スマートベータ戦略 | つみたて次郎の投資日記 https://siegeljiro.com シーゲル流×積立NISA×iDECO Tue, 12 May 2020 03:01:28 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=5.0.9 134557597 【高配当】S&P10種とS&Pコア10種について考えてみる【連続増配】 https://siegeljiro.com/sp10 https://siegeljiro.com/sp10#respond Thu, 31 May 2018 21:01:18 +0000 http://siegeljiro.com/?p=7115 つみたて次郎です。

シーゲル教授が提唱するリターン補完戦略の1つとして高配当戦略がありますが、その具体的な投資方法に「S&P10種」「S&Pコア10種」というものがあります。

米国市場における時価総額上位100銘柄を投資対象とし、機械的にスクリーニングして投資していきます。

まずはその100銘柄を配当利回りで並び替え、上位10銘柄を均等額で保有するのが「S&P10種戦略」になります。

毎年1回見直しを行い、入れ替えを行っていきます。

ここまで読んでいただいてお察しの方もいるかと思いますが、NYダウの30銘柄から配当利回り上位10銘柄を選ぶダウの犬戦略と非常に似ています。

これをさらに応用したのが「S&Pコア10種」で、選ぶ条件に「過去15年間一度も減配していないこと」を追加しています。

まとめると次の通りです。

 

S&P10種
→時価総額上位100銘柄のうち配当利回り上位10銘柄を均等額保有

S&Pコア10種
→時価総額上位100銘柄かつ過去15年間減配歴がない銘柄のうち配当利回り上位10銘柄を均等額保有

 

S&P10種はシンプルな高配当戦略、S&Pコア10種は高配当+連続増配のミックス戦略だということができます。(厳密には連続増配ではないが)

そしてこの2つの戦略は、過去優れたリターンを叩き出しています。

1957~2003年におけるトータルリターン

戦略 年平均リターン
S&P10種 15.69%
S&Pコア10種 15.68%
S&P500 11.18%

参考文献「株式投資の未来」

過去長期間で集計を取ると、S&P500を圧倒しています。

年間4%を超える超過リターンは凄まじく、これに賭けるだけの価値は十分あるデータでしょう。

注意点としては、このデータは税金や売買手数料等のコストは考慮されていません。両者ともS&P500のようなインデックス指数に比べ売買回転率は高くなることや、配当利回りが高くなることから、コストがかさむことが予想されます。

とはいえ、リターン差が縮んだとしてもS&P500に圧勝していることには間違いないでしょう。

参考記事「VTIとVYMの配当利回りの差から考える、高配当戦略で犠牲になるリターンは年間○%

ちなみに米国株ブロガー、バフェット太郎氏のバフェット太郎10種は、S&Pコア10種をヒントに考案されているようです(と本人がブログに書いていたような気がする)

ここで注目したいのが、S&P10種のリターンとS&Pコア10種のリターンの差です。

S&P10種が15.69%、S&Pコア10種が15.68%と、ほとんど差がないことが分かります。

これはつまり、「過去15年間減配していない」という条件の有無がリターンに影響しなかったということになります。

S&P10種もS&Pコア10種も配当利回りを基準にするのは共通なので、銘柄の重複により似たようなリターンになったのではないかと推測できます。

そしてもう一つ重要な要素として、S&Pコア10種のほうが売買回転率が低く済んだというデータがあります。

減配による入れ替え機会が減ったことが理由かと思われます。

ここで問題なのが、上記データが売買手数料についてどこまで考慮されているかということです。次の2通りに解釈することができます。

 

①S&Pコア10種は売買が少なくて済んだから、現実ならS&P10種に勝てた
②S&Pコア10種はリターンそのものはS&P10種に劣っていたけど、売買が少なくて済んだから結果互角だった

 

個人的には①だと思います。基本的にこの手の分析においては売買手数料まで詳細に計算されているとは考えにくいので、売買回転率の低かったS&Pコア10種のほうが、よりデータに近いリターンを現実世界で得ることができていたのではないかと思います。

とはいえ、仮に①だったとしてもリターンに大きな差が開くとは考えにくく、減配歴によるスクリーニングはあまり役に立っていなかったというのは押さえておきたいポイントですね。

つみたて次郎が連続増配にあまりこだわらなくなったのも、これが大きな理由の1つとなっています。

シーゲル教授は、弱気相場での配当金再投資がリターンを加速させるアクセルになるということを説いていますが、それは必ずしも連続増配や減配歴がない銘柄である必要はなさそうです。

