界株に勝つのは厳しいのではないかと思います。

 

比較まとめ

これまでの情報をまとめると、それぞれ次のような棲み分けになるかと思います。

 

楽天VT
・日本株も含め1本で全世界株式に投資したい。
・時価総額下位15%の小型株にも投資したい。

Slim全世界株
・日本株は不要または別ファンドで投資したい。
・小型株への投資より実質コストを重視したい。

 

コストを除けば、日本株の有無・小型株の有無が大きな違いとなります。

とはいえ、楽天VTは推定の実質コストが現時点では高めであるため、うまく小型株で超過リターンを得られたとしても帳消しになってしまう恐れがあります。

そのため基本的には、日本株の有無で選んでしまってよい二択だと思います。

楽天VTはある程度のコストを犠牲にして、日本株を含めた国際分散投資を1本で行うためのファンドと割り切ったほうがよいかもしれません。

仮に1本で完結させたい場合でも、全体の10%以下に過ぎない日本株を捨て、コストを最優先してSlim全世界株のみという選択肢も考えられますが、どこか中途半端な感じは否めません。

複数ファンドの保有やリバランスを許容できるのであれば、別途日本株式ファンドを時価総額に合わせて保有するという手もあります。

いずれもコストと利便性のトレードになりますので、比較しながら検討していきたいですね。

※追記…2018年10月31日よりeMAXIS slim 全世界株式(オール・カントリー)が登場し、日本株含めた国際分散投資が1本で可能になりました。

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国際分散次郎

楽天VTとeMAXIS Slim 全世界株式(除く日本)を徹底比較” に対して1件のコメントがあります。

  1. 匿名 より:

    Slim全世界株ではなくSlim先進国株(0.11772%)とSlim新興国株(0.20412%)を組み合わせて計算しても、新興国の比率が2割を超え始めたところで、逆転しますよ。
    リバランス不要で、新興国比率が増大しすることが長期的な確率は高いのに、信託報酬維持するためには、新興国株式分を取り入れるのは当たり前でしょ。
    どうして、現在の配分で終わりと短絡志向なのでしょうか。
    そもそも、資産が500万、1000万と資産が増加してくると、月の購入分では到底リバランスできませんよ。
    よく考えると分かることだけど、毎月積み立てを10年すれば、元本部分だけでも月の増資部分は120分の1にまで割合が減少しますよ。リバランスのためには、課税覚悟の売却調整が必要になります。これを怠ると、長期では必ずリターンの損失が生じます。
    日本株式は別途でも、そうそう大きな割合の増大や減少に合いにくいかもしれませんが、新興国株式は一気に2倍3倍に短期間で暴騰したり、一気に3分の1まで暴落しますよ。20年近く投資すると、そのあたりのことを熟知してしまいます。20年、30年という長期では新興国株式を取り除いた投資は、リターンを減少させるでしょうね。
    表面上や机上の理論だけでなく、もっともっとお勉強をしましょう。

  2. つみたて次郎 より:

    コメントありがとうございます。
    おっしゃる通り、新興国比率やリバランスまで考えれば一概に有利とはいえないと思います。

    しかし新興国比率については、急激に2倍に増える可能性は低いことや、新興国市場の成熟に伴い信託報酬にも変化が出る可能性があること、全世界株式は相対的に不人気であることを踏まえれば、現時点で先進国株+新興国株に分けて保有するのは一定の合理性があると思います。
    リバランスについてはまさにその通りだと思いますが、今回は楽天VTとの比較が趣旨なので軽く紹介するにとどめました。

    今後も気になる点がございましたらご指摘お願いいたします。

  3. 匿名 より:

    はじめまして!いつも楽しくよませていただいてます!
    とりわけ、こちらの記事は何度も読みました!
    次郎さんご自身は、現在楽天VTとeMAXIS Slimのどちらに積立されていますか?
    また、今後は片方へと変更する予定はありますでしょうか?

  4. つみたて次郎 より:

    どうもはじめまして!いつもありがとうございます。
    申し訳ないですが、私自身は米国株重視ですのでどちらにも投資していません。(現在は楽天VTIとSlimS&P500を積立中です)
    全世界株式ファンドで選ぶのであれば、私ならeMAXIS Slim 全世界株式(ただしオール・カントリーのほう)ですね。
    こちらの記事もご覧ください。

    https://siegeljiro.com/rakutenvt-slimallcountry

    正直なところSlim全世界株(日本除く)はかなり中途半端な立ち位置になってしまったので、人気を確立した楽天VT vs 現物運用のSlim全世界株(オール・カントリー)という棲み分けになるのではないかと思っています。

  5. まさ より:

    初めまして。いつも楽しく読ませていただいております。大変勉強になります。
    emaxisslimの8資産均等と全世界株(日本除く)を1:1で積み立てていこうかと考えています。
    オールカントリーも考えたのですが、8資産を入れると日本の割合が高くなるので、日本除くのほうにしたいと考えています。今後日本除くは人気なしで、オールカントリーに抜かれてしまうのでしょうか。そうなるとすると、困ったことはありますか。

  6. つみたて次郎 より:

    >>まさ様

    どうも初めまして。いつもありがとうございます。
    その組み合わせはかなりバランスがいいですね!
    オール・カントリーが登場したので、今後日本除くの人気が下がっていくと純資産額が増えず、見えないコスト増につながる可能性があります。
    とはいえ日本除くについては既に30億円の純資産総額がありますし、「日本以外にまとめて投資したい」という需要は結構ありそうなので十分な選択肢だと思います。
    そもそも相手となるオール・カントリーが未知数なので、逆に日本除くのほうが実績は上ですからね。
    なので単純に日本含む・日本除くのどちらがよいかで判断してよいのではないかと思います。

  7. まさ より:

    丁寧なコメント、ありがとうございます。
    次郎様のコメントをうかがえて、安心しました。
    少しずつですが、つみたて頑張りたいと思います。

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