バンガード・米国エネルギーセクター(VDE)分析
シーゲル二郎です。
今回は、バンガード・米国エネルギーセクター(VDE)を分析していきます。
米国のエネルギーセクター企業にまとめて投資できるETFです。
バンガード・米国エネルギーセクターETF (2017/3/31現在)
項目 | データ |
信託報酬 | 0.10% |
銘柄数 | 130 |
PER | -84.0倍 |
PBR | 2.0倍 |
ROE | 7.9% |
利益成長率 | -26.9% |
売買回転率 | 14.8% |
標準偏差 | 20.05% |
エネルギーセクターは事実上、石油セクターといえるので、原油価格に大きく左右されます。現在は原油安が続いており、利益はマイナスになっています。直近の実績PERは22倍ほどですが、あまり参考にはなりません。
売買回転率も非常に高く、標準偏差もかなり高いです。データ上では全く魅力がないように見えてしまいますね。
S&P500との比較です。リーマンショックで大きく落ち込んでいるのと、2014年に逆V字で下落しています。
VDEと原油価格の比較です。エネルギーセクターの多くは原油価格の上昇の恩恵を受ける企業ばかりなので、原油価格との相関性は非常に高いです。
エネルギーセクターへの投資=配当金の出る原油を買う
といっても過言ではありません。
エネルギーセクターが含まれる企業は、主に次の通りです。(2017/3/31現在)
業種 | 構成比率 |
総合石油・ガス | 39.0% |
石油・ガス探査・開発 | 27.8% |
石油・ガス装置・サービス | 16.0% |
石油・ガス精製・販売 | 7.9% |
その他 | 9.3% |
石油まみれです。石油に関係ない割合は、その他に含まれる「石炭・消耗燃料」のわずか0.2%のみでした。
投資家の目線で分けると、次の4つになると思います。
・オイルメジャー
・川上事業
・川下事業
・その他サービス
基本的に石油の精製や販売をする川下事業は原油価格下落に強いといわれていますが、実際は大きく減益になることが多いようです。
詳しくは川下事業専門の「フィリップス66(PSX)分析」を見てください。
オイルメジャーは、川上から川下まで全部自社で行う国際石油資本ですね。
6大オイルメジャーは、下記のとおりです。
・エクソンモービル(XOM)
・シェブロン(CVX)
・ロイヤルダッチシェル(RDSB)
・ブリティッシュ・ペトロリアム(BP)
・トタル(TOT)
・͡コノコフィリップス(COP)
緑色の企業はすべて米国企業で、分析済みです。事業規模で見ても大体半分くらいになります。
米国内のオイルメジャー3社は、どれも川上の比率が高いです。XOMは約8割、CVXは約9割、COPはほぼ10割が川上になっています。
ほとんどの企業が原油価格と連動する運命になっています。
オイルメジャーの半分は米国外なので、あまり米国が強くないセクターなのかと思いましたが、世界全体に対する米国の割合は約55%と平均的だったので、問題なく米国最強でした。
ジェレミー・シーゲル氏の著書、「株式投資の未来」では、企業の成長率と株式リターンに関係ないという「成長の罠」について説明する際に、当時エネルギーセクター最大だったスタンダードオイル(エクソンモービルの前身)が良い例として挙げられていました。
その相手になっていたのが、当時はバリバリの成長株だったポンコツIBM(笑)でした。
IBMは1910年創業の老舗IT企業です。現在は売上減少が続いていて落ち目ですが、全体から見れば素晴らしい成長をした企業です。
スタンダードオイルも、それなりに成長はしていましたが、IBMに比べれば非常に地味な企業でした。
しかし、投資家が得たリターンは全く違う結果になっています。
1950~2003年の平均(参考文献:株式投資の未来)
IBM | スタンダードオイル | |
株価上昇率 | 11.41% | 8.77% |
配当利回り | 2.18% | 5.19% |
トータルリターン | 13.83% | 14.42% |
株価の上昇はIBMのほうが上でしたが、トータルリターンはスタンダードオイルのほうが上でした。
IBMは素晴らしい成長を遂げましたが、投資家もまた素晴らしい成長を期待していたので、株価が割高になり配当金再投資が有効に働かなかったことが原因です。
とはいえ、スタンダードオイルも十分な株価上昇率で素晴らしいですね。日本株では考えられません。
ちなみに同時期市場平均のトータルリターンは平均11.44%だったので、どちらに投資していても市場平均には大きく勝っていたことになります。
エネルギーセクターは、米国のセクター別リターンでも上位の成績だったので、長期投資家には非常に人気があります。
事業内容が地味で、配当利回りが高いことから、シーゲル派にも人気があります。しかし、シーゲル派が好むセクターとしては、かなり例外な部分も多いです。
・商品がコモディティで競争が激しい
・原油価格に左右されうるため安定的事業とはいえない
・設備投資が多くかかる
・自己資本比率が高くなりがちで資本効率が悪い
同じくシーゲル派に人気の生活必需品セクターは、4項目ともすべて正反対の特徴を持っています。過去のリターンが良かったのと、投資家の期待が低い以外に魅力はありません。
現在の原油安が終わった後は、積極的に投資するべきセクターではないということですね。
シーゲル二郎はもともとエネルギーセクター企業は好きではありませんが、NYダウにも米国配当貴族指数にも採用されているのはエクソンモービルとシェブロンしかないので、安心できますね。