配当金は上昇相場のアクセル?
3連休でも執筆中のシーゲル二郎です。
タイトルの言葉は、毎度おなじみジェレミー・シーゲル氏の著書「株式投資の未来」で語られた名言です。正しくは次の通りです。
配当金再投資 下落相場のプロテクター、上昇相場のアクセル
今回は、上昇相場のアクセル部分について説明していきます。
「配当金は下落相場のプロテクター」を先に読んでください。
上昇相場のアクセルとは、下落相場で配当金再投資を積み重ね、株数を上昇させたことが、上昇相場で素晴らしいリターンにつながるという内容を表しています。
しかし、皮肉にも下落相場でプロテクターが働き、株価があまり下落しないことで、株数を思ったほど増やせないという矛盾も生じてしまいます。配当金再投資が素晴らしいリターンをもたらすのは、次の2つの条件を満たすときです。
①配当金が下落相場でも維持され続ける
②下落相場で企業価値よりも株価が割安になる
上記のうち、①は連続増配企業ならば比較的安心できますが、②はあまり期待できません。連続増配企業は、配当金をどんな時でも増やし続けるので、下落相場では避難先として重宝されてしまうからです。
上記2つの条件で魅力的だと思ったのが、嫌われ者のコングロマリット企業です。とはいえ直接投資はしていませんが(泣)
参考記事「コングロマリットが高いリターンをもたらす理由」
実際、連続増配企業はディフェンシブ性が高いといわれています。
VIG(米国連続増配ETF)と、S&P500を比較すると、わずかではありますが下落に強く、回復速度も速いです。その分、直近のボーナス相場では差がなくなっています。
つまり、下落相場での連続増配企業への新規投資は旨みがないということです。下落相場になってから連続増配戦略を取るのは、最悪の選択ともいえます。
始めるなら、市場が楽観的になっている今でしょ!(突然のセールストーク)
ですが、シーゲル二郎の愛する米国配当貴族指数は、少し違う結果になっています。
出典「indexology Biog」
S&P500(青)と、米国配当貴族指数(赤)の比較です。まず、2000年ごろのITバブルでは、情報技術セクターほとんどを含んでいなかった配当貴族が一度下落し、バブル崩壊後は大きく上昇しています
しかし、2008年からのリーマンショックでは、S&P500よりも大きく下落しています。米国配当貴族指数は、S&P500よりも下落相場に強いとは言えないのです。
しかし、その後の回復力は歴然で、最終的にS&P500に大きく勝っています。
このグラフには税金や手数料が考慮されていないという弱点もありますが、悪い点を挙げる分には差し支えないでしょう。
米国配当貴族指数は、ただの連続増配企業にフォーカスしたわけではありません。バンガード社の連続増配ETFのVIGと比較してみます。
米国配当貴族 | VIG | |
採用基準 | 連続増配25年 | 連続増配10年 |
採用銘柄 | 51 | 188 |
構成比率 | 等金額 | 時価総額 |
細かい違いは無視して、最大の違いは構成比率の決め方です。VIGは、伝統の時価総額基準インデックスです。そのため、市場の上下に合わせて調整しません。
そのため、連続増配企業のディフェンシブ性がそのまま活かされています。
一方で米国配当貴族は、等金額で保有します。だいたい1銘柄あたり2%で固定されているので、上昇した株を売り、下落した株を買ってリバランスを3ヶ月に一度実行します。
リーマンショックが起きた金融危機では、多くの金融セクター株が増配できずに脱落しました。脱落といっても、瞬間的にではなく、ダラダラと椅子から外されていったので、その間はポンコツ金融株に多くの資金が向けられました。株を追加購入してもすぐ脱落するので、大きな損失となりS&P500以上に下落したのだと予想しています。
その一方で、下落しながらもギリギリ増配を維持できた企業が、景気回復で大幅上昇したので、上昇相場でアクセルを踏むことができたのだともいえます。
これは、等金額インデックス共通の特徴でもあり、一方的な上昇相場にも弱く、一方的な下落相場にも弱いです。強みは、ジグザグのレンジ相場で株数を多く増やせること、不況で生き残った企業がV字回復局面で大きなリターンをもたらすことです。
これはドルコスト平均法やリバランスな度も理屈は同じです。これらの戦略も、一方的な上昇相場や下落相場には無力です。
そのため、米国配当貴族に投資する人や、連続増配企業に等金額投資する人は、不況局面で市場平均以上に下落する可能性があることを覚悟しなければなりません。
米国配当貴族の魅力は、ディフェンシブ性ではなく回復力です。
参考記事「米国配当貴族指数が市場平均を超えるシンプルな理由」