「投資は余剰資金で」とはいうのに「貯金は余剰資金で」とはいわない不思議
つみたて次郎です。
金融機関や投資に関する影響等でよく用いられるフレーズに、「投資は余剰資金で行いましょう!」というものがあります。
投資にはリスクがあり、思わぬ形で損失を被る可能性があるので、余裕のある部分だけ投資しましょうというニュアンスで使われることが多いです。
現在では、つみたてNISAなどをきっかけに積立投資が広まっていますが、金融機関のメイン顧客は既に多額の資産を持っているお年寄りです。
特に退職金をもらったばかりの人なんかは、絶好のセールスチャンス相手となります。
例えば2,000万円退職金をもらった人がいれば、一括投資できるような商品を勧めるはずです。ですが、いきなり全額を預けるのは顧客から見ても不安なので、「投資は余剰資金で行いましょう」という決まり文句が使われます。
2,000万円あるんだから、そのうち何百万だけなら投資してみようかなという気にさせられてしまいます。
そしてそれは余剰資金だから、手数料をたくさん取られてもバブルの頂点で掴まされても諦めましょうというシナリオになります。
結局儲かるのは、売買手数料と信託報酬を差っ引く金融機関だけということになります。
「投資は余剰資金で」というフレーズが、投資デビューに対する敷居を不当に低くすることで、取り返しのつかない失敗につながってしまいます。
そして質の悪いことに、「投資は余剰資金で」というのは、金融機関の営業マンだけでなく個人投資家の間でもいわばキャッチフレーズの様に使われていることです。
ちなみに「余剰」という言葉には、次のような意味があります。
余剰…必要量を越えた余り。剰余。
お金というのは、基本的にいくらあっても困ることはありません。本当に余剰なら寄付でもすればいいのです。
したがって「余剰資金」というものは、ほとんどの人にはないはずです。つみたて次郎も5000兆円欲しいです(笑)
投資は余剰資金でしかできないのであれば、私は投資ができないことになります。
確かに投資というのは、玉石混交の様々な手法があり、中には明らかに割の合わないハイリスクローリターンな投資先もザラにあります。
それらをしっかり見極められるように勉強し、適切なリスクを取ってリターンを得られるようにすることは大事ですが、それは必ずしも余剰資金でなければならない訳ではありません。
むしろ歴史を振り返れば、株式や債券はインフレ率を超え成長したのに対し、現金は成長しないどころかインフレに負けて購買力を減らす結果になっていたので、余剰資金を現金で寝かせてよいのかという疑問にもつながります。
投資というと減るリスクと引き換えに増やすものというイメージがありますが、それだけでなくリスクを分散するための「保険」という役割もあります。
例えば預金を円だけでなくドルやユーロにも分散しておけば、円安で購買力が低下した時のリスクヘッジになります。
円高になった時は当然損してしまいますが、それは多少のコストをかけて為替変動のリスクを軽減したと考えればよいです。
本当に余っているお金(余剰資金)ならば、別に減ってもいいんだからいろんなリスクに備えましょうよ。
余剰資金を円預金だけで保有しているというのは、ルーレットの1点賭け状態と同じです。
円の破綻に備えてドルを買ってもいいし、資本主義崩壊に備えて純金にしてもいいです。ヒャッハー対策にトゲ付き肩パットを用意するのもよいでしょう。
当然そこまで最悪のケースを考えている人はほぼいませんので、結局多くの人は余剰資金=貯金になります。
「貯金は余剰資金で」なんて誰も言ってないんですけどねぇ(笑)
個人的には、全ての金融資産は生活防衛資金orその他で考えるべきだと思っています。
参考記事「生活防衛資金は投資家の命綱」
直近の出費を賄えるだけの生活防衛資金を除いた残りは、余剰でも何でもなく「自由に使える自分のカネ」です。
その中から自分の趣味や自己投資に使ったり、さらに将来の大きな出費のために貯金したりといった用途があります。
そしてその中には「投資をする」という選択肢があります。
若者であれば増やすことを重視した投資法、年配者であれば減らさないようにすることを重視した投資法があります。
いずれにせよ、そのバランスは個人の自由であり、最終的には人生を左右するような重要な決断になります。
人生の時間は有限であり、時間が有限ならば稼げる額も限界があります。
人生というのは、自分の時間・カネといったリソースをどのように使っていくかを考えていくゲームです。
「投資は余剰資金で」というのは、そのうちカネというリソースの使い道を考えるという行為を放棄していることに等しいです。
そもそもですが、貯金が投資よりも安全という前提で話しているのが非常に気になります。
貯金と投資というのは、自分の資産の置き場を決めるという意味でどちらも同じであり、投資=危険、貯金=安全という考えは間違いです。
貯金と投資の間のどこかに答えがあるはずで、そしてほとんどの人にとって貯金100%が正解になることはないはずです。
投資家ごとに合わせたバランスはあっても、貯金or投資のどちらかのみでよい人はいないと思います。
その意味で、「投資なんておやめなさい」「現金なんて機会損失だ」などといった極論は非常に危険だと思っています。
全ての投資家は、投資and貯金という視点を持ち、適切なバランスを取っていくことが重要だと思っています。
そしてそのバランスを考えるうえで、「余剰資金」という言葉は必要ありません。
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余剰資金なんて存在しない