浮動株調整後時価総額加重平均とは?

つみたて次郎です。

最近ではインデックスファンドが数多く販売されていますが、その多くは時価総額基準で構成比率が決められています。

時価総額とは、ざっくり株価×発行株式数で求めることができ、簡単に言うと「その会社を買うのにいくら必要か」といった目安になります。

市場で評価された企業価値=時価総額と考えていいでしょう。規模の大きい大企業や成長率の高い企業ほど時価総額は大きくなり、反対の場合は小さくなります。

しかし多くのインデックスファンドは、厳密に時価総額の比率を反映しているわけではありません。

インデックスファンドでは、通常「浮動株調整後時価総額基準」が用いられています。

浮動株とは、ごく一般に市場に流通していて、投資家同士で売買が可能な株式のことを指します。

反対語は固定株と呼ばれ、政府が保有していたり創業者が保有していて、市場に流通する可能性が低い株式のことを指します。

イメージの通り、自由経済が活発である米国株では浮動株比率が高く、政府規制の多い中国等の新興国株では浮動株比率が低いです。

そのため、浮動株のみで構成比率を計算する「浮動株調整後時価総額基準」では、相対的に米国株は多め、新興国株は少なめとなります。

そのため、楽天VT等の全世界株式では、企業の時価総額に対して新興国株が少なめになるという特徴があります。

なぜ多くのインデックスファンドが浮動株調整後時価総額基準を用いるかというと、簡単に言えば多額の資金を運用するのに都合がよいからです。

例えば、時価総額が全く同じ企業が2つがあるとします。

それぞれ株式会社A、Bとし、株式会社Aは浮動株比率100%、株式会社Bは浮動株比率10%とします。

もし浮動株関係なく時価総額に合わせてインデックスを構成する場合、AとBは同額ずつ保有する必要があります。

Aについては、全部市場で売られているので簡単に買い集めることができますが、Bは全体の10%しか流通していないので、自分の注文で価格を釣り上げてしまったり、そもそも買い集めることができなくなってしまうかもしれません。

もし上記のケースで浮動株調整をしない場合、株式市場全体の10%以上をパッシブ運用をすることは不可能です。

なぜなら、そのためにはAもBも時価総額の10%分を買い占める必要がありますが、Bを10%買い占めたら市場からB株が無くなってしまうからです(笑)

今や世界の株式市場の20%がパッシブ運用されている時代ですから、あながち笑い話にもなりません。

これが浮動株調整後であれば、下記の様に買い占めるだけで問題ありません。

A株…浮動株100%×10%=全体の10%
B株…浮動株10%×10%=全体の1%

当然ですが、浮動株調整をする場合はA:Bの比率は10:1になります。

この調整により、時価総額は一緒でもンデックスファンドに組み込まれる比率は大きく変わることになります。

この調整は運用会社にとっては明らかなメリットとして働きますが、投資家にとっては果たして適切なのかという疑問があります。

はっきりとメリットデメリットを区別することはできませんので、浮動株調整肯定派・浮動株調整否定派の立場から考えてみます。

 

浮動株肯定派

・浮動株比率が低い国や地域は株式市場が小規模で未発達なことが多く、比率が自動的に小さくなるのは良い調整。
・効率市場仮説を信じるのであれば、そもそも売買されない固定株を含めないのは当然。

 

浮動株調整否定派

・市場に流通しているかどうかは株式リターンとは関係なく、固定株を除外する理由にはならない。
・時価総額が同じ(=市場での評価は同等)なのに比率が違うというのは、バランスの良い分散投資といえるのか。

 

どちらも個人的な意見を疑問形式でぶつけただけですので、参考程度でお願いします。

どちらが良いかという結論は出ませんが、単純に現状だけで考えてみましょう。

サンプルとして、米国株と中国株でデータを比較しています。

それぞれの全世界株式に占める割合は次の通りです。

時価総額基準(浮動株調整なし) 浮動株調整後時価総額基準
米国株 約44% 約58%
中国株 約12% 約3%

※浮動株調整前は2016年、浮動株調整後は2017年時点。

米国株は浮動株調整をすることで14%も比率が上がりました。

それに対し、中国株は大きく比率が減少しています。中国株は浮動株比率が非常に低いため、このような結果になっています。

これを踏まえると、浮動株調整後時価総額基準で組まれたインデックスファンドというのは、果たして正しい世界分散投資といえるのかという疑問が生じます。

VTなどの浮動株調整後時価総額基準インデックスは、あくまで株式市場への分散であって、世界経済への分散とは少し違うような気がしています(ニュアンス伝わりますかね?)

例えばですが、もし米国が本格的に没落し、中国のような政府主導の経済が台頭するのであれば、中国株が全体のたった3%というのはとてもリスクヘッジになるとは思えません。

現状では浮動株調整前の比率で投資できる金融商品はほぼありませんが、先進国株と新興国株の比率を決める際には、浮動株について一度考えてみるのもよいかもしれません。

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浮動株調整後時価総額加重平均とは?” に対して1件のコメントがあります。

  1. パンチ より:

    いつも参考にさせて頂いております。

    この問題は全世界株式で顕著に現れるのですが、
    新興国株インデックスで株の構成比率が
    浮動株調整後では大きく変わっているということも
    ありそうということで宜しいのでしょうか?

  2. つみたて次郎 より:

    いつもありがとうございます。

    新興国株でも、浮動株比率は国によって異なりますので、同じような調整が行われます。
    国別ETFが充実していれば自分で工夫できそうですが、現状では難しいかもしれませんね。

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