連続増配株式が高リターンというデータはない
つみたて次郎です。
米国株クラスタでは、シーゲル流投資を参考にしている人が多く、応用として連続増配企業を中心に投資している人が多いです。
過去のリターンが良かった通称「シーゲル銘柄」の中には、連続増配銘柄が多く含まれていました。
参考記事「生き残りS&P500黄金銘柄」
しかし、シーゲル教授の著書であり日本で有名な「株式投資の未来」及び「株式投資第4版」では、具体的に連続増配とリターンについてのデータは載っていません。(最新版である「Stocks for the Long Run 5」は未読なのでもし載っていれば教えてください)
シーゲル教授は、配当金の重要性を一貫して主張しており、特に「株式投資の未来(以下:赤本)」では顕著です。
配当金を支払い続ける企業に投資するべきということで、連続増配や減配に関する記載も多数あります。
そして具体的な投資戦略として、過去15年間の減配歴がない銘柄を選んでいく「S&Pコア10種」「ダウコア10種」というものが紹介されています。
参考記事「S&P10種とS&Pコア10種ついて考えてみる」
先に読んでいただくと分かりやすいかと思います。厳密には連続増配ではありませんが、意味合いとしてはほぼ同様です。
赤本では、高配当やバリューなどに属した銘柄群のリターンが優れていたというデータが載っています。
参考記事「高配当戦略の有効性」
参考記事「低PER戦略の有効性」
参考記事「低PBR戦略の有効性」
しかし、連続増配に関連するのは上記のS&Pコア10種やダウコア10種くらいしかなく、成績も飛びぬけてよいとはいえません。
しかも、単純な連続増配ではなく高配当との複合戦略なので、本当に連続増配のおかげだったのかも懐疑的です。
例えばですが、連続増配年数ごとのリターンみたいなデータがあれば、より説得力も増したのではないかと思います。(連続増配年数10年以上の銘柄はリターンが良いとか)
成績上位銘柄が多いことと、連続増配銘柄が高リターンであるかどうかは直接結びつきません。
もしかしたら、連続増配銘柄の多くが冴えないリターンで、たまたま上位だけ目立っていただけという危険性もありますからね。
ここでシーゲル本からいったん離れて、連続増配銘柄のリターンに関するデータを考えていきます。
連続増配銘柄を集めた指数として有名なものに、S&P500配当貴族指数というものがあります。
参考記事「米国配当貴族指数とは?」
略して「配当貴族」と呼ばれることもありますね。この配当貴族は、過去S&P500よりも良いリターンをもたらしてきました。
出典「indexology Biog」
赤い線が配当貴族です。2000年前後のITバブル、2008年前後のリーマンショックで特に差を広げているのが分かります。
配当貴族は、S&P500採用銘柄かつ連続増配歴が25年以上の銘柄から約50種を選び均等額で保有するというルールがあります。
この事実をもってすれば、連続増配銘柄=高リターンという図式が成り立ちそうですが、いくつか問題点があります。
①連続増配25年以上という縛り
連続増配25年以上で絞っても、米国ならば100社近い銘柄が該当します。配当貴族は50銘柄強しか採用しないので、非採用銘柄のリターンについては未知数です。
②等金額という構成比率
配当貴族指数は、時価総額ではなく全銘柄に同額ずつ分散を行います。均等分散というのは、S&P500全体でもよいリターンをもたらしており、リバランスを通じて逆張りが行われるのが大きな理由の1つです。
相対的に時価総額が小さい企業へ資金が多く振り分けられるので、小型株効果につながりやすいというメリットもあります。
そしてこれらの裏を返せば、意図的な銘柄選定+等金額ウェイトによって超過リターンを得ることができていただけかもしれないという可能性を生み出してしまいます。
配当貴族指数が高リターンだった事実が間違いないとしても、それは直ちに連続増配年数が長いほど高リターンになるという証明にはならないということです。
その他の連続増配に関する内容としては、「バンガード・米国増配株式(VIG)」というETFがあります。
連続増配10年以上の約180銘柄を時価総額加重平均で保有するという内容になっており、配当貴族よりもより包括的です。
こちらであれば、単純に連続増配年数とリターンの関係を証明することができそうですが、こちらもこちらで問題があります。
①セクターの偏りが大きい
