投資信託やETFにおける三重課税問題について

つみたて次郎です。

インデックス投資家にとっては特に重要なのは、コストを最小限に抑えることです。

コストには、売買手数料や信託報酬、そして税金があります。

特に税金は、投資におけるコストとしては最も大きいものであり、慎重に考えていく必要があります。

今回は、その税金の中でも特に重要な「三重課税問題」について解説していきます。

 

税金の仕組みと二重課税

日本においては、株式や投資信託などの金融商品で得た利益については配当金と売却益それぞれに20.315%課税されます。(本記事では四捨五入して20%という表記で進めていきます)

そして日本以外の株式や、日本以外の株式を含む投資信託やETFを購入する場合、日本政府以外に支払う税金が発生します。

そして基本的に、売却益は課税されず、配当金にのみ課税されるという特徴があります。

例えば米国株の場合、売却益は国内で20%課税されるだけですが、配当金にはまず米国政府より10%課税され、その後日本政府より20%課税されます。

ここで間違えやすいのは、最終的に課税される比率は10%+20%=30%ではありません。

米国で10%引かれた後に日本で20%引かれるので、最終的に課税される比率は掛け算をして28%となります。(90%×80%=72%が課税後に残る)

日本と外国の2カ国で課税される状況を、本記事では「二重課税」と定義します。

米国の場合は税率10%ですが、その比率は国によって大きく異なります。

国名 源泉徴収額
アメリカ 10%
イギリス 0%
スイス 35%
中国 0~10%

 

ごく一部の例をあげてましたが、その幅はかなりバラバラです。基本的には課税率が低いほど税金が少なくなるため有利です。

英国株は本国での課税がないので、配当金目当ての投資家から注目されることが多いです。

ただし、海外で課税された税金は、確定申告で一部を取り戻せるケースがあるため、一律に比較できないのが難しいところです。

全世界の平均で配当課税は10%程度になるようで、米国の10%はちょうど世界平均と同じぐらいの水準になっています。

 

三重課税問題について

そして今回メインとなる「三重課税」について解説していきます。

日本における三重課税とは、日本+米国+もう1つの国という3カ国で課税されてしまう状況を指します。

具体的には、米国籍ETFを経由して米国外株式に投資した場合に発生します。

インデックスファンドに投資したい場合、投資信託・国内ETF・海外ETFの3つが基本になりますが、そのうち海外ETFは、そのほとんどが米国籍ETFとなっています。

そのため、海外ETFを使って米国以外に投資する場合に気を付ける必要があります。

ここで具体的な例として、バンガード・トータル・ワールド・ストック(VT)のケースで考えてみたいと思います。

VTは、バンガード社が運営する米国籍ETFで、投資対象は全世界の幅広い株式です。実質的な投資先は、米国株が約55%・米国外株が約45%となっています。

この場合、米国株式部分が生み出す配当金については、米国で課税→日本で課税という流れになります。

しかし米国外株式が生み出す配当金については、次のようになってしまいます。

 

①VTのファンド内部で米国外に税金が払われる
②VTは米国株扱いなので米国へ税金が払われる
③最後に日本へ税金が支払われる

 

米国以外の外国→米国→日本という3カ国で課税されてしまうのが三重課税問題です。

そして②の部分については、米国籍ETFを経由しなければ支払う必要がなかった部分であり、バンガードETF含め米国籍ETFが抱えるデメリットとなります。

直接米国外株式を保有したり、投資信託や国内ETFを経由すれば、現地国→日本の2カ国で済むため、三重課税問題は発生しません。

直接保有すれば支払う必要がなかった米国課税分が発生してしまうのが、三重課税における最大の問題ということになります。

 

具体的な商品で比較してみる

三重課税問題は、米国籍ETF(=海外ETF)が抱える問題ですが、他の金融商品と比較して考えてみます。

VTと内容が似ている、全世界株式に分散するタイプの商品を例に挙げます。

商品名 形式 信託報酬
バンガード・トータル・ワールド・ストック(VT) 海外ETF 0.10%
eMAXIS Slim 全世界株式(日本除く) 投資信託(現物) 0.1296%
楽天・全世界株式インデックス・ファンド 投資信託(ETF) 0.2196%

 

上記3商品は、いずれも全世界の株式に投資するインデックスファンドで、内容は非常に似ています。

構成銘柄の多少や、Slimについては日本株が含まれていないなどの差異はありますが、今回の趣旨からは外れますのでほぼ同一内容として考えていきます。

ここからは次の前提をもとに、米国外株式部分における配当金の米国課税率を計算していきます。

 

・配当利回りは1.8%とする。
・米国外株式比率は45%とする。
・米国課税分の税率は10%とする。

 