むしろ連続増配歴○年というのは投資家から注目される的になってしまうので、シーゲル流投資家にとっては皮肉にも歓迎できないステータスになりつつあるのかもしれませんね。

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低PSR戦略の有効性(過去最高のバリュー株投資) https://siegeljiro.com/psr-yuukousei https://siegeljiro.com/psr-yuukousei#respond Thu, 17 May 2018 21:01:32 +0000 http://siegeljiro.com/?p=7005 つみたて次郎です。

バリュー株を探すための指標として、株価売上高倍率(PSR)というものがあります。

参考記事「株価売上高倍率(PSR)とは?

とある企業の売上高に対する株価の比率を表したもので、低いほど割安であると判断されます。

純利益に対する株価の比率を表す株価純利益倍率(PER)の親戚です。

PERは非常にメジャーな指標ですが、それに対しPSRは比べるとかなりマイナーです。

売上高を参考にするので、売上高が多く利益率が低い小売業などの場合割安になりやすく、逆に利益率が高い企業であるほど割高になりやすいという欠点を抱えています。

極端な話赤字企業であっても、売上さえ多ければ問題なしという判断になってしまいます。

その反面、売上高は純利益に比べて変動が少ないです。純利益を参照するPERの場合、企業の一時的な要因で減益になったり赤字に転落した場合、指標として機能しなくなります。

PSRは売上という変動しにくい数値をもとに計算されるので、金融危機や大不況などの異常事態であっても最低限機能するというメリットがあります。

そしてPSRが低い銘柄は、米国市場の過去長期において素晴らしいリターンをもたらしていることでも有名です。

 

全銘柄のPSRの十分位数分析(1951~1996年)

十分位数 複利リターン 標準偏差
1(低PSR) 17.63% 19.79%
2 16.52% 19.36%
3 16.50% 20.01%
4 15.64% 19.56%
5 13.91% 20.40%
6 13.18% 19.95%
7 11.62% 19.23%
8 9.93% 18.19%
9 7.78% 19.81%
10(高PSR) 5.12% 22.73%
全銘柄 13.23% 19.51%

参考文献「ウォール街で勝つ法則」

これは、米国株をPSR別にグループ分けした時の長期リターンと標準偏差です。

PSRとリターンは綺麗に反比例しています。特に最低グループと最高グループの差は凄まじいです。

このデータは、オショーネシー著「ウォール街で勝つ法則」に記載されている内容です。

本書では、PSRのみならずPERやPBR等、様々な指標別の長期リターンについて分析されていますが、数ある指標の中で最も成績が良かったのがPSRでした。

過去のデータで考えるのならば、PSRこそが最高のバリュー株を見つけ出すための指標だったということになります。

これは意外だったと思った半面、PSRが有効だった理由についても何となく想像がつきます。

株式投資とは、企業の事業リスクを背負う代わりに利益を得る行為です。

そして株主が得るリターンの源泉は、企業が稼ぐ純利益です。そのため、純利益に対し株価が割安かどうかを判断するPERがまず思い浮かびます。

しかし上記で記したとおり、PERは年度ごとの変動が激しく、単独でスクリーニングに使用するのは不安です。

低PER戦略も過去十分有効でしたが、低PSR戦略には到底かないませんでした。

おそらく理論上は、PERのほうがより正しい指標だとは思いますが、現実問題としてPERのみでスクリーニングをした場合、頻繁な入れ替えが発生してしまいます。

特にリーマンショック時なんかは多くの企業が赤字でPER算出不可になっていましたから、PERのみを頼りに投資するのは非常に難しい局面であったのではないかと予想できます。

その点売上高を参照するPSRならば、赤字であっても売上さえ維持できていればしっかり機能しますので、緊急時でもそれなりに役立ちます。

そして売上高と純利益は比例の関係にあります。集団としてみれば、売上高が多い企業=純利益が多い企業になるはずです。

PSRが低い企業群は、長期的にPERが低い企業群でもあったはずです。そしてPSRは変動が緩やかですから、単年度のノイズにとらわれずうまく割安株を抽出できていたのではないと推測します。

つみたて次郎もたびたび主張していますが、スクリーニング手段とは様々な局面で役立つものではなければなりません。

つまりどんな時でも一定の有効性があり、普遍的に機能する指標であるということです。つみたて次郎がPERをあまり好きではない理由でもあります。

参考記事「高総還元性向ETFが発売されたら高配当ETFは用済み?

