【ファクター投資入門】配当戦略は有効ではない?
つみたて次郎です。
先日『ファクター投資入門』という本を読みましたが、その中で配当戦略について言及しているページがありましたので考察していきたいと思います。
参考記事…【書評】ファクター投資入門
本書は1~8章の本文及びA~Gの付録から構成されていますが、そのうち付録Cのテーマが以下のようになっています。
配当は有効なファクターたり得ない
(一応)配当派のつみ次郎としては辛いところですが、内容を確認していきましょう。
本項目の概要では、配当ファクターがトータルリターンに直接貢献していないという事を中心に説明されています。
本記事では、つみ次郎が気になった部分を中心に考察していきたいと思います。
配当ファクターが流行した理由
配当ファクターが有効でないのに流行した理由について、以下のように言及されています。
2008年の大不況以降、安全な債権がもたらす利回りが低いことで、これまで保守的であった投資家の多くがアロケーションを安全な債権からリスクのある有配株へとシフトさせている。これは、われわれが正しい方式であると考えるトータルリターンに基づく方法ではなく、インカムやキャッシュフローに基づく投資方法を採る投資家に特に顕著である。
出典「ファクター投資入門」
これを噛み砕くと「トータルリターンを見ないで配当見てどうすんの?」という米株クラスタでもよくある煽り文章になりますね(笑)
(他の前提が同じなら)配当金の大小で状況は変わらない・自分で株式の一部を売れば配当金受け取りと同じようなことができる(本書では自家製配当と表記)ということが複数ページを使ってとても親切丁寧に解説されています(笑)
投資家が配当株を選好してしまう理由として、〇〇円の配当受け取りと〇〇円の株式売却では心理的な負担が違うという説明もされており、非常に納得できるものです。
配当金の受け取りと株式の売却を全く別次元のものと考えているような人は結構見かけますからね(煽)
配当ファクターによるリターンの源泉
さてここからが本番ですが、配当ファクターが有効でないのであれば、過去に高配当戦略等が有効であったのは偶然だったのでしょうか?
その答えに対して、本書は以下のように説明しています。
リターンを決めるのにあたり配当が重要な役割を果たしているのであれば、現在の資産評価モデルは有効ではなくなる。言い換えれば、配当を加えることで現在用いられているファクターの説明能力が向上するのであれば、配当をファクターの1つとしたモデルが構築されていたはずである。すでに広く知られているファクターに「乗っかっている」ことが分かっている(イクスポージャーを持っている)銘柄の期待リターンが配当政策によって変化しなかったのであるから、配当ファクターは存在しないことになる。例えば、高配当戦略のリターンは、すでに一般的になっているファクター、とりわけバリューファクターへのイクスポージャーによって十分説明が可能である。これは、増配戦略でも同じであり、そのリターンは収益性・クオリティファクターへのイクスポージャーで十分に説明できる。
出典「ファクター投資入門」
前半の部分については理解半分といった感じですが、後半の部分については分かりやすいですね。
噛み砕けば「配当じゃなくてバリューやクオリティを見ればよくない?」というこれもよくある煽り文になりそうです(笑)
ただつみ次郎としては、逆に高配当や連続増配に複数のファクター要素が存在していると考えているので、むしろ嬉しい結論といえます。
参考記事…バリュー株投資として考える高配当戦略
参考記事…高配当株とバリュー株の重複について考えてみる
参考記事…連続増配株は順張り・高配当株は逆張り
ダウ犬なんかもバリュー戦略の1種として考えられていますが、スクリーニング基準は配当利回りですからね。
高配当はバリューの亜種・連続増配はクオリティの亜種と思えばちょっと心強いですね(笑)
逆に上記のファクターを意識しないで配当戦略をとるのであれば、それは前述したようなキャッシュフローの改善・心理的負担軽減を目的としたものとなりそうです。
度々言及していますが、ファクターを意識してアウトパフォームを狙う配当戦略と、配当金受け取りを目的とした配当略では全くその目的が違うという事ですね。
この2つが混同されなくなる日はいつ来るのだろうか…(辛)
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無配当株を除外するリスク
本記事では、配当ファクターを採用するうえでのリスクについて以下のように言及しています。
アメリカ株のおよそ60%、米国外株のおよそ40%が配当を支払っていないので、これらの発見は重要な示唆を持つ。つまり、配当をファクターとしてポートフォリオを構築し、無配の銘柄を除外すると、ポートフォリオの分散がかなり小さなものとなってしまうのだ。
出典「ファクター投資入門」
一見かなり大きな弱点に見えますが、時価総額比で見れば無配当株が全体に占める割合はさほど多くはないことを先日別記事にて検証しました。
参考記事…【米国大型株】S&P100指数のうち無配当銘柄が占める割合は〇%
確実に採用できない銘柄が一定数存在するというのは確かに配当ファクター特有の弱点であるといえますが、そこまで大きな弱点ではないというのがつみ次郎の結論です。
自社株買い+債務返済+配当
本書では、高配当戦略を大幅に改善する方法として自社株買い・債務返済・配当の3つを組み合わせることを提唱しています。
自社株買いと配当については、どちらも直接的な株主還元であるため一緒に考察されることも多いですが、債務返済も考慮するというのは盲点でした。
参考記事…高総還元性向ETFが発売されたら高配当ETFは用済み?
確かにキャッシュの直接的な使い道という視点で考えれば、同じテーブルで考えてもよさそうですね。
ただ、米国では債務返済どころかどんどん債務を増やして配当や自社株買いしまくる企業が多く存在している(していた)ので、そうすると結局債務総額も考慮して…という感じでどんどん複雑になってしまいそうな気もします。
参考記事…【悲報?】米国で債務超過企業が増加中
ベタな表現をすれば、配当や自社株買いは積極的な株主還元・債務返済は消極的な株主還元と言えますし、債務返済することで財務レバレッジが下がりROAやROE等にも影響を与えますのでなかなかもどかしいところです。
逆に言えば、借金まみれ企業を不当に高く評価するということも減りそうですので、現在のような有事の際には心強いスクリーニング法かもしれません。
配当ファクターまとめ
本書全体を通してためになる部分は多かったですが、その中でも特に学びが多かった項目でした。
参考記事…【書評】ファクター投資入門
ですが、つみ次郎の配当ファクター愛(?)を揺らがすほどではなく、むしろそれを増幅させることとなりました(笑)
配当ファクターに限らず、有効かどうかというのは大いに議論されるべきですし、常に称賛される戦略こそ危険だと思っていますので、賛否両論ある中で取捨選択していくというのが投資…というより人生の在り方ではないかと思います(哲学)
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