専業主婦でも確定拠出年金(iDeCo)に加入するメリットはある
つみたて次郎です。
資産形成制度として非常に優秀な個人型確定拠出年金(iDeCo)は、下記の2点が大きなメリットになっています。
・運用中は全て非課税※
・掛金が全額所得控除
※受け取り時に課税される可能性あり。
「60歳まで引き出し不可能」という強烈なデメリットはありますが、税制面では非常に優遇されています。
ですが所得がない人にとっては後者のメリットを活かすことができないため、「専業主婦はiDeCoに加入するメリットがない」と誤解されることが良くあります。
そのため今回は、専業主婦含め所得控除が利用できない人でも、iDeCoは十分検討できる制度であるということについて解説していきたいと思います。
なぜ誤解されるのか?
前述したとおりiDeCoには大きく分けて2つのメリットがあり、もし所得控除が使えないとしても「運用中は非課税」というメリットはそのまま残りますので、一概に意味がないと言い切ることは出来ません。
ですが運用益に課税されないというメリットを活かすためには、当然ながらある程度のリターンが得られるという前提が必要になります。
iDeCoでリターンを求めるならば必然的に投資信託で運用するということになりますが、元本割れするリスクがあるため元本保証型商品だけで運用したい人もかなりいるはずです。
元本保証型商品(定期預金等)の場合、日本ではほんのわずかな利息しか付きませんので、その利息分が非課税になってもほとんど恩恵はないといっていいでしょう。
今後金利が上昇していくなら話は別ですが、少なくとも現時点では元本保証型商品を中心にiDeCoを利用する人にとって、運用中は非課税というメリットはほとんどオマケに過ぎません。
むしろ運用期間中の手数料のほうが高くなってしまう可能性もあります。
そのため「掛金が所得控除」というメリットばかりが強調され、結果として「所得がないとiDeCoの意味がない」という結論に結びついてしまうのではないかと思います。
逆に投資信託を中心に運用を行う場合、利益に課税されないというのは凄まじいメリットですので、所得がない人であってもぜひ検討したいところです。
ただし受け取り時の状態によっては課税されてしまう可能性はあるので、税制を調べたうえで通常の証券口座(運用益に20%課税)とどちらが有利であるか比較する必要はあります。
拠出額と運用成績
専業主婦等の第3号被保険者の場合、掛金の上限は月額23,000円(年間276,000円)となります。
また、20~60歳まで加入することができるので、最大40年間加入することができます。
これらを踏まえ、最終的な資産額をシミュレーションしてみようと思います。
毎月23,000円拠出した時の評価額(概算)
加入年(投資元本) | 年率3% | 年率5% | 年率7% |
10年間(276万円) | 321万円 | 357万円 | 398万円 |
20年間(552万円) | 755万円 | 945万円 | 1,198万円 |
30年間(828万円) | 1,304万円 | 1,914万円 | 2,806万円 |
40年間(1,104万円) | 2,130万円 | 3,510万円 | 6,037万円 |
上限いっぱいまで拠出した場合のケースです。縦軸は加入期間、横軸は年平均のリターンです。
楽観的なシミュレーションですが、参考程度にはなるかと思います。
もし仮に通常の証券口座(特定口座)で運用していたのであれば、評価額から投資元本を引いた利益に対して20%課税されてしまいます。
例えば加入期間30年・年リターン5%だった場合、
( 1,914万円 - 828万円) × 20% ≒ 217万円
となるので、200万円が本来課税されてしまうところでしたが、iDeCo口座では非課税となります。
ですがiDeCoの場合、受け取り時に全く別の計算方法で課税される可能性がありますので、これだけでは特定口座等より有利であるかはわかりません。
退職所得控除について
iDeCoの受け取り時課税に大きく関係するのは、「退職所得控除」です。
iDeCo加入年数に応じてもらえる控除枠で、サラリーマン等の場合は企業からもらえる退職金等と共通です。
しかし専業主婦等の場合、通常退職金はありませんので純粋にiDeCo受け取りのためだけに活用することが可能です。
もらえる控除枠は加入年数1~20年目は年間40万円、それ以降は年間70万円となっています。
計算すると加入年数に応じて控除できる金額は次のようになります。
加入年数 | 退職控除枠 |
10年間 | 400万円 |
20年間 | 800万円 |
30年間 | 1,500万円 |
40年間 | 2,200万円 |
単純に退職控除枠以下の評価額に収まるのであれば、一時金(一括)で受け取っても全額非課税ということになります。
先ほどのシミュレーションと照らし合わせると、かなり大きな額であるといえます。
年平均リターンが3%の場合は全ての加入年数で枠が余りますね(笑)