エネルギーセクターに属するエクソンモービル(XOM)やシェブロン(CVX)は連続増配派からの人気が高いですが、VIGでは今現在エネルギーセクター企業が一切含まれていません。
これは、連続増配年数だけでなく、配当性向などの増配余力を考慮した結果であると推測できます。
裏を返せば、連続増配年数以外の銘柄選定があるということであり、増配年数とリターンの相関性を調べるのには不適切だといえます。
②設定が比較的新しい
VIGが設定されたのは2006年4月なので、長期データを検証できるほどの歴史がないというどうしようもない問題が発生します。
結局のところ、配当貴族もVIGも連続増配のみを基準として構成されているわけではありません。
したがって、仮に配当貴族やVIGの成績が今後良かったとしても、連続増配株=高リターンという結論を出すことはできないということになります。
つみたて次郎は元々、連続増配株に興味を持っていましたが、最近では高配当株やバリュー株について考えることが多くなりました。
その大きな理由の1つが、今回まとめた記事で説明している内容となります。
連続増配という概念は、高配当・低PERなどと違い、明確なバックテスト結果がありません。
バックテストはあくまで過去の結果に過ぎませんが、それを頼りに投資先を決めるのであれば、より確実でシンプルな根拠であるほどよいです。
その意味で、リターンときれいに相関性のあった高配当株や低PER株というのは、幅広く分散することでバックテストをなぞるポートフォリオを構築可能ですし、再現性も高いです。
そしてつみたて次郎がバンガード・米国高配当株式(VYM)をやたら押す理由もそれです。
配当利回りというリターンとはっきり相関性のあった指標を頼りにしており、VIGと比べ銘柄数が多く銘柄選定基準が非常に緩いです。
まさに、高配当戦略というバックテストをそのままなぞるようなスマートベータETFであり、後はその傾向が今後も続くことを祈るのみです。
しかし連続増配戦略の場合、根拠と環境という2要素がどちらも欠けている状況であるといえます。
タイトルにもあるように、「連続増配株式が高リターンというデータはない」というのは非常に大きな問題点です。
さらに厳しく言えば、連続増配年数というステータスは投資先を考えるうえであまり重要ではない可能性があるということになります。
もしかしたら、連続増配年数とリターンは逆相関していたなんていう驚愕の事実が発覚するかもしれません。
最強のシーゲル銘柄であるフィリップモリス・インターナショナル(PM)も、減配はしませんでしたが増配できなかったこともありましたし、リーマンショックではファイザー(PFE)やメルク(MRK)のような優良ヘルスケア企業も減配しています。
連続増配年数で機械的にスクリーニングを行っていた場合、これらの優良銘柄を切り捨てていたことになります。
「減配したら即売り」という言葉をたまに聞きますが、むしろシーゲル流投資とは真逆の投資行動になってしまう危険性がありそうです。
連続増配年数は、あくまで投資判断の補助として考えるのがよいのかもしれません。
ここまで言っておいてアレですが、連続増配株そのものは優良な投資先だと思っています。
矛盾しているかもしれませんが、連続増配年数という縛りが、他の要素にも影響してくるからです。
連続増配銘柄は、当然ながら創業から時間が流れており、超急成長企業はほとんど含まれていません。これにより、極端な割高銘柄を避けることができます。
また、連続増配できるということは企業のキャッシュフローが健全であり、株主還元意識もしっかりしている可能性が高いです。配当金に回すための資金が半永久的に必要なので、設備投資も強制的に制限されます。
少ない設備投資で安定的に利益を稼ぎ続ける企業は、良い投資先になる可能性が高いです。
話がややこしくなりましたが、連続増配銘柄の特徴は間接的に高リターンになる要素をカバーしているのではないかという推測です。
なので個人的には、連続増配株を中心にポートフォリオを組んだり、配当貴族やVIGに投資するのも十分有力だと考えています。
実際、つみたて次郎の投資先の半分弱は米国配当貴族指数に連動する投資信託ですからね(笑)
配当貴族が悪いわけではないが、よりよい投資先を考えた結果、楽天VYMにたどり着いたという流れですね(まだほとんど投資できてないけど)
連続増配株=正義のような風潮がありますが、直接的に有効性を証明するデータはないという事実は重く受け止めていく必要がありそうですね。
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