【書評】ファクター投資入門
つみたて次郎です。
『ファクター投資入門』という本を読んでみましたので感想文です。
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ファクター投資とは、特定の属性(サイズ、バリュー、クオリティ、モメンタム等)に注目した投資手法です。
内容についても、初心者でも理解できそうな簡単なものから聞いたこともない金融用語が飛び交う難解なものまで非常に幅広く、つみ次郎は部分部分で読み解くので精一杯でした(笑)
全ての内容を理解するのは非常に難しそうですが、その中でも比較的わかりやすくてためになった部分を紹介していきたいと思います。
超過リターンを求める3つの理由
大前提として、ファクター投資は市場平均を上回るリターンを要求する投資手法です。
市場平均と同等でいいなら普通のインデックスファンドでも買えばいいだけですからね。
そして、なぜ多くの投資家がそれで満足できないかという理由について、以下の3点を述べています。
①株式保有のリスクは景気循環のリスクと高い相関性があり、景気後退期には給与等が減る上に株も暴落することが多いため株式に対して高いプレミアムを求める。
②株式の多くが富裕層の個人によって保有されているが、ある程度の資産がある人は積極的にリスクを取る必要がないため積極的にリスクを取ろうとしない(=株式に対して高いプレミアムを求める)
③投資期間を長く取れる若者ほど株式保有への意欲が高いが、収入が低い・消費欲が高い・借入能力が低いといった事情から株式に大きく投資することができないため株式に対して高いプレミアムを求める。
どれも非常に素晴らしい説明だったので本書から全文引用したいところですが、長すぎるので意訳させていただきました。
この部分を読むためだけに買う価値があるレベルです(ステマ)
①に関しては、不況に強い収入減を持っている人が投資に有利な理由と繋がりますね。
参考記事…景気敏感な収入は積立投資に向いていない?
②に関しては、投資額とリスク許容度の関係に繋がります(投資額が多いほどリスク許容度は下がる説)
参考記事…景気敏感な収入は積立投資に向いていない?
③に関しては、レバレッジ投資やサラリーマン債券の話に繋がりそうですね。
参考記事…サラリーマン債券という最強の資産
いずれも投資をする上では重要な考え方ですが、まさかファクター投資の本でこれらの話を見ることになるとは思いませんでした(笑)
これらの歪みを活用し高リターンを得ようとするのがファクター投資とも言えますね。
グロース株と含み益と期待
ファクター投資の王道ともいえるバリューVSグロースですが、本書では損失回避(利益より損失に対して敏感)という行動を理由にグロース株のリターンについて以下のように説明しています。
グロース株は、現在の高い株価が記すとおり、概して直近で優れた業績を残した企業であることが多い。それゆえ、投資家は、最近のパフォーマンスで得た利益がクッションとなり、将来の損失をさほど気にしないようになる。それゆえ、彼らはグロース株に低いリスクプレミアム(より大きなリスクを喜んで受け入れる)を適用するのだ。求められるリスクプレミアムが小さくなることで株価はさらに上昇し、将来の期待リターンは小さくなるのであるから、これはモメンタム効果を説明する一助になるかもしれない。
出典「ファクター投資入門」
これまた素晴らしい文言ですね…(ベタ褒め)
含み益があることで狼狽売りを防げる(含み益プロテクター説)というのは投資クラスタ界隈でもよく出る話題ですが、それが全体の傾向となると期待リターンを押し下げることにつながりかねないということですね。
また、宝くじ投資(可能性は低いが巨額の報酬をもたらす)を好む投資家が多いため、小型グロース株等の銘柄が割高になるといった説明もありました。
これは、つみ次郎が宝くじ(本物)に対して期待リターンを求めていない理由と全く同じでとても納得できますw
誰もが高いリターンを要求する銘柄は、期待リターンという意味では冴えない可能性が高いという事ですね。
ファクターの分散
本書では、リターンの差異を説明するファクターとして以下の5種類を重視しています。
・市場ベータ
・サイズ
・バリュー
・モメンタム
・収益性・クオリティ
そしてこのうち、1964~2015年におけるアメリカ市場では各ファクターの間で以下のような相関性がありました。
出典「ファクター投資入門」
この中でも特にモメンタムが市場ベータ・サイズ・バリューと負の相関であるという点に注目し、これら3つのファクターにモメンタムをぶちこむことで分散効果が期待できるという結論を出しています。
これは以前紹介したウォール街で勝つ法則でも言及されていた内容ですね。
参考記事…【要点まとめ】ウォール街で勝つ法則
つみ次郎の中でモメンタムに対する評価が急上昇しています(笑)
ただ、モメンタム戦略を実行できる金融商品は少なく、個別株で実践しようとすると頻繁な入れ替えになりそうなのが辛いところです。
ファクター投資入門まとめ
つみ次郎が好んでいるスマートベータファンドは、ファクター投資を実現するためのアイテムと言えます。
そのためワクワクしたながら本書を手に取りましたが…良い意味で裏切られました。
読む前はウォール街で勝つ法則みたいにひたすら各ファクターごとのデータが並んでいるのかと思いましたが、本書は表・グラフはあまり多くなく「なぜそのファクターが有効か?」という根拠の解説に相当数ページが割かれています。
ファクター投資は有効であるとしつつもスマートベータと呼ばれる戦略の多くはマーケティングの道具にすぎなず、広く知られたファクターを再包装したものとして警告しているのも好印象です。
その気になればいくらでも派生を増やせる都合の良い決まり文句ですからね(辛辣)
元々この感想文も〇〇ファクターが最強や!みたいな結論で〆ようと思っていましたが、実際はここまで書いてきたような行動学・心理学的な内容のほうが印象に残ったのでこのようなまとめかたになりました(笑)
つみ次郎の考え方と共感できる部分も多く、非常にためになる1冊でした。
余談ですが、本書の付録に「配当は有効なファクターたり得ない」というのがあり、タイトル通り配当戦略に対する問題点をガッツリ指摘しています。
これで1記事書けるくらいのボリュームになりそうなので、近いうちに別記事で紹介したいと思います。
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