2020年以降は分配金の出る投資信託のほうが有利になる?

つみたて次郎です。

多くの金融商品は、売却益及び配当金に課税されます。

そして売却益課税(キャピタルゲイン税)については、自分が売らなければ半永久的に繰り延べできるのに対し、配当課税(インカムゲイン税)については自分の都合に関係なく配当金が出る都度課税されてしまてしまいます。

そのため長期保有する前提であれば、配当金が多く出る株式や投資信託は税制上不利になることが多いです。

投資信託においては、毎月配当金がもらえる毎月分配型と呼ばれるファンドが大人気ですが、インデックス型に限れば設定以来配当金を一切出していないファンドが主流となっています。

通称無分配型投信なんて呼ばれたりしますね。

参考記事…投資信託における無分配型と分配金再投資型の違い

配当金が出ない限り課税を繰り延べできるため、長期保有する前提であれば無分配型がトータルリターンでは有利になることが多いです。

しかし今回、上記の通説を覆しかねないレポートが大和総研グループより発表されていたので紹介してみたいと思います。

外部リンク…投資信託の外国税額控除の制度解説とファンドに及ぼす影響の試算

具体的には「2018年税制改定」により、2020年1月1日以降における外国税額控除の仕組みが変わることで、分配金を出すファンドのトータルリターンが改善する可能性があることについて触れられています。

 

外国税額控除とは?

米国個別株等に投資している方であればご存じかと思いますが、外国株式は上場国と日本の2ヵ国で二重課税されてしまうケースが多く、そのままでは不公平になってしまうという問題があります。

キャピタルゲイン税は日本国内だけの場合がほとんどですが、インカムゲイン税については国内課税20.315%の他に課税されてしまう場合が多いです(以下国内配当課税は20%と表記)

出典「大和総研グループ

米国株(米国籍ETF含む)の場合は10%なので、国内課税20%と合わせて約30%ほどが税金として配当金から引かれてしまうことになります(厳密には28.2835%)

この二重課税を解消するための制度が外国税額控除です。

上記のうち、確定申告を行うことで外国で課税されてしまった税金の一部または全部を還付してもらうことができます。

ただし所得税等との兼ね合いがあるので、全額戻ってくる方はあまりいないようです。

 

 

公募投信でも外国税額控除?

外国税額控除が使えるのはこれまで現物株式や私募投資信託などに投資している場合に限られており、公募投資信託(ごく一般的な投信)では認められていませんでした。

出典「大和総研グループ

そのため配当金のうち外国課税分を取り戻す手段がありませんでした。

余談ですが、投資信託の場合三重課税になるケースもあります。

参考記事…投資信託やETFにおける三重課税問題について

ですが「2018年税制改定」により、2020年1月1日以降には公募投資信託でも外国税額控除が利用できるようになります。

配当金を出している投信については、運営にかかるコストが一部削減されるため、2020年以降はこれまでよりも若干有利な条件で運用することが可能になりました。

外国株100%で運用する投信の場合、今回の変更で年間0.1~0.6%のリターン改善につながるという試算が出ています。

具体的な配当課税の流れについて分かりやすいグラフが出ていたので張っておきます。

出典「大和総研グループ

また、レポート中にも記載されていますが、特にファンドマネージャーの実力等に左右されにくいインデックス型投信においては大きな意味を持つ数字となりそうです。

逆にこれまで有利とされていた無分配型投信は上記の恩恵を受けることができないため、結果的に向かい風となります。

なので今後は下記のような棲み分けになりそうです。

無分配型…売却益課税で有利、配当課税で不利
有分配型…売却益課税で不利、配当課税で有利

ようするに売却益の繰り延べを取るか、配当課税の軽減を取るかという比較になります。

これまでは再投資を前提とするのであれば、無分配型のほうが有利でしたが、一概にそうとは言えなくなっていくのかもしれません。

 

無分配型有利の通説は覆るか?

つみ次郎含め投信クラスタの間では「無分配型は正義」という風潮がありますが、この通説が覆される可能性も十分あり得そうです。

もし外国税額控除による恩恵が大きいのであれば、適切な額の分配金をその都度出したほうがトータルリターンの改善に繋がるため、これまで無分配を貫いてきた投信が分配金を積極的に出すようになる可能性も十分考えられます。

株式やETFと違い、投資信託は比較的自由な裁量で分配金額を決定することができますので、節税のため工夫する余地も大きいのではないかと思います。

上記の節税テクニックが現実的なものであるとすれば、投資家にとって有利に働くのは間違いありませんが、投信選びにおける新たな基準が追加されることになるため、投信業界及び投信クラスタは混乱することになりそうです。

もし分配金を出すほうが有利になり、インデックスファンドであっても分配金を出すのが当たり前の風潮になるのであれば、一番かわいそうなのは多数運用商品のベンチマークを配当抜き→配当込みに変更するという英断を決めた三菱UFJ国際投信㈱ですね(笑)

参考記事…eMAXIS Slim・つみたてんとう等のベンチマークが配当込み指数に変更

分配金を出す前提ならば、むしろ配当抜き指数のほうが好都合ですからね。

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毎月分配次郎

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