配当利回りによるスクリーニングを評価しているのも、単年度ごとの変動幅が緩やかであるというのが最大の理由だったりします。

 

そんな低PSR戦略ですが、理屈では何となく理解できても直感的には怪しいと思う点もあります。

PSRは、売上高が多いだけの赤字企業であっても割安と判断されてしまうという弱点があります。いくら売り上げが多くても、万年赤字であれば投資先としては不安です。

逆に、売上高が小さいけど利益率の高い企業は除外することになります。IT革命等により、過去には考えられなかった利益率を誇る企業もたくさんありますが、それらの多くを斬る捨てることにもなります。

結果として、小売業などの薄利多売型企業の比率が高くなり、ソフトウェア企業のような高利益率企業の比率が低くなります。

企業が稼いだ純利益が投資家のリターンになるというのは、これからもずっと変わらない真理だと思いますが、売上高が多い企業=純利益が多い企業が成り立つかどうかは、個人的に懐疑的です。

ベタな発言で恐縮ですが、産業構造の変化によってPSRが通用しない時代が来るかもしれません。

また非常に面白いのが、アマゾン・ドットコム(AMZN)フィリップモリス・インターナショナル(PM)という対極ともいえる銘柄のPSRが現在ほぼ一緒ということです。

5月17日現在、両社とも実績PSRは4.37倍となっていました。

売上高が多いけど戦略的に利益を上げていないアマゾン、売上高は少ないけど圧倒的高収益なフィリップモリスは、PSRでは同等の評価をされているということになります。

これほど正反対の企業が同評価になる指標というのもなかなかないと思います。

PSRは、PER以上に異なる業種を比較する際には要注意な指標かもしれません。

どんな指標にも長所短所が存在しますが、機械的なスクリーニングだけで高リターンを得られた指標は多数あります。

その最高峰ともいえるPSRは、今後も素晴らしいリターンをもたらしてくれるのでしょうか?

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高ROE戦略は高リターンにならない https://siegeljiro.com/kou-roe https://siegeljiro.com/kou-roe#respond Mon, 23 Apr 2018 21:01:45 +0000 http://siegeljiro.com/?p=6709 つみたて次郎です。

近年重視される指標に、株主資本利益率(ROE)というものがあります。

参考記事「株主資本利益率(ROE)とは?

自己資本に対する純利益の割合を表しており、基本的には高いほど効率よく資本を活用できていることになります。

自分がオーナーになって考えてみると、1億円の資本で毎年1000万円の利益を生み出すビジネス(=ROE10%)よりも、1億円から毎年2000万円の利益を生み出すビジネス(=ROE20%)のほうが優秀です。

より少ない資本で多額の利益を稼ぐ力を表したのがROEです。

ウォーレン・バフェット氏も、企業の収益性を考慮するうえで重要視しているといわれています。

その一方、自己資本を減らすことで高ROEになってしまうこともあります。上記の例だと、1億円の資本だけでビジネスをする場合でも、1億円を元手にさらに借り入れを行ってビジネスする場合でもROEの計算上は同じです。

単純に後者のほうが借入金がある分純利益を増やしやすいので高ROEになりやすいですが、その分利息の返済や資金繰りがシビアになるため、ハイリスクハイリターン経営になります。

そんなROEですが、実はリターンとの相関性が薄いというデータがあります。

 

米国市場におけるグループ別複利リターンと標準偏差(1951~1996)

ROE別グループ 複利リターン 標準偏差
1(上位10%) 13.34% 24.72%
2 15.17% 26.27%
3 13.95% 22.55%
4 12.50% 19.21%
5 13.47% 20.61%
6 13.24% 20.73%
7 13.20% 19.27%
8 14.33% 20.15%
9 12.57% 20.50%
10 (下位10%) 12.28% 25.31%

参考文献「ウォール街で勝つ法則」

米国市場における1951~1996年における、ROE別の複利リターン及び標準偏差です。

上位グループから下位グループまで見事に横並びで、目立った法則がありません。標準偏差はROEが高いほうがやや高めになっていますが、ハッキリとした傾向ではありません。

