楽天・全米株式インデックス vs 本家VTI(実質コスト・ポイント還元考慮版)

つみたて次郎です。

先日、米国株ファンドである2商品の比較記事を行いました。

参考記事「楽天・全米株式インデックス vs 本家VTI(楽天カード決済ポイント考慮版)

楽天カード決済ポイント還元の登場により、本家VTIと楽天VTIのリターン差は限りなく小さくなっています。

 

バンガード・トータル・ストック・マーケット(以下:本家VTI)
楽天・全米株式インデックス・ファンド(以下:楽天VTI)

 

ですが今までは、楽天VTIの信託報酬以外に発生する隠れコストが分からなかったため、あくまで推測の域を過ぎないものでした。

しかし先日、楽天バンガードの第1回運用報告書が発表され、楽天VTIの隠れコストが判明しました。

参考記事「楽天バンガードの第1回運用報告書から実質コストを計算してみる【VT・VTI・VWO・VYM】

楽天VTIの隠れコストは0.1416%、信託報酬0.1696%を合わせた実質コストは0.3112%でした。

決して低コストとはいえませんが、十分及第点ではないかと思います。

そしてこの水準であれば、海外ETFである本家VTIとも十分互角の勝負になると思いますので、今回この実質コストを前提に両者のリターンを比較したいと思います。

 

 

共通条件
5万円を一括投資し、20年間保有し続けた場合のリターンを調べる。
・トータルリターンは毎年7%とする。(値上がり益5%、配当利回り2%)
・値上がり益及び配当金にかかる国内課税は20.315%とする。
・配当金の米国課税分は10%とする。

 

楽天VTI
・信託報酬は0.1696%とする。
隠れコストは0.1416%とする。
・配当金は20年間一切でないとする。
・配当金はファンド内部で源泉徴収10%を引いた1.8%を再投資する。
・発生した楽天カード決済によるポイント(初年度のみ1%還元)は年初に全額再投資する。
・発生したハッピープログラムによるポイント(毎年0.048%還元)は年末に全額再投資する。※
※投信残高10万円ごとにもらえるため本来は一切付与されないが、今回は額にかかわらず付与されることとする。

 

本家VTI①
・信託報酬は0.04%とする。
米国課税分の外国税額控除は全て取り戻せると仮定する。
・配当課税率は上記調整に基づき18.2835%とする。※1
・売買手数料は片道0.486%とする。※2
・為替手数料は片道0.227%とする。※2
※1…外国税額控除で海外課税分を全額取り戻せた場合、課税率は本来より少なくなる。
※2…楽天証券参照、1ドル=110円として。本来取引額が小さい場合それぞれ手数料が割高になるが、今回は額にかかわらず最低水準の手数料を用いる。

 

本家VTI②
米国課税分の外国税額控除を一切取り戻せないと仮定する。
・配当課税率は上記調整に基づき28.2835%とする。※
・その他条件は本家VTI①と同様。
※(100%-10%)×(100%-20.315%)

 

 

5万円を一括投資して20年間放置するというシミュレーションです。ただし配当金やポイントは即再投資を行います。

そして今回は、本家VTIの外国税額控除を全額取り戻せた場合全額取り戻せない場合の2パターンをシミュレーションしてみたいと思います。

 

 

結果は次の様になりました。(投資原資はそれぞれ5万円)

年度 楽天VTI 本家① 本家②
最初  50,500  49,644  49,644
1  53,130  52,113  52,015
2  55,933  55,045  54,837
3  58,918  58,170  57,839
4  62,099  61,501  61,033
5  65,488  65,052  64,432
6  69,098  68,836  68,047
7  72,944  72,870  71,893
8  77,042  77,169  75,985
9  81,407  81,751  80,338
10  86,058  86,636  84,969
11  91,013  91,842  89,896
12  96,292  97,390  95,138
13  101,916  103,305  100,715
14  107,907  109,609  106,647
15  114,290  116,328  112,959
16  121,090  123,489  119,674
17  128,335  131,122  126,818
18  136,054  139,258  134,418
19  144,276  147,930  142,503
20  153,037  157,173  151,105
平均 5.7527% 5.8938% 5.6855%

 