また、先ほどの表は毎月23,000万円拠出した場合ですので、上限いっぱいまで拠出しない場合はさらにハードルが下がることになります。
残念ながら控除枠からはみ出た部分は課税対象となってしまいます。
退職金扱いになるので、課税対象となる額の半分に対して所得税率(5~45%)をかけた額が課税されます。
ただし上記は一時金(一括)で受け取る場合の話なので、控除枠からはみ出た部分は年金(分割)で受け取るなどの工夫をすることでさらに多くの額を非課税で受け取ることが可能になります。
例えば61~64歳の間は年間70万円という公的年金等控除枠がありますので、iDeCo以外の年金受け取りがなければ
4年間×70万円=280万円
となり、上記額に加えて非課税で受け取れる金額が増えることになります。
あくまで現在の税制に照らし合わせた場合ですので、将来的には全く違う結果になる可能性もあります。
とはいえ現時点で考えれば、企業からの退職金等がない人であればほとんどのケースで節税になるのではないかと思います。
また、全額非課税で受け取れない人は一時金(一括)→年金(分割)という流れで受け取るのが基本となりそうですが、SBI証券では今のところ不可能ですので注意してください。
参考記事…4大ネット証券の確定拠出年金受け取り方法について比較
利益に対して20%の課税を行う証券口座と全く違う計算方法で課税されるので、比較するのが難しいのは面倒ですね。
専業主婦が利用するiDeCoの意味
専業主婦等の所得がない人の場合、運用中の所得控除を活かすことができない代わりに受け取り時の税金をあまり心配しなくてよいというのがiDeCoに対する評価となります。
そのためサラリーマン等が利用するiDeCoに比べ、より資産運用するための非課税口座としての性質が強いことになります。
そのため元本保証商品オンリーで運用するのであれば、一般的に言われる通りiDeCoを利用する意味はあまりないといえます。
逆に投資信託を用いて積極的に運用する前提であれば、専業主婦であっても十分すぎるメリットがある制度となります。
当然ながら「60歳まで引き出せない」というデメリットはありますので、その点をどう考えるかですね。
NISAのほうがいい?
ここまで読んでピンとくる方もいるかもしれませんが、単に非課税で投資信託に投資したいだけであれば「一般NISA」「つみたてNISA」でよいのではないかという考えもあります。
(iDeCoに比べれば)最長非課税期間がそれぞれ5年・20年と短めだったり、スイッチングできないというデメリットもありますが、受け取り時の税金を心配する必要がないことや、必要な時にいつでも売却して現金化できるというメリットを考えれば、NISAのほうがかなり魅力的に見えます。
所得控除が使えないのであれば、iDeCoはNISAの劣化版といっても過言ではないかもしれません。
しかし現実問題として、一般NISAは年間120万円・つみたてNISAは年間40万円と上限が決まっており、無制限に利用できるわけではありません。
したがってその枠を超える額を投資したい場合、2番目に優先する対象としてiDeCoが候補にあがるという構図になります。
もしiDeCoがNISAより劣っているとしても、特定口座等より優れていればそれは利用価値のある制度です。
つみたて次郎としては、専業主婦等の方はまずNISAを最優先に利用して、枠が足りないのであれば次にiDeCoを使うというのが理想的ではないかと思っています。
専業主婦とiDeCoまとめ
要点をまとめると次の通りです。
・所得控除がなくてもメリットはある
・積極的に運用するならメリット大
・専業主婦は受取時の税制でやや有利
・所得控除使えないならNISA優先
・特定口座とiDeCoを比較して検討
各自所得も年金も違うので一概には言えませんが、専業主婦等であってもiDeCoは十分利用を検討できる制度です。
特に退職控除枠を全額iDeCoに使うことができるので、サラリーマン等に比べ受け取り時の課税に対して楽観的に考えられるのは明確なメリットです。
拠出額があまり多くない人であれば、全額非課税で受け取ることも十分可能かもしれません。
ただし相対的に見れば、所得控除できる人に比べ「60歳まで引き落とし不可能」というデメリットに対して得られるメリットが小さいということには変わりはないので、よりシビアな判断が求められることになります。
基本的にはNISA(特につみたてNISA)の利用を優先して、補完的にiDeCoの利用するというのが良いかと思います。
iDeCoに加入するなら手数料が安く、商品ラインナップが充実しているネット証券での開設がおすすめです。
参考記事…【iDeCo】4大ネット証券を比較【楽天・SBI・松井・マネックス】
マネックス証券
それぞれ画像をクリックすると、iDeCo申込ページに進みます。
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