高ROEだから高リターンだということや、高ROEだから特別ハイリスクになるというデータにはなりませんでした。

ROEは、リターンやリスクと目立った相関性がありません。

高ROEといえば、優良企業の証のような扱いをされていますが、高ROEだけに注目しても、高いリターンを得ることができません。

つみたて次郎が注目しているのは、定量的なスクリーニングで市場平均を超える可能性がある指数であり、その意味ではROEという指標があまり好きではありません。

そして、高ROEが高リターンにならない理由については、直感で感じることがあります。

ROEを含めた、有名な指標の計算式をまとめてみます。

 

PER=純利益÷株価
PBR=株主資本÷株価
ROE=純利益÷株主資本

 

低PER戦略低PBR戦略は、過去素晴らしいリターンをもたらしています。明確にリターンとの相関性があるため、機械的に抽出するだけで十分な成績を得ることができました。

しかし、上記でお伝えした通りROEだけは仲間外れです。上記の似たような3つの式の中でROEだけ決定的に違う部分があります。

それは、ROEの計算式には株価が登場していないということです。

ROEは、株価がどれだけ高くても低くても一切変わらない指標です。

その一方、PERとPBRは株価を基準に決定されるものであり、低PER・低PBRは明確に割安度を示します。

過去バリュー株投資が長期で有効だった事実を考えれば、低PERや低PBRが報われるのはいわば必然です。

しかし高ROEは、バリュー株を抽出するための指標ではないため、リターンにつながる銘柄を抽出できなかったのではないかと考えています。

高ROEは確かに資本効率の良いビジネスを展開する企業を抽出できますが、私たちはそのビジネスを時価でしか買うことができません。

株式市場では、1億円から毎年1000万円を稼ぐ企業と1億円から2000万円を稼ぐ企業が同じ株価で売られていることはほぼありません。

後者は倍の利益を上げることができるのだから、その分株価は高くなってしまうのが普通です。

自分が1億円出資してオーナーになるなら高ROEがいいに決まっていますが、投資家は上場している株をその時の市場価格で買うことしかできません。

ROEが高ければ株価も高くなるので、超過リターンを得ることはできないという理屈です。

結局のところROE単体では、優良企業を見つける手がかりの1つにすぎず、高リターンを見つけるための指標ではないということに注意が必要です。

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高ROEは高リターンにならない

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VTIとVYMの配当利回りの差から考える、高配当戦略で犠牲になるリターンは年間○% https://siegeljiro.com/vti-vym-gisei https://siegeljiro.com/vti-vym-gisei#comments Sat, 12 May 2018 21:01:49 +0000 http://siegeljiro.com/?p=6969 つみたて次郎です。

米国株クラスタで賛否両論の嵐が巻き起こっている高配当戦略ですが、つみたて次郎はご存知の通り肯定の立場を取っています。

参考記事「高配当戦略の有効性

しかし、直近では成績が振るわないため、人気が下がっているように感じます。

そんな高配当株への投資については、致命的な弱点が存在しています。

根本的に配当金とは、利益の一部確定と同義であり、配当金を受け取る時点で課税されてしまいます。

長期投資では、税金の支払いを遅らせることで繰り延べ効果を活かすことが重要ですので、配当金再投資を前提とする場合は非常に不利になります。

高配当株に対する批判として最も強いものといっても過言ではなく、投資する時点でハンデを背負っている状態です。

参考記事「配当課税の恐怖と高配当戦略

そして今回は、高配当株に投資することでどれだけのコストが犠牲になっているかを計算してみたいと思います。

次のETF2つで検証してみたいと思います。

 

市場平均代表…バンガード・トータル・ストック・マーケット(VTI)
高配当株代表…バンガード・米国高配当株式(VYM)

 

VTIは、米国市場の株式をほぼ100%カバーする海外ETFです。VYMは、米国市場のうち配当利回りが平均より高い銘柄で構成されています。

配当利回りは現在、VTIが約1.7%、VYMが約2.9%となっています。

そしてその差は1.2%ですので、その分課税上の不利が発生する形となります。

米国の課税前長期リターンは約6.7%でしたので、これらを前提として計算してみます。

 

シミュレーション条件

・どちらも実質リターンは年間6.7%とする。
・VTIのキャピタルゲインは年間5%、インカムゲインは年間1.7%とする。
・VYMのキャピタルゲインは年間3.8%、インカムゲインは年間2.9%とする。
・値上がり益に対する課税は20.315%とする。
・配当金に対する課税は28.2835%とする。
(米国課税10%×国内課税20.315%として計算)

