低PSR戦略の有効性(過去最高のバリュー株投資)

つみたて次郎です。

バリュー株を探すための指標として、株価売上高倍率(PSR)というものがあります。

参考記事「株価売上高倍率(PSR)とは?

とある企業の売上高に対する株価の比率を表したもので、低いほど割安であると判断されます。

純利益に対する株価の比率を表す株価純利益倍率(PER)の親戚です。

PERは非常にメジャーな指標ですが、それに対しPSRは比べるとかなりマイナーです。

売上高を参考にするので、売上高が多く利益率が低い小売業などの場合割安になりやすく、逆に利益率が高い企業であるほど割高になりやすいという欠点を抱えています。

極端な話赤字企業であっても、売上さえ多ければ問題なしという判断になってしまいます。

その反面、売上高は純利益に比べて変動が少ないです。純利益を参照するPERの場合、企業の一時的な要因で減益になったり赤字に転落した場合、指標として機能しなくなります。

PSRは売上という変動しにくい数値をもとに計算されるので、金融危機や大不況などの異常事態であっても最低限機能するというメリットがあります。

そしてPSRが低い銘柄は、米国市場の過去長期において素晴らしいリターンをもたらしていることでも有名です。

 

全銘柄のPSRの十分位数分析(1951~1996年)

十分位数 複利リターン 標準偏差
1(低PSR) 17.63% 19.79%
2 16.52% 19.36%
3 16.50% 20.01%
4 15.64% 19.56%
5 13.91% 20.40%
6 13.18% 19.95%
7 11.62% 19.23%
8 9.93% 18.19%
9 7.78% 19.81%
10(高PSR) 5.12% 22.73%
全銘柄 13.23% 19.51%

参考文献「ウォール街で勝つ法則」

これは、米国株をPSR別にグループ分けした時の長期リターンと標準偏差です。

PSRとリターンは綺麗に反比例しています。特に最低グループと最高グループの差は凄まじいです。

このデータは、オショーネシー著「ウォール街で勝つ法則」に記載されている内容です。

本書では、PSRのみならずPERやPBR等、様々な指標別の長期リターンについて分析されていますが、数ある指標の中で最も成績が良かったのがPSRでした。

過去のデータで考えるのならば、PSRこそが最高のバリュー株を見つけ出すための指標だったということになります。

これは意外だったと思った半面、PSRが有効だった理由についても何となく想像がつきます。

株式投資とは、企業の事業リスクを背負う代わりに利益を得る行為です。

そして株主が得るリターンの源泉は、企業が稼ぐ純利益です。そのため、純利益に対し株価が割安かどうかを判断するPERがまず思い浮かびます。

しかし上記で記したとおり、PERは年度ごとの変動が激しく、単独でスクリーニングに使用するのは不安です。

低PER戦略も過去十分有効でしたが、低PSR戦略には到底かないませんでした。

おそらく理論上は、PERのほうがより正しい指標だとは思いますが、現実問題としてPERのみでスクリーニングをした場合、頻繁な入れ替えが発生してしまいます。

特にリーマンショック時なんかは多くの企業が赤字でPER算出不可になっていましたから、PERのみを頼りに投資するのは非常に難しい局面であったのではないかと予想できます。

その点売上高を参照するPSRならば、赤字であっても売上さえ維持できていればしっかり機能しますので、緊急時でもそれなりに役立ちます。

そして売上高と純利益は比例の関係にあります。集団としてみれば、売上高が多い企業=純利益が多い企業になるはずです。

PSRが低い企業群は、長期的にPERが低い企業群でもあったはずです。そしてPSRは変動が緩やかですから、単年度のノイズにとらわれずうまく割安株を抽出できていたのではないと推測します。

つみたて次郎もたびたび主張していますが、スクリーニング手段とは様々な局面で役立つものではなければなりません。

つまりどんな時でも一定の有効性があり、普遍的に機能する指標であるということです。つみたて次郎がPERをあまり好きではない理由でもあります。

参考記事「高総還元性向ETFが発売されたら高配当ETFは用済み?

配当利回りによるスクリーニングを評価しているのも、単年度ごとの変動幅が緩やかであるというのが最大の理由だったりします。

 

そんな低PSR戦略ですが、理屈では何となく理解できても直感的には怪しいと思う点もあります。

PSRは、売上高が多いだけの赤字企業であっても割安と判断されてしまうという弱点があります。いくら売り上げが多くても、万年赤字であれば投資先としては不安です。

逆に、売上高が小さいけど利益率の高い企業は除外することになります。IT革命等により、過去には考えられなかった利益率を誇る企業もたくさんありますが、それらの多くを斬る捨てることにもなります。

結果として、小売業などの薄利多売型企業の比率が高くなり、ソフトウェア企業のような高利益率企業の比率が低くなります。

企業が稼いだ純利益が投資家のリターンになるというのは、これからもずっと変わらない真理だと思いますが、売上高が多い企業=純利益が多い企業が成り立つかどうかは、個人的に懐疑的です。

ベタな発言で恐縮ですが、産業構造の変化によってPSRが通用しない時代が来るかもしれません。

また非常に面白いのが、アマゾン・ドットコム(AMZN)フィリップモリス・インターナショナル(PM)という対極ともいえる銘柄のPSRが現在ほぼ一緒ということです。

5月17日現在、両社とも実績PSRは4.37倍となっていました。

売上高が多いけど戦略的に利益を上げていないアマゾン、売上高は少ないけど圧倒的高収益なフィリップモリスは、PSRでは同等の評価をされているということになります。

これほど正反対の企業が同評価になる指標というのもなかなかないと思います。

PSRは、PER以上に異なる業種を比較する際には要注意な指標かもしれません。

どんな指標にも長所短所が存在しますが、機械的なスクリーニングだけで高リターンを得られた指標は多数あります。

その最高峰ともいえるPSRは、今後も素晴らしいリターンをもたらしてくれるのでしょうか?

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PSR次郎

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