株主資本利益率(ROE)とは?
つみたて次郎です。
株式には、割安度や財務状況を表す様々な指標があります。
その中でも代表的なものに、株主資本利益率(ROE)というものがあります。
近年急速に注目されるようになった指数です。計算式は次の通りです。
ROE=当期純利益÷株主資本
株主資本は、資産-負債でざっくり求めることができます。会計上の違いはありますが、純資産・自己資本などと近い概念です。
企業が持っている価値の合計を表し、株価純資産倍率(PBR)にも関係します。
参考記事「低PBR戦略の有効性」
そして株主資本に対し純利益がどれくらい大きいかを表したのがROEです。
ROEが高いほど、株主資本に対する純利益が大きく、効率的なビジネスを展開しているといえます。
簡単に言えば、ROEが高いほど儲かっている可能性が高いということです。
世界一の投資家、ウォーレン・バフェット氏も重視している指標でもあり、投資家の間でも知名度が広がっています。
例えば、次のような会社が2つあったとします。
株式会社A…資産100億円・負債80億円(株主資本20億円)
株式会社B…資産200億円・負債150億円(株主資本50億円)
上記会社の当期純利益がどちらも5億円だった場合、ROEは次の通りです。
株式会社A…5億円÷20億円=25%
株式会社B…5億円÷50憶円=10%
ROEだけで判断すれば、株式会社AのほうがROEが高く優秀ということになります。
純利益を参照するため景気による変動がありますが、平常時は日本株平均が5%前後、米国株平均が10%前後くらいです。
日本企業は世界的にもROEが低い時代が続いていましたが、近年は改善に向かいつつあります。
しかし、ROEには様々な欠点があります。
ROEは、株主資本が同額ならば純利益が大きいほど高くなります。
株主から預かった金額が同じなら、より利益を生み出すビジネスのほうが優れているといえます。
これは特に問題ないと思います。
逆に、純利益が同額ならば株主資本が小さいほどROEは大きくなります。
企業の財政状況を表す指標に、「自己資本比率」があります。細かい差はありますが、ここでは株主資本≒自己資本と考えてください。
自己資本比率は、企業が持つ資産に対する自己資本の比率を表します。
簡単に言えば、企業の負債の少なさを表す指標です。現実的にはあり得ませんが、全くの無借金ならば自己資本比率100%です。
逆に、負債が多いと比率は低くなり、資産よりも負債が多い状態(=債務超過)の場合はそもそも計算することができません。
一般的に、自己資本比率は高いほど倒産しにくいため、高いほど良いといわれています。
しかし、ROEの分母は自己資本(株主資本)です。ROEを高くするには、純利益を増やすだけでなく自己資本を減らすということでも達成できてしまいます。
高ROE銘柄の中には、自己資本比率が低いハイリスク経営の企業も含まれやすいということになります。
ROEでスクリーニングをする際は、自己資本比率にも注意しておく必要があります。
当ブログの企業分析では、その点を考慮してROEと自己資本比率を同じグラフでまとめています。
参考に、プロクター&ギャンブル(PG)のグラフです。自己資本比率が非常に安定しているので、高収益がそのまま高ROEにつながります。
高ROE+高自己資本比率というのは、非常に安定して稼ぐ力を持っているといえます。しかし、単年度の純利益を参考にするので、景気による変動をモロに受けてしまいます。
また、株主資本が減ることで高ROEになってしまうこともあります。
米国では、自社株買いが盛んにおこなわれており、借金して自社株買いを行うケースもありました。
この場合、1株当たりの株主資本減少&1株当たり純利益上昇になるので、ROEも上昇します。
参考に、コルゲート・パルモリーブ(CL)のグラフです。もともとROEは100%越えという異常水準でしたが、自社株買いしすぎて債務超過になった結果、ROEが算出不可になってしまいました。
株主利益を最大化するため、財務レバレッジを効かせている状態といえます。
この経営方法の優劣は別として、極めて自己資本比率が低い銘柄も高ROEになるという点には注意です。
ROEについてまとめると次の通りです。
・純利益÷株主資本で求められる。
・資本効率の高さを表す。
・自己資本比率が低いと高くなる。
・自社株買いすると高くなる。
・景気により変動しやすい。
様々な要因で変動しやすいため、ROEのみを基準に投資するのは危険だといえます。あくまで参考にする指標の1つというスタンスで活用するのが良いかと思います。
また、よく似た総資産利益率(ROA)という指標もあるので、併せて確認するとわかりやすいです。
参考記事「総資産利益率(ROA)とは?」
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ROEを過信してはいけない