 

それぞれ実質リターンが同じだとして、配当利回りから値上がり益を逆算しています。配当金に対する課税は、外国税額控除が一切使用できないケースとします。

 

一括投資した場合の年数ごとのトータルリターンは次の通りです。

投資期間が1年~30年の場合で計算してみました。

VTIだと約5.3倍に増えましたが、VYMの場合は約4.9倍にとどまっています。

税の繰り延べ効果は期間が長くなるほど効果を発揮しますので、投資期間が長いほど高配当株は不利になります。

 

 

投資期間ごとの年間トータルリターンを表にまとめてみます。

投資期間\投資先 VTI(市場平均) VYM(高配当株) リターンの差
1年 5.22% 5.10% 0.12%
10年 5.42% 5.26% 0.16%
20年 5.59% 5.39% 0.20%
30年 5.71% 5.48% 0.23%

 

どちらの場合も、投資期間が長くなるほどキャピタルゲイン税の繰り延べ効果により年間当たりのリターンは改善します。

また、期間が長くなるほど配当利回りの差が重くのしかかり、トータルリターンにも差が出ています。

上記シミュレーションで30年間一括投資した場合は、VYMが年間で0.23%リターンを毀損していることになります。

この差が、VYMで高配当戦略を実践するうえで犠牲になるコストといえます。

逆に言えば、年間で0.23%を超えるリターンを叩き出せると思うのであれば、VYMに投資するべきだということになります。

しかし、長期投資においてはコストは非常に重要で、海外ETFの場合は0.01%単位で信託報酬が評価される現状では、0.2%前後の負担は決して軽くはありません。

ただし上記シミュレーションは、いくつかの条件を無視しているので、あくまで机上の空論であるという点にはご了承ください。

そもそもリターンがVTI=VYMになるという仮定に意味などないかもしれません。

参考に、前提条件で高配当戦略が有利になる点と不利になる点をまとめておきます。

 

高配当戦略にとって有利な条件
・インフレを考慮していない。
・配当利回りは現在歴史的に低い(=差が出にくい)

高配当戦略にとって不利な条件
・外国税額控除を考慮していない。
・自社株買いの流行で配当利回りが今後下がる可能性がある

 

 

ここまで読んで、課税によるデメリットについてどのように考えたでしょうか?

課税の影響はやはりデカいなと考える人もいれば、思ったより差が開いていないと思う人もいるかと思います。

ジェレミー・シーゲル教授の分析によれば、配当利回りとリターンは比例するというデータがあります。

S&P500配当利回りで分けたグループごとのトータルリターン(1957~2006年)

リターン
最高 14.22%
13.11%
中間 10.55%
9.79%
最低 9.69%
S&P500 11.13%

参考文献「株式投資第4版」

配当利回りが高いグループほど成績が良く、最高グループは年間で3%以上アウトパフォームしています。

上記データの詳細については不明ですが、VYMの場合は最高~中間くらいをカバーしていると推測できます。

すごい大雑把に計算すれば、最高・高・中間のリターンを平均すると年間12.62%です。

市場平均であるS&P500に対して約1.5%も超過リターンを得ていますから、もし上記データが始まる1957年にVYMという商品が既にあり、日本から投資できていたのであればS&P500に圧勝しているはずです。

もちろん今後もこの傾向が続くかどうかはまた別問題ですが、少なくとも上記期間においては課税を考慮しても高配当戦略は十分有効だったと推測することができます。

結局のところ、高配当戦略を肯定するにしても否定するにしても、税制上の不利というのはあくまで一要素でしかないという考えで臨んでいくことが重要ですね。

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ファンド・オブ・ETF×スマートベータ=最強 https://siegeljiro.com/etf-smart https://siegeljiro.com/etf-smart#comments Fri, 01 Dec 2017 21:01:12 +0000 http://siegeljiro.com/?p=4886 シーゲル二郎です。

