バンガード・米国情報技術セクター(VGT)分析
シーゲル二郎です。
今回は、バンガード・米国情報セクター(VGT)を分析していきます。
米国の情報技術セクターに含まれるIT企業にまとめて投資できるETFです。
バンガード・米国情報技術セクターETF (2017/6/30現在)
項目 | データ |
信託報酬 | 0.10% |
銘柄数 | 364 |
PER | 23.5倍 |
PBR | 4.7倍 |
ROE | 20.6% |
利益成長率 | 14.1% |
売買回転率 | 5.0% |
標準偏差 | 14.11% |
利益成長率は14%を超えています。情報技術セクター自体が超成長産業で、新陳代謝が激しい業界ですから当然ですね。標準偏差も14%を超えており、S&P500平均の10.35%を大きく上回っています。
PBRも4.7倍と高めですが、多額の資本金が不要な事業が多いので高めに出ているようです。
総じてハイリスクハイリターンとなっています。
セクター全体としてはグロース株に近く、機動的な売買が求められそうです。
S&P500との比較です。過去10年間では大きなリターンを得ています。配当利回りは現在1%くらいしかないのでトータルリターンの差は縮まりますが、それでも圧勝しています。
業種別だと次の通りです。(2017/6/30現在)
業種 | 構成比率 |
インターネットソフトウェア | 19.9% |
ハードウェア | 16.3% |
システムソフトウェア | 10.6% |
半導体 | 12.9% |
情報処理・外注サービス | 11.4% |
その他 | 28.9% |
業種別でみても、理解できない分け方です。情報技術セクターは事業が複雑で理解が難しく、個別株投資家からは敬遠されがちです。
バフェット氏の名言にも、「理解できない企業には投資しない」というありがたいお言葉があります。
かといって、セクター全体に投資すると成長の罠に陥る可能性が高く、投資難易度は高いといえます。
上位10銘柄は次の通りです。(2017/6/30現在)
順位 | 会社名 | 構成比率 |
1位 | アップル | 14.0% |
2位 | アルファベット | 10.3% |
3位 | マイクロソフト | 9.4% |
4位 | フェイスブック | 6.6% |
5位 | ビザ | 3.2% |
6位 | インテル | 2.9% |
7位 | シスコシステムズ | 2.9% |
8位 | オラクル | 2.9% |
9位 | IBM | 2.6% |
10位 | マスターカード | 2.1% |
上位10銘柄合計 | 56.9% |
※社名をクリックすると企業分析ページに飛びます。
投資経験のない人でも大体聞いたことがある名前かと思います。2位のアルファベットは、グーグルの親会社です。
こうしてみると、BtoCで消費者に近い企業が多いですね。バフェット氏がアップルを買い増ししてポンコツIBMをうっぱらったのは記憶に新しいですが、これらの企業は技術で売る時代からブランドで売る時代に移り変わっているのかもしれません。
アップルを除けば、システムネットワーク効果を活かしブランド力を高めている企業が多いですね。ビザなんかはその代表で、シェアが高ければ高いほど、低コストでサービスを提供できるし、利便性も高まっていきます。
これらの企業は深い堀(=ワイドモート)を築いており、ちょっとやそっとでは崩れません。ですが、情報技術セクターではヤフー、ゼロックスといった過去の栄光がすぐに忘れ去られてしまうので、他セクターに比べると少し低い堀かもしれません。
シーゲル派にとっては、あまり積極的に投資したい企業が少ないセクターです。ジェレミー・シーゲル氏が提唱した「成長の罠」では、企業やセクターの成長と投資家のリターンは比例しないどころか、逆相関の関係もあるという衝撃的なデータについて述べられています。
情報技術セクターは、ありとあらゆる新技術をひっさげた企業が集まるため、嫌でも成長期待がかかります。2000年前後で起きたITバブルによる株価崩壊も忘れてはいけません。
その一方、リーマンショックの後は素晴らしい勢いで回復しており、IT企業そのものは順調に成長しています。過去10年ではS&P500を大きく上回るリターンを叩き出しています。
シーゲル派の多くは生活必需品・ヘルスケア・エネルギーへの投資割合を多くしていますが、情報技術セクターも過去のセクター別リターンではかなりいい成績になっています。
1957年~2003年におけるS&P500セクター別トータルリターン
1位 ヘルスケア…14.19%
2位 生活必需品…13.36%
3位 情報技術…11.39%
4位 エネルギー…11.32%
5位 一般消費財…11.09%
参考文献「株式投資の未来」
エネルギーを抑えて堂々の第3位です。リターンが良かったIBMを抜くと全体の平均を下回っていたようですが、そんなことを言っていたら他のセクターの数字も信用できなくなってしまうので、このまま考察します。
2003年までなので、ITバブル下落真っ盛り中の結果です。最近の好調を踏まえればエネルギーをさらに大きく上回っています。
過去のセクターリターンだけを考えるなら、生活必需品・ヘルスケア・情報技術が最適解といえます。
ですが、配当利回りが低く、成長期待がかかりやすい情報技術セクターは、長期投資家からはあまり評価されていません。
また、市場平均であるS&P500における構成比率が1位で全体の20%以上を占めているため、わざわざセクター別で投資してオーバーウェイトにするまでもないのかもしれません。
「情報技術は市場平均に含まれている分だけで十分」という投資家もかなり多いと思われます。
その一方、セクター全体の今後の成長は疑う余地がないため、比較的地味な銘柄を選び抜けば、成長の罠を避けて将来大きなリターンを得られるかもしれません。
みんな大好きインターナショナル・ビジネス・マシーズ(IBM)の今後の行方にも注目です。
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