つみたてNISAは20年以内、一般NISAは5年以内に売却しなければ意味がないという誤解
つみたて次郎です。
個人投資家が資産運用を行うときに、必ず活用したいのがNISA(少額非課税投資制度)です。
NISAの概要
現在は、年度ごとに「つみたてNISA」「一般NISA」のどちらかを選択して利用することができ、簡単に特徴をまとめると次の通りです。
制度名 | つみたてNISA | 一般NISA |
投資枠上限 | 年間40万円 | 年間120万円 |
非課税期間 | 20年間 | 5年間 |
投資対象 | 厳選された投信 | 投信や株式など |
どちらもメリットデメリットがあるので、各個人の事情に合わせて選択していきたいですね。
今回注目してほしいのが、運用可能な期間(=非課税期間)についてです。
つみたてNISAは投資してから20年間、一般NISAは投資してから5年間の間、NISA口座で運用を行うことができます。
その期間中は配当金や売却益にかかる税金が非課税になり、有利な条件で投資を行うことができます。
その一方、NISA口座内で発生した損失は損益通算することが不可能なため、場合によっては多く税金が発生してしまう可能性もあるというデメリットがあります。
期間内に売却をしなかった場合、期間終了時点の評価額で課税口座(特定口座または一般口座)に移管されます。
NISAに関する誤解
そんな各NISA制度ですが、次のような誤解をされることが非常に多いです。
・つみたてNISAは20年以内に売らないと意味がない。
・一般NISAは5年以内に売らないと意味がない。
NISA口座は、配当