最近は、「楽天・バンガード・ファンド」や「EXE-i」といった、日本完全敗北の象徴ともいえる投資信託が大注目を浴びています。

参考記事「ETF全盛期なのに投資信託を推奨する日本

いずれも海外ETFに乗っかるだけという、ある意味恥知らずの思い切った商品です。貧乏人のシーゲル二郎的には嬉しい現象なのですが、日本の将来を考えると少し不安です。

いずれも単体または複数のETFを管理するだけなので、大規模なマザーファンドを用意しなくて済むのが利点です。

また、ETFの数だけ商品を開発できるので、人気のあるETFにタダ乗りできる柔軟性があります。

しかし、現時点では運用がうまくいっていない問題もあります。

参考記事「ファンズ・オブ・ETFの将来性

問題はありそうですが、現物株を何千と準備する必要がないので、今後の主流になる可能性を秘めている素晴らしい仕組みです。

海外ETFのメリットと投資信託のメリットを両方併せ持つような存在です。

この仕組みを取ることで、従来の投資信託に比べて格段に有利になる部分があります。

それは、「運用に関する税金と手数料が最小限で済む」ということです。

もちろんETFのように税金と手数料が全部スキップできるわけではありません。購入や売却のたびに現物ETFのやり取りが必要なので、通常の投資信託と同じデメリットがあります。

しかし、ポートフォリオの入れ替えに関するコストは全部無視できます。なぜなら、入れ替えは全て管理しているETFの内部で勝手に行われているからです。

例えば「楽天・全米株式インデックス・ファンド」の場合、投資するのは「バンガード・トータル・ストック・マーケット(VTI)」のみとなります。

これを通常の投資信託でやる場合、何千という米国株を現物で管理して、定期的に入れ替えという作業が必要になります。

ですが、楽天VTIの場合はただVTIを持っているだけなので、入れ替え作業は発生しません。なぜならETF側で全てその作業は自動的に行われているからです。

この仕組みを活かすと、売買回転率が高くなるスマートベータ系の戦略と相性抜群になると思いませんか?

例えば、シーゲル派に大人気の「iシェアーズ・コア米国高配当株(HDV)」というETFは、財政状況が優良な高配当銘柄という選定を基本としたスマートベータ系ETFです。

売買回転率が70%を超えることもあるスーパー高回転率のETFで、最近ではあのゼネラルエレクトリック(GE)を外しやがりました。実質アクティブファンドだろ

ETFなので入れ替えに伴う税金と手数料はスキップできますが、これを投資信託でやろうとしたら大変なことになります。

現物で多数の株を管理して、指数の入れ替えごとに現物株を頻繁に売買することになるので、実質コストは非常に高くつくでしょう。

ですが、ファンズ・オブ・ETFであれば、入れ替えの管理は全てETFに押し付けることができため、事実上入れ替えに伴う税金と手数料も無視できます。

シリーズ的にあり得ませんが、楽天HDVが出た場合、他社は追随できないことになります。

現物で運用する場合、時価総額基準の伝統的なインデックス運用とそれ以外では、実質コストに大きな差が出ますが、ファンズ・オブ・ETFであればどちらも全く同じです。

VTIを管理するのも、HDVを管理するのも同じ手間でしょう。

そういった意味で、「楽天・バンガード・ファンド」や「EXE-i」は、時価総額基準インデックス以外の領域に踏み込む資格があるシリーズといえるでしょう。

「ファンズ・オブ・ETF」という反則技は、売買回転率が高い指数でさらに輝きます。

という訳で楽天VYM頼んだよ。

※楽天VYMが販売されることが決定しました。分析記事ご覧ください。

楽天・米国高配当株式インデックス・ファンド 分析

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生活必需品すぎる企業は危険だ! https://siegeljiro.com/seikatuhituzyuhin-kiken https://siegeljiro.com/seikatuhituzyuhin-kiken#respond Mon, 11 Sep 2017 11:00:55 +0000 http://siegeljiro.com/?p=2380 シーゲル二郎です。

シーゲル氏の調査では、生活必需品セクターが、セクター別で2位のリターンをもたらしていました。

ここでいう生活必需品とは、我々のイメージと違い、スナック、タバコなどの嗜好品も含まれています。主な業種は、飲料、食料、日用品、タバコ、必需品小売です。

参考記事「セクター区分けの曖昧さ

今回ここで話すのは、本当の意味での必需品です。コーラやタバコなどではなく、本当に生きていくうえで必要なものに焦点を当ててみます。

シーゲル二郎が考える、生活必需品すぎる業種は次の通りです。

 

業種 主な日本企業
食料 丸紅(穀物メジャー)
医療 武田製薬
鉄道 JR東日本
石油 JXHD(エネオス)
通信 NTT、NTTドコモ
電気 東京電力
ガス 東京ガス
水道 民間・公営いろいろ

