eMAXIS Slim 米国株式(S&P500) vs 楽天・全米株式インデックス(楽天VTI)
つみたて次郎です。
本記事では、米国株式インデックス投資信託として人気の高い楽天・全米株式インデックス・ファンド(以下:楽天VTI)とeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)(以下:SlimS&P500)について比較してきたいと思います。
そしてこの2つは非常に似ており、甲乙つけがたい内容となっています。
今回は、楽天VTIとSlimS&P500について徹底比較していきたいと思います。
事実上の投資対象
それぞれの投資対象は次の通りです。
楽天VTI…VTI(=米国市場全域)
SlimS&P500…S&P500(=米国大型株)
楽天VTIは、海外ETFであるバンガード・トータル・ストック・マーケット(VTI)のみを投資対象とするファンド・オブ・ETFであり、運用成績はVTIとほぼ一致するようになっています。
VTIは米国株式市場のほぼ100%をカバーしています。
それに対しSlimS&P500は名前の通り「S&P500」に連動するように運用されます。S&P500は米国大型株500社で構成される指数で、米国株式市場の上位約80%をカバーしています。
S&P500はいくつかの銘柄選定条件があり、多少アクティブな要素を持つインデックス指数ですが、カバー範囲が広いためあまり意識しなくてもよいでしょう。
参考記事…S&P500指数に採用されるための条件
投資内容で考えれば、時価総額下位20%含めすべてカバーしているのが楽天VTI、時価総額下位20%をカバーしていないのがSlimS&P500ということになります。
基本的に時価総額の小さい小型株はリターンが良くなる傾向がありますが、大部分は重複しているため長期的に大きなリターン差につながるとは考えにくいです。
より厳密にインデックス投資を行いたい場合や小型株効果を期待するのであれば楽天VTI、S&P500指数にこだわりたい場合や大型株に寄せたい場合はSlimS&P500を選ぶのがよさそうです。
信託報酬について
それぞれの信託報酬は以下の通りです。
楽天VTI…0.162%
SlimS&P500…0.0968%
設定時点での信託報酬は楽天VTIが0.1696%・SlimS&P500が0.1728%とあまり差がありませんでしたが、度重なる信託報酬引き下げによって決して小さくない差が開いています。
また、同ジャンルで常に最安値を目指すSlimに対し、楽天はあまり積極的に引き下げる方針ではないため、この差はしばらく続くと思われます。
参考記事…eMAXIS SlimがSBIに対抗して信託報酬引き下げ
運用方法について
それぞれ投資対象は似ていますが、その運用方法は大きく異なっています。
楽天VTI…ファンド・オブ・ETF(投資対象はVTI)
SlimS&P500…ファミリーファンド方式(現物運用)
ファンド・オブ・ETFは楽天バンガードやSBI雪だるまなどが採用している運用方法で、マザーファンドを海外ETFで代用するという画期的な運用方法です。
運用コストが低く抑えられる可能性が高いですが、最終的なコストやトラッキングエラーにどう影響するかは未知数であり、投資家としては不安な部分でもあります。
また、バンガード等の米国籍ETFに投資する場合、米国から見た外国(=米国外)の株式を含んでいる場合は三重課税問題が発生します。
しかし上記2つの投資信託はいずれも米国株のみに投資する米国籍ETFですので、運用方法による課税上の不利も発生しません。
そのため運用方法の違いが直接つながるわけではなく、次に紹介する隠れコストなどを踏まえて総合的に考えなければならない項目であるといえます。
隠れコスト
投資信託においては、信託報酬以外に必要なコスト(隠れコスト)が存在しており、見かけの信託報酬だけでは判断できません。
厳密に計算する方法はありませんが、運用報告書を元に簡易的に求めることができます。
現時点で楽天VTIは2回、SlimS&P500は1回の決算期間を迎えていますので、そこから計算した隠れコストを比較しています。
項目 | 隠れコスト |
楽天VTI(1回目) | 0.1416% |
楽天VTI(2回目) | 0.0638% |
SlimS&P500(1回目) | 0.0812% |
詳細については、参考記事をご覧ください。
参考記事…楽天バンガードの第1回運用報告書から実質コストを計算してみる【VT・VTI・VWO・VYM】
参考記事…楽天バンガードの第2回運用報告書が出たので実質コストを計算してみる
参考記事…eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)の第1回運用報告書から実質コストを計算してみる
楽天VTIの1回目はやや高めでしたが、運用初期においては費用が多くかかる傾向があるため、数年度単位の傾向を見守っていく必要があります。
