楽天・全米株式インデックス vs 本家VTI(楽天カード決済ポイント考慮版)

つみたて次郎です。

先日発表された、投信を楽天カード決済することでポイントがもらえる新サービスが大きな反響を呼んでいるようです。

参考記事「楽天カードで投信の積立が可能に!ポイント還元1%分もしっかり再投資可能!

カンタンに概要を説明すると、月額5万円まで楽天カード(クレジット)決済で投資信託を購入することができ、その金額の1%がポイント還元されるという制度です。

つまり月額5万円までの範囲で、投資した時点で+1%のリターンが約束されるという素晴らしいサービスです。

そして今回、このポイント還元がどこまでリターンに影響をもたらすか検証してみたいと思います。

ポイントがもらえる投資信託VSポイントがもらえないETF(または株式)という比較が一番わかりやすいので、次の2商品で計算してみたいと思います。

 

バンガード・トータル・ストック・マーケット(以下:本家VTI)
楽天・全米株式インデックス・ファンド(以下:楽天VTI)

 

本家VTIは、米国市場全体に投資できる海外ETFとなっています。

そして楽天VTIは、その本家VTIを買い付けるだけの投資信託になっています。

ETFと投資信託という違いや、信託報酬の差を除けば、実質的な投資対象はほぼ同じとなります。

この2つを使って、ポイント考慮後のトータルリターンを比較してみたいと思います。

 

共通条件
5万円を一括投資し、20年間保有し続けた場合のリターンを調べる。
・トータルリターンは毎年7%とする。(値上がり益5%、配当利回り2%)
・値上がり益及び配当金にかかる国内課税は20.315%とする。
・配当金の米国課税分は10%とする。

 

本家VTI側

・信託報酬は0.04%とする。
米国課税分の外国税額控除は全て取り戻せると仮定する。
・配当課税率は上記調整に基づき18.2835%とする。※1
・売買手数料は片道0.486%とする。※2
・為替手数料は片道0.227%とする。※2
※1…外国税額控除で海外課税分を全額取り戻せた場合、課税率は本来より少なくなる。
※2…楽天証券参照、1ドル=110円として。本来取引額が小さい場合それぞれ手数料が割高になるが、今回は額にかかわらず最低水準の手数料を用いる。

 

楽天VTI側

・信託報酬は0.1696%とする。(隠れコストは考慮しない)
・配当金は20年間一切でないとする。
・配当金はファンド内部で源泉徴収10%を引いた1.8%を再投資する。
・発生した楽天カード決済によるポイント(初年度のみ1%還元)は年初に全額再投資する。
・発生したハッピープログラムによるポイント(毎年0.048%還元)は年末に全額再投資する。※
※投信残高10万円ごとにもらえるため本来は一切付与されないが、今回は額にかかわらず付与されることとする。

 

5万円を一括投資して20年間放置するというシミュレーションです。ただし配当金やポイントは即再投資を行います。

結果は次の様になりました。(投資原資はそれぞれ5万円)

年数 本家VTI 楽天VTI
最初 49,644  50,500 
1年目 52,113 53,187
2年目 55,045 56,054
3年目 58,170 59,113
4年目 61,501 62,375
5年目 65,052 65,856
6年目 68,836 69,569
7年目 72,870 73,530
8年目 77,169 77,755
9年目 81,751 82,263
10年目 86,636 87,072
11年目 91,842 92,202
12年目 97,390 97,674
13年目 103,305 103,512
14年目 109,609 109,740
15年目 116,328 116,384
16年目 123,489 123,471
17年目 131,122 131,032
18年目 139,258 139,097
19年目 147,930 147,702
20年目 157,173 156,881
年平均リターン 5.8938% 5.8839%

 

それぞれ途中で売ったと仮定した場合の税引後評価額であるため、直接比較が可能になっています。

スタート時点では、本家VTIは売買手数料及び為替手数料が発生しているため、5万円より少ない金額になっています。

その一方楽天VTIは、ポイントで1%上乗せされた状態でスタートしています。

楽天VTIは運用中もポイントがもらえるとはいえ、信託報酬の差はやはり大きく、徐々に差を縮められていき16年目以降は逆転されています。

20年時点でのトータルリターンでは、年間で約0.01%の差がついています。

20年以降はどんどん差が広がっていくとはいえ、0.01%単位の差であればほぼ同等であるといっても差し支えなさそうです。

 

 

ただし今回のシミュレーションは、双方において非常に理想的な環境での運用になっているため、実際には追加でコストが発生します。

本家VTIについては、米国課税分の外国税額控除が全額取り戻せるという設定にしましたが、大抵のケースで全額取り戻せるケースは珍しく、一切取り戻せないという人もかなりいるようです。

