時価総額加重平均における高配当銘柄の構成比率について
つみたて次郎です。
インデックス投資に限らず、全ての投資家がチェックしておきたいのがインデックス指数です。
具体例を挙げると、TOPIX・S&P500などが有名ですね。
これらは市場平均を示しており、この指数にそのまま乗っかるのがインデックス投資、この指数を超えることを目標とするのがアクティブ投資になっています。
その意味では、全ての投資家にとってインデックス指数は目指すべきリターン、超えるべきリターンの基準になるということになります。
そしてインデックス指数の多くは、時価総額加重平均に基づいた比率になっていることが多いです。
参考記事…浮動株調整後時価総額加重平均とは?
ざっくり説明すれば、時価総額が大きい企業ほど高い割合で組み込まれる仕組みです。
そして今回は、時価総額加重平均における興味深い現象について考察していきたいと思います。
具体的には、時価総額加重平均における配当金の影響です。
結論から言うと、時価総額加重平均においては高配当銘柄ほど構成比率は小さくなります。
本記事では、その理屈や影響について考察していきたいと思います。
時価総額の増減と配当金
効率市場仮説に基づけば、あらゆる株式銘柄の期待リターンとみなすことができます。
そのため、高配当銘柄ほど株価上昇幅は小さく、無配当銘柄ほど株価上昇幅は大きいと考えることができます(平均で考えれば)
そもそも配当金を出すのは直接的な時価総額減少につながる要因ですからね。
同じような理屈で、自社株買いに積極的な企業も時価総額は相対的に上昇しづらいといえます(自社株買いも時価総額減少要因)
ようするに株主還元(配当+自社株買い)に積極的な企業ほど時価総額は増えづらく、逆に内部再投資(設備投資や買収等)に積極的な企業ほど時価総額は増えやすいということになります。
時価総額加重平均においては時価総額をもとに各銘柄の構成比率が決定するので、上記の傾向がそのまま反映されることになります。
また、インデック指数の多くは配当金を考慮しない配当抜き指数になっていることが多いですが、実際に投資をすれば配当金は発生します。
つまり投資家の視点で考えれば、配当込み指数における構成比率の変化が重要ということになります。
これは無分配型投資信託などでインデックス投資を行う場合はもちろん、海外ETFを保有して配当金再投資する場合でも同様です。
高配当銘柄VS無配当銘柄
上記の現象を説明するために、架空の株式を用いて解説していきます。
仮に、次の2つの株式会社があったとしましょう。
高配当株式会社 | 無配当株式会社 | |
時価総額 | 100 | 100 |
株価成長率 | 毎年0% | 毎年10% |
配当金 | 毎年10% | 毎年0% |
要するに高配当株式会社は、毎年配当利回り10%だけど株価は上昇しない株で、無配当株式会社は、毎年配当利回り0%だけど株価が10%ずつ上昇するという株です。
税金は考慮せず、両者トータルリターンは年間10%だと考えてください。
また、今回は自社株買い・増資等についても考えず、株価上昇=時価総額の上昇とみなします。
この2社の時価総額が現時点で全く同じと仮定して、時価総額加重平均でポートフォリオを組んでみました。
時価総額が同じなので、当然同じ比率になります。
それぞれの現在の時価総額を100だと考えて、配当込み指数のような運用をしてみました。
無配当㈱ | 高配当㈱ | |
1年目 | 100 | 100 |
2年目 | 105 | 115 |
3年目 | 106 | 127 |
4年目 | 107 | 140 |
5年目 | 108 | 154 |
6年目 | 109 | 169 |
7年目 | 110 | 186 |
8年目 | 111 | 205 |
9年目 | 112 | 225 |
10年目 | 114 | 248 |
10年間を運用結果を比較したグラフです。
1年目は100ずつですが、2年目は配当金を半分ずつに分けたので5ずつ増えました。
この調子で10年間再投資を続けたら、2社の保有割合が大きく変わってしまいました。
なぜなら高配当株式会社の時価総額は一切増えないので、時価総額加重平均においては割合が低くなっていくうえに、再投資される配当金もどんどん減っていくからです。
結果的に、無配当株式会社のウェイトがかなり大きくなってしまいました。
2つの株式は同じリターンなのに、最終的に構成比率が変わってしまうのは少し不思議です。
これを解消するには、配当金は配当元の会社にしか投資しないようにするしかありません。
高配当株式会社から生み出される配当金はすべて高配当株式会社自身に再投資すれば、ウェイトは50%ずつから動くことはありません。
配当金を含めたトータルリターンに応じた構成比率になるということですね。
しかし、この方法は市場の需要と供給のバランスを崩してしまうため現実的ではありません。
もしこの運用が実現されたら、今頃S&P500の中でフィリップモリス(PM)がとんでもない割合を占めていることになります(笑)
時価総額加重平均VSその他
上記の現象を踏まえると、時価総額加重平均以外の方針で運用された指数及び投資法というのは、相対的に高配当銘柄や自社株買い銘柄の比率が高くなる可能性があるといえるのではないでしょうか?
配当貴族やバフェット太郎10種のような均等加重が一番分かりやすそうな例ですね。
全銘柄の構成比を同じにするので、リバランスの時に無配当株→高配当株に資金が流れやすいです。
(時価総額加重平均に対して)逆張り要素のある指数及び投資法の場合、この現象が発生するような感じですね。
その理由を再度簡潔にまとめてみます。
・株価と時価総額は短期的に強い相関
・配当&自社株買いは時価総額減少要因
・逆張りは株価が冴えない銘柄を重視
このようにして考えると、逆張り投資が株主還元(配当+自社株買い)に積極的な企業への投資率を高めることにつながることが分かると思います。
そもそも時価総額加重平均が、市場をそのまま追いかけるという順張りそのものですからね。
時価総額加重はあくまで中立
ここまでの話をまとめると、時価総額加重平均は高配当株の構成比率が少なくなる性質があるということになります。
このように書くとなんだかデメリットのような感じですが、単なる特徴の1つに過ぎません。
というよりも、時価総額加重平均に基づいて算出された比率こそが中立であり、他の方法では高配当銘柄を多く組み込んでしまうという表現のほうが適切かもしれません。
成長余力に乏しい高配当銘柄の比率がどんどん下がり、逆に無配当銘柄の比率がどんどん上がることで、健全な新陳代謝が行われていると考えることもできますし、逆に株主還元に積極的な銘柄への投資比率を下げてしまうという考え方もできます。
つみ次郎は後者の考えに近いので、時価総額加重インデックスは(有力と認めつつも)本質的にあまり好きになれません。
どちらにせよ、インデックス投資含め機械的なルールで構成比率を調整するのであれば、どのような属性の銘柄に資金が向けられやすいかということについて一度考えておきたいところですね。
また、本記事の内容については、複数のブロガーの方が考察しているテーマですので、併せて読んでいただきたい参考記事のリンクを張っておきます。
外部リンク…時価総額加重インデックスでは高配当銘柄の構成ウェイトは増えにくいのか?
外部リンク…バフェット太郎方式を真似てる人、安易な10種の弱点わかってる?
外部リンク…「安易な10種の弱点わかってる?」記事への補足
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