また、上記の数値はあくまで概算であり、運用報告書に記載されないコストやトラッキングエラー等も考慮する必要があるため、真のコストを求めるのは容易ではありません。
今回の2種に関しては指数も異なっているため、直接リターンを比較することもできません。
どちらも極端な高コストにはなっていない…くらいの認識で十分かと思います。
総資産額の差
投資信託やETFを選ぶ際には、総資産額についても考えていく必要があります。
単純に総資産額が多いほど、運用会社にとっては指数と連動させやすく、経費率を引き下げやすくなります。
また、総資産額が多いほど企業にもたらす利益も大きくなるため、繰上償還になる可能性も低くなります。
楽天VTIが設定されたのは2017年9月ですが、わずか3年弱で純資産総額は約930億円まで増えています(2020/5/15現在)
その一方、SlimS&P500は設定日が2018年7月と約1年遅れての登場ですが、純資産総額は約920億円とほぼ同じ水準まで増えています。
どちらも看板商品なだけあって順調に純資産総額を積み上げており、競合も少ないことからしばらくは安泰化と思われます。
運用会社の違い
それぞれの運用会社は次の通りです。
楽天VTI…楽天投信投資顧問(株)
SlimS&P500…三菱UFJ国際投信(株)
楽天VTIは名前の通り楽天グループに含まれる楽天投信投資顧問が運用会社になっており、大人気シリーズである楽天バンガードの中でも最も人気がある看板商品です。
楽天投信投資顧問が存続する限り、楽天VTIの繰上償還リスクは低いでしょう。
しかし、楽天自体が比較的新しいIT企業であり、良くも悪くも多角展開をしているイメージがあります。
十分巨大な成長企業ではありますが、三菱と比較するのは酷といえるでしょう。
楽天VTIという商品は今後も有望な看板商品ですが、その大元の楽天投信投資顧問という会社に対しては不安が残る印象です。
その一方、SlimS&P500の運用会社は三菱UFJ国際投信㈱となっており、知名度もその実績も抜群です。
財閥企業ということもあり、運用会社そのものが消滅する可能性は極めて低いでしょう。
しかしeMAXIS Slimというシリーズを考えていくと、懸念材料もあります。
もともとSlimは、今となっては低コストといえないeMAXISシリーズ(通称:fat)のマザーファンドを流用し、赤字覚悟の信託報酬で販売するというえげつない商品群です。
現時点では客寄せ目玉商品に過ぎず、単体ではビジネスとして成り立っているかどうかも怪しいです。
三菱としては、低コストファンドのマーケットリーダーという地位を確立したいと考えがあるようなので、当面は問題ないかと思いますが、何かのきっかけで改悪…最悪の場合は繰上償還という可能性も十分考えられます。
また、米国株というジャンルは、eMAXIS Slim 先進国株式インデックスと競合する内容であり、Slimシリーズの中でも存続させる場合の優先度は低くなるでしょう。
三菱UFJ国際投信という運用会社自体は鉄壁ですが、その中でのSlimシリーズの立場・S&P500の立場を考えれば、繰上償還リスクも無視できないでしょう。
まとめると、運用会社の歴史が浅い楽天VS商品の立場が悪い三菱という構図になり、それぞれ別の問題を抱えることになります。
まとめ
楽天VTIとSlimS&P500の違いについて一覧でまとめてみます。(20120/5/15現在)
楽天VTI | SlimS&P500 | |
投資先 | 米国株全域 | S&P500 |
小型株 | 小型株含む | 小型株含まない |
信託報酬 | 0.162% | 0.0968% |
運用方法 | ETF運用 | 現物運用 |
総資産額 | 約930億円 | 約920億円 |
運用会社 | 楽天投信投資問 | 三菱UFJ国際投信 |
複数の要素から楽天VTIとSlimS&P500を比較してきましたが、信託報酬以外はほぼ互角と言えます。
それ以外では小型株を含むかどうかで好みが分かれそうなところですね。
小型株に特にこだわりがないのであれば、現物運用&低信託報酬という面でSlimS&P500に軍配が上がるのではないでしょうか?
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SlimS&P500次郎
ウォーレンバフェットの90%s&p500
10%短期債権についてどう思いますか?
また債権アセットについての意見もお聞きしたいです
バフェット氏のアドバイスは、大半を株式・一部を安全資産にという意図が読み取れるので、個人的には良いと思います。
ただし、日本人の場合は為替リスクがあるので、株式部分がS&P500でよいかどうかという議論は常にあります。
また、短期債券については、債券への投資というよりも生活防衛資金という意味合いが強いと思っており、日本人なら日本国債や現金が適任かと思います。
債券アセットについては、相対的にシャープレシオが低く(特に外国債券)、株式との逆相関をあまり信用していないので、個人的には不要と考えています。
株式+現金によるポートフォリオで十分だと思っています。