低PER戦略の有効性
シーゲル二郎です。
株式の割安度を表す指標としては、PER(株価収益率)が最も有名です。
PERとは、現在の株価が1株当たり純利益の何倍であるかを表したものです。
例えば、PER15倍となっている株であれば、その株を保有していて得ることができる利益(あくまで帳簿上)の15倍の値段がついていることになります。
最も分かりやすく言うと、もし同じ利益がずっと続いたなら、15年で元が取れるということになります。
数字が小さいほど、元が取れるまでの年数が短いので割安といわれていますが、様々な弱点があります。
元が取れるまでの年数は、あくまで企業の利益がずっと同じだった場合に限られます。企業の利益は毎年変動するのが通常です。
利益が減少した時には、PERは上昇するし、利益が増加した時には下落します。また、赤字だった場合、PERはマイナスになり、元を取るためには過去にタイムスリップしなければなりません(笑)
そのため、PERの推移をもとに割安かを分析できても、単年度ではあまり役に立ちません。
PERが高い企業は、今後利益がどんどん成長していくという予想がされています。例えば、シーゲル派以外はみんな大好きアマゾン(AMZN)のPERは現在250倍を超えています。
投資元本を回収できるまで250年かかる計算になりますが、実際はそんなにかかりません。なぜなら、今後アマゾンの利益が爆発的に増えていくのは明らかだからです。
逆に、PERが5倍とかになっている企業は、今後は利益がどんどん下がっていくので回収まで実際には5年以上かかるはずです。
株式には常に正しい値段がついているという「仮設市場効率性」が正しいのであれば、PERが何倍だろうと回収までにかかる時間はどの銘柄でも同じになります。
ですが、実際はそんな単純ではないです。
S&P500銘柄PER別リターン(1957~2006年)
PER | リターン |
最低 | 14.30% |
低 | 13.52% |
中間 | 11.11% |
高 | 10.04% |
最高 | 8.90% |
S&P500 | 11.13% |
参考文献「株式投資第4版」
PERが低いほどリターンが高くなっています。低PERになっている株は、何らかの問題を抱えていることが多く、あまり魅力のない銘柄が多いです。
言い換えれば、人気のない銘柄ともいえます。人気がなかったので割安で放置され、リターンは高くなったと考えられています。
そのため、PERが低い銘柄に幅広く分散投資すれば、市場平均を超えるリターンを得ることが可能です。ですが、現在PERが低い銘柄は、金融セクターに多く存在しています。
金融セクターは、長期リターンが市場平均をわずかに下回っており、景気敏感株であることから不人気です。
似たような高配当戦略に比べ、低PER戦略はあまり人気がありません。また、S&500銘柄の長期リターンで、運用成績トップ20銘柄は、市場平均よりも配当利回りが若干高く、PERも若干高めでした。
1957年~2003年平均リターン(参考文献:株式投資の未来)
平均PER | 平均配当利回り | |
運用成績上位20銘柄 | 19.17倍 | 3.40% |
S&P500平均 | 17.45倍 | 3.27% |
米国株の長い歴史で運用成績トップは、フィリップモリス・インターナショナル(PM)です。この子は平均PERが13倍だったので特殊ですが、他銘柄の多くは市場平均よりPERも配当利回りも高くなっていました。
そのフィリップモリスも、PERが最低のグループには属していません。
PERが最低だったグループの中には、突出した黄金銘柄は含まれていなかったという結果になります。
上記理由から、低PER戦略はあまり人気がないのだと思っています。高配当ETF(VYMやHDV)については頻繁に語られますが、低PERなETF(VTV)についてあまり語られないのもそのせいです。
米国株個別投資家のポートフォリオの中にも、高配当銘柄はたくさんあっても、低PERに注目して選別されているケースが非常に少ないです。
現在は生活必需品セクターやヘルスケアセクターなど、PERが低くない銘柄が非常に人気になっています。であれば、長期投資家からも人気がない低PER戦略は、台風の目になるかもしれません。
アノマリーは、人気が高いものから順に消えてなくなっていきます。
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低PER戦略とセクター戦略は両立しない