今回は配当利回り2%で計算していますので、もし全額取り戻せない場合は2%×10%=0.2%のロスが年間で発生することになります。

楽天VTIについては、信託報酬以外のコスト(=隠れコスト)がゼロというあり得ない設定にしているため、現実ではその分上乗せのコストが発生することになります。

本家VTIの場合は各個人の所得状況・楽天VTIの場合は運用会社側の事情によってトータルリターンは大きく変動します。

また、今回は配当利回り2%で計算を行いましたが、利回りが上昇すれば配当課税繰り延べが可能な投資信託(楽天VTI)が有利になり、逆に下落すればETF(本家VTI)が有利になるなど、市場環境にも大きく左右されます。

あくまで参考程度の比較ということでお願いします。

 

ここ数年で急速に投資信託とETFの差が縮まりつつありますが、それでもなおETFの優位性は揺らぎません。

コスト面だけで見れば十分互角といってもいいかもしれませんが、数字に表れない部分を考慮していけば、投資信託には多くの不安が残ります。

特に国内の投資信託は、明らかに採算度外視な信託報酬を設定している商品が多数存在しており、楽天VTIの0.1696%ですら結構ギリギリかもしれません。

また、楽天ポイントによる還元もあくまで客寄せのような意味合いが強く、持続的に提供可能なサービスかどうかは疑問が残ります。

さらに税金の面でも、投資信託だけ配当金にかかる課税を売却時まで繰り延べできるのは不公平な仕組みであるため、将来的にはなんらかの措置が取られてしまう可能性があります。

構造的に低コストを実現できるETFに対し、投資信託はポイントや税制といった不安定な部分でしか優勢を保つことができません。

投資信託が仮にトータルリターンで有利になるとしても、ETFの安定感にはかなわないのが現状ですね。

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楽天VTI次郎

楽天・全米株式インデックス vs 本家VTI(楽天カード決済ポイント考慮版)” に対して1件のコメントがあります。

  1. エスピーファイブ より:

    自分でシミュレーションするのは面倒なので、こういう試みは大変 参考になります。
    ただ、「楽天カード決済ポイント考慮版」と銘打ちながら、
    1ヶ月目しか決済ポイントを付与しないという条件は、あまり意味がないのでは?
    この制度の利点の95割ほどが封じられてしまっていると思います。
    もちろん 毎月5万円積立てで比較すれば、計算するまでもなく楽天VTIの圧勝でしょうけど…
    また、おっしゃるようにポイント制度の持続性には疑問を感じますね。
    長期間 維持されるのであれば、SBI証券のシェアを凌駕する可能性も大いにあります。

    ところで一つ質問なのですが、こういう試算にはExcelを使っているのでしょうか?

  2. つみたて次郎 より:

    コメントありがとうございます。
    例えば5万円を毎月積立続けるとしても、結局は今回のシミュレーション内容を時期をずらして行うだけなので、楽天VTIが圧勝という結果にはならないような気がします。
    単に投資期間が短いほど、楽天VTIに有利という結論になると思われます。
    仮にポイント制度が持続するなら、少なくとも投信分野においては大きくシェアを伸ばすと思われます。元々ポイントにシビアな方が多いジャンルですからね。
    試算については、恥ずかしながらExcelで地道に計算しています。関数すら使っていません(笑)

  3. ぱんかす より:

    検証ありがとうございます!

    やはり差が限りなく差が縮まりますね。

    ただ、還元率があまりにも高すぎて楽天の収益に問題がないか心配ですね。MNOになのり出たことも楽天としてリスクでしかないような気がしますし。

  4. つみたて次郎 より:

    計算できる部分については、ほぼ互角といってもいい状況ですね。
    今回のポイント還元は悪用も十分考えられるので、改悪リスクはかなり大きい気がします。
    MNO進出も大きなリスクですし、楽天といえども民間企業の1つにすぎませんから、収益悪化、最悪倒産という可能性もあり得なくはないですからね。

  5. 匿名 より:

    明らかに客寄せパンダですよねぇ…
    移管する人が急増すれば改悪ラッシュきそうなんで自分は数年様子見です。

  6. バロー より:

    初めまして、投資初心者です。最近、通常NISA口座を作った所で商品選びに迷ってる中、楽天VTIが気になってました。調べると本家VTIがあるとわかり、丁度知りたい情報でした。ありがとうございます。通常NISAを選んだのですが、楽天VTIならつみたてNISAの方が良さそうですね。本家VTIを20年間持ち続けるのに、通常NISAで買って5年で一旦売却して、課税口座で買い直すより、最初から課税口座で買った方が良いですか?
    NISAは利益が出てれば5年以内に売らないと意味ないですよね。なんかよくわからずに質問してすみません。

  7. つみたて次郎 より:

    ≻≻バロー様

    どうも初めまして。
    いくつか気になるところはありましたが、「NISAは利益が出てれば5年以内に売らないと意味がない」というのはよくある誤解です。
    NISAの期間終了時点で含み益が出ている前提であれば、、売らずにずっと保有していてもNISA口座→特定口座に移管された時点で節税メリットを活かすことができます。
    近日中に別途記事でまとめてみたいと思います。

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