楽天VTIは楽天カード決済ポイント&売買手数料無料なため、スタート時点で大きく有利になっています。

しかし本家VTI①にはだんだんと差を縮められ、8年目以降には逆転しています。

外国税を全額取り戻せる場合、トータルリターンではまだまだ本家VTIに分がありそうです。

その一方、外国税を全額取り戻せない本家VTI②の場合、楽天VTIに追い付くことは出来ませんでした。

本シミュレーションでは配当利回りを2%で想定しているため、単純にその10%に当たる0.2%相当のロスが毎年発生していることになります。

計算する前から何となく分かっていましたが、結論は次のようになります。

 

本家VTI① > 楽天VTI > 本家VTI②

 

楽天VTIは、本家VTIの外国税を全額取り戻せた場合よりは低リターンで、外国税を全額取り戻せない場合よりは高リターンになるという結果になりました。

外国税額控除が利用できるかどうかは、各投資家の所得やローン等によって大きく左右されるため、投資先を決めるうえで今まで以上に大きなポイントとなりそうです。

 

度々シミュレーションを行ってきた楽天VTIvs本家VTIですが、今回の内容で一段落となりそうです。

全く不明だった実質コストが判明したのは非常に大きいです。

しかし実質コストも絶対的なものではなく、あくまで公表されている費用にすぎない点には注意が必要です。

私たち投資家が本来気にするべきは、信託報酬や隠れコストではなく「指数との連動性と実際に得られたトータルリターン」です。

運用報告書に記載された費用には、トラッキングエラー等による上方乖離や下方乖離は含まれていません。

そのためコストが低くても下方乖離のせいで実際のリターンは低くなってしまったり、逆に見かけのリターンが良くても、その原因は好ましくない上方乖離であったりする可能性があります。

特に楽天VTIと本家VTIのような全く違う環境の場合、税制や為替といった複数の要素を考慮しなければならず、正確にトータルリターンを計算するのはほぼ不可能です。

そのため現実的には、運用報告書に載っている費用や基準価格の変動を頼りにするしかありません。

楽天VTIの月次レポートではしばしばベンチマークからの下方乖離が発生していますが、その原因は運用ミスなのか、本家VTI自体のズレなのか、税金や手数料による回避不能なロスなのかまでは確認できません。

実際に保有した場合、本当に楽天VTIがシミュレーション通りの優位性を保てるかどうかは別問題ですので、その点には注意が必要です。

また、本家VTIの運用ミスはそのまま楽天VTIにも悪影響をもたらしますが、その逆は発生しないため、楽天VTIは構造的に本家VTIよりもトラッキングエラーを発生させやすい運命にあります。

外国税額控除を利用できない場合でも、本家VTIの見えない優位性は非常に大きいです。

やはり楽天VTIは、本家VTIの代替と割り切って保有するに限ると思います。

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楽天VTI次郎

楽天・全米株式インデックス vs 本家VTI(実質コスト・ポイント還元考慮版)” に対して1件のコメントがあります。

  1. 乾燥 より:

    記事内容とは関係なくて恐縮です。
    最近気になってることで、よく庶民ながら配当再投資を行い資産を作り上げた人物がアメリカにはいますが、もし彼らが個別株でなくsp500インデックスなど指数に連動する商品で資産運用していた場合、最終的なリターンはどれほど違っていたのでしょうか?
    要は途中売却せず紙屑にならない個別株群で資産運用できた場合とインデックス投資で手数料を払いながら資産運用した場合、リターンはどれほど違ってくるのでしょうか?

  2. 匿名 より:

    課税は国内分にもなされます。

  3. つみたて次郎 より:

    >>乾燥様

    なかなか難しい問題ですが、インデックス投資でも遜色ないリターンになるのではないかと思います。
    有力なインデックスファンドが存在しなければ、そもそも個別株で運用するしかありませんし、ずっと昔からS&P500ファンドのようなものが存在していれば、そんな人物たちの投資方針も大きく変わっていたかもしれませんね。

  4. つみたて次郎 より:

    >>匿名様

    もし国内分に課税される場合、
    ファンド内部で発生する配当金に課税→ファンドから分配されるときに課税
    という乏しく不利な二重課税状態になってしまわないでしょうか?

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