高総還元性向ETFが発売されたら高配当ETFは用済み?
つみたて次郎です。
当ブログでは、高配当戦略について取り上げることが多く、それを実現できるバンガード・米国高配当株式(VYM)及び楽天・米国高配当株式インデックス・ファンドが何度も登場しています。
概要については過去記事をご覧ください。
参考記事「高配当戦略の有効性」
参考記事「高配当戦略は最も無難なバリュー株投資」
つみたて次郎は配当金そのものが欲しいのではなく、高配当株式という集団が市場平均をアウトパフォームすると思っている投資家です。
しかしこの理屈であれば、別に高配当でなくとも割安かつ株主還元を重視している企業が抽出さえできれば問題ありません。
とあるブログで、この点について考察された記事がありましたので紹介したいと思います。
外部リンク「続・高配当株懐疑論」
米国株ブロガー、hiro氏の投稿記事です。その中から一部引用します。
例えば、僕が個人的に好きな企業であるMastercard(MA)もここ数年、配当よりも遥かに大きな額の自社株買いを繰り返しています。
高配当株に限定して銘柄を絞った場合、こうした優良企業は評価されませんよね?
つまり僕が言いたいのは、高配当ではなくて、高総還元性向の企業を集めたETFを購入すべきなのではないか?
ということです。
なるほど、自社株買いを含めた総還元性向に基づくスクリーニングのほうがより適切ではないかという推測です。
なお総還元性向とは、配当利回り+自社株買い利回りで求めることができます。
確かに理論上、配当金と自社株買いは同じ効果を持っていますので、配当金がゼロだとしても、多額の自社株買いを行っている企業であれば、下落相場のプロテクター、上昇相場のアクセルとして働きます。
高配当株と同様に割安株を抽出する手段としても優れており、スクリーニング方法としても申し分ありません。
米国ではそれに近いETFが売っているようですが、残念ながら日本で買えるものは無いみたいです。
もし高総還元性向ETFが日本でも販売された場合、高配当ETFよりも優先するべきでしょうか?
一概に優劣をつけることは難しいですが、それを踏まえてもつみたて次郎は高配当株ETFを選ぶつもりです。
一見総還元性向に基づくETFのほうがシーゲル教授の理論ともかみ合いそうですが、いくつかの懸念があります。
まず、配当金と自社株買いは理論上全く同じ効果をもたらしますが、現実では残念ながら違います。
シーゲル教授は、著書で次のように述べています。
配当の場合、いったん金額を決めれば、経営陣はこれを引き下げまいとする。減配は会社の発する赤信号と受け止められ、発表と同時に、株価が急落するのがふつうだからだ。
(一部省略)
対照的に、自社株買い戻しは、経営陣の意向しだいで実施される面が強い。引用「株式投資の未来」
結局のところ、配当金の減配に比べ、自社株買いが減るというのは市場に対するインパクトが小さいということです。
連続増配年数は話題になっても、連続自社株買い増加年数は話題になりませんよね?
S&P500の過去データを見てもその傾向は明らかです。
出典「LEGG MASON」
2000年以降のS&P500における配当総額と自社株買い総額の推移です。
特にリーマンショックが発生した2008年には顕著です。自社株買いは大幅に減少していますが、配当金はわずかな減少になっています。
もし高総還元性向ETFが単年度ごとの指標に基づきスクリーニングを行う場合、大幅な入れ替えが発生してしまうことになります。
リーマンショックでは、多くの企業が利益減少・赤字に転落していますので、配当を死守するので精一杯という企業が多数ありました。
しかし、それらの一時的な要因で下落した株式は、のちに素晴らしいリターンをもたらしています。
総還元性向を基本とした場合、リーマンショック時に自社株買いを大幅減少したであろうこれらの企業を切り捨てることになります
これは単年度純利益を基準とする低PER戦略も抱える弱点であり、つみたて次郎としては許容できません。
配当金は信頼度が高く、景気変動による増減が少ないという特性から、定量的なスクリーニング手段として優秀だと考えています。
逆にこれらの前提が崩れたならば、高配当戦略から身を引くつもりです。
とはいえ、株式と配当の歴史は非常に古いですし、配当金目当ての投資家が存在する以上、この前提は当面崩壊しないとは思います。
それぞれの弱点をまとめてみます。
高配当ETF…割安かつ低配当銘柄を切り捨てることになる(BRK.Bが良い例)
総還元性向ETF…大きな景気変動局面で売買回転率が上昇する(多分)
結局どちらを許容するかという選択になります。
総還元性向に基づくスクリーニングは理想的ですが、機械的に抽出する場合は少し不安がありそうです。
例えばシラーPER(CAPE)のように、過去10年間の平均総還元性向を基準にするなどすればその弱点をカバーできそうです。
「過去10年間の総還元性向平均がS&P500を超える銘柄で構成されたETF」なんてのが低コストで販売されればVYMよりも好みかもしれませんが、実現する可能性は限りなく低いでしょう。
ということで、単年度の指標に基づく総還元性向ETFが販売されたとしても、つみたて次郎は高配当ETFをしばらくひいきすることになるでしょう。
最後に補足ですが、総還元性向ETFも高配当ETFも、機械的なスクリーニングが前提ならばS&P500を余裕でアウトパフォームすると思いますよ。
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