概ね実情に合った数値かと思います。

既に登場しているVTに当てはめて計算してみます。

VTは米国市場に上場する米国籍ETFなので、45%を占める米国外株式については日本・米国・現地国と三重に課税されます。

配当利回りが1.8%という前提に基づき、米国で課税されてしまう比率を計算すると次の通りです。

1.8%×45%×10%=0.081%
(配当利回り×米国外株式比率×米国配当課税率)

つまりVTを経由して米国外株式に投資することで、年間当たり約0.08%程度米国政府に払う余計な税金が発生してしまうことになります。

これは、投資信託であるeMAXIS Slimを選んだ場合には発生しない税金なので、税制上海外ETFであるVTは不利な立場になっています。

また投資信託であっても、楽天・全世界株式インデックス・ファンドのようなファンド・オブ・ETF形式で運用する場合、事実上の投資先は海外ETFとなるので三重課税問題を無視できず同様に不利となります。

さらに厄介なのが、ETF内部で発生した税金であるため、個人の確定申告で取り戻すことができないという点です。

配当金が出ない無分配型投資信託であれば無視できるような気もしますが、ファンド内で再投資される際に課税されてしまうので同じように三重課税になってしまいます。

海外ETF及び海外ETFを経由する投資信託に投資する場合、三重課税に気を付けていく必要があります。

また、今回は米国外株式比率が約半分でしたが、新興国株式ETFなど投資対象が全て米国外である海外ETF等の場合は、三重課税による悪影響は大きくなります。

逆に米国株式のみに投資するような海外ETFの場合、そもそも三重課税にならないので気にする必要はありません。

 

商品を比較する際の参考に

とはいえ、VTの場合は元々の信託報酬が0.10%と低いため、三重課税で年間0.08%のロスがあってもあまり大きな問題点にはなりません。

VTに限らず、現状では三重課税問題を考慮しても海外ETFのポテンシャルは圧倒的であり、国内ETFがその水準にまで追いつくのはしばらく先のことでしょう。

その一方、投資信託においては三重課税問題が大きな判断材料になります。

例えば楽天・全世界株式インデックス・ファンドの場合、三重課税問題がなく元々の信託報酬も低いeMAXIS Slim 全世界株式(日本除く)に対し圧倒的な不利な状況になっており、最終的な実質コストで勝つのは困難でしょう。

逆に、ETFを用いるが投資先が全て米国株のみである楽天・全米株式インデックス・ファンドなどの場合は、三重課税問題がないため不利にはなりません。

 

三重課税問題まとめ

三重課税問題についてまとめてみます。

 

・海外ETF経由で米国外株式に投資すると発生
・配当金に対し米国課税10%が余計に引かれる
・三重課税があっても海外ETFは魅力的

・投資信託でもETFで運用されている場合は発生
・投資信託を選ぶ際の重要なポイントになる
・投資先が米国株のみの場合は関係ない

 

投資に関するコストでは、信託報酬や課税繰り延べなどが注目されやすく、この三重課税問題についてはあまり言及されないイメージがありますが、特に投資信託を選んでいくうえでは非常に重要なポイントです。

最近では、楽天バンガードやEXE-iつみたて等、海外ETFで運用するタイプの低コスト投資信託が増えており、ますますその重要性が高まりつつあります。

海外投資における税制度は複雑な部分が多いですが、総合的なコストで判断していきたいですね。

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三重次郎

投資信託やETFにおける三重課税問題について” に対して1件のコメントがあります。

  1. お久しぶりです。いつも拝見しています。
    信託報酬には注目はするんですけど、税金は意識しない人が多いです。
    三重課税問題の記事は大変勉強になりました。
    税金って複雑だから、嫌になりますw

  2. 匿名 より:

    Acwiは海外etfかと思います。
    1657は国内etfですが、投資先は米国ETFになっています。この場合、やはり三重課税になるのでしょうか?
    しかも、米国ETFの信託報酬も0.19%の外でかかってくる=国内etfで海外etfに投資してるetfが一番コストの高いETFになるんですかね?

  3. つみたて次郎 より:

    ≻≻退職金ぶち込み太郎様

    どうもお久しぶりです!こちらこそ復帰後は楽しく読ませていただいております。
    税金だと、外国税額控除なんかもややこしい分野ですね。

  4. つみたて次郎 より:

    ≻≻匿名様

    根本的な部分を勘違いしておりました。ご指摘いただきありがとうございます。該当部分は削除しました。
    1657について確認しましたが、間接的に海外ETFに投資するため三重課税になりそうです。
    信託報酬については、目論見書を見る限りでは税抜0.19%の中に海外ETFの信託報酬負担相当額も含まれているように見えます。
    いずれにせよ、コスト的な優位性では微妙なところですね。

  5. N より:

    三重課税なんて意識したことなかった……。

    つみニキの記事はいつも勉強になります!

  6. つみたて次郎 より:

    >>Nニキ様

    いつもありがとうございます。
    税金のコストについては信託報酬の影に隠れがちですが、その影響は大きいですね。

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