 

どれも生きていくうえで欠かすことができない商品やサービスです。比較的、選択肢が限られているのも特徴です。

そのため、これらの業種は比較的安定していると思われています。(実際安定していますが)

ただし、儲かるからといって電車料金や携帯料金を10倍にすることはできません。民間企業であっても、ある程度節度を保たなければ、政府が介入してきます。

これらの業種は、必需品すぎるゆえにボロ儲けはできないルールになっているのです。

 

逆に言えば、嗜好品に近い商品は好き勝手にビジネスができるということです。何度も出てきますが、コカ・コーラがいい例です。ただの砂糖水をとんでもないボッタくりで売っていますが、特に国から規制されることはありません。なぜならコーラは嗜好品であり、「嫌なら買うな」が通用するからです。

同じような理由で、タバコやスナックも、嗜好品だから儲け第一で戦略を取ることが可能です。アップルが販売するiPhoneだって、とんでもないボッタくりですが、別にiPhoneはなくても生きていけるので問題になりません。

そのため、本当に投資で旨みがあるのは、「必需品じゃないのに値上げしても買ってくれるもの」ということになります。

 

本来の意味で生活必需品に一番近い公共セクターのリターンが低かった理由は、ここにあるのかもしれませんね。

高いリターンをたたき出した生活必需品セクター企業の半分ぐらいが実は嗜好品企業なのも、必然なのかもしれません。

 

バフェット氏がいう、「橋を渡るために通行料を取る」ような企業は、重要すぎる橋だと通行料を政府にコントロールされてしまうリスクを抱えているのです。

 

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小型株効果の恐ろしさ https://siegeljiro.com/kogatakabu-osoroshisa https://siegeljiro.com/kogatakabu-osoroshisa#respond Sat, 26 Aug 2017 12:30:08 +0000 http://siegeljiro.com/?p=855 シーゲル二郎です。

大型株中心の投資をしている人の恐怖ともいえる小型株効果について考察していきます。

小型株効果とは、時価総額が大きい企業よりも、時価総額が小さい企業のほうが、歴史的にリターンが高いという理論です。

シーゲル二郎は、投資先が比較的大型株に偏っていますし、多くの米国個別株投資家は、手持ちすべてが大型株だったりするのではないでしょうか。あのバフェット太郎10種も、すべて大型株です。

もし小型株効果がこれからも存在するなら、シーゲル二郎含め多くの米国個別株投資家は市場平均に負けることになります。小型効果がある理由として、小型株は倒産リスクや流動性リスクが高いから、その分リターンも高くなるという考えが一般論です。

 

米国市場における1926~2000年の企業サイズ別のリターンは次の通りです。

企業規模 幾何平均利回り リスク(年率)
上位10% 10.26% 19.00%
上位20~10% 11.32% 22.70%
上位30~20% 10.59% 24.50%
上位40~30% 11.52% 27.60%
上位50~40% 11.32% 30.10%
下位50~40% 11.31% 30.20%
下位30~20% 11.27% 34.70%
下位20~10% 12.59% 34.70%
下位10% 16.71% 49.30%

 参考文献「株式投資 長期投資で成功するための完全ガイド」

 事業規模とリターンを見ると、明らかに時価総額が小さいグループのほうが高リターンです。また、リターンも大きくなります。

しかし、この理論と真っ向から対立する意見があります。それは、低ボラティリティ効果です。ボラティリティとは、株価の変動幅の大きさであり、株価が激しく動く銘柄より、安定している銘柄のほうが、長期ではリターンが高いという理論です。

小型株は、もちろんボラティリティは高いので、矛盾することになってしまいます。また、シーゲル氏が提唱する理論の中で、小型株効果だけあまりに異色です。高配当戦略や低PER戦略などバリュー株の有効性を説明しているのがほとんどの中、小型株効果はどちらかといえばグロース株寄りの理論になっているので、非常にもやもやします。

シーゲル流はアノマリーに頼って投資をしていますが、小型株効果だけは違うと都合よく解釈したいですね。

小型株と大型株どっちが最終的に高いリターンを出すかは、タイムマシンがない限りわからないので、ここで終わりにしますが、大型株は低リスクであることが分かったので、それだけで十分です。大切なのは、どんな時でも市場に残り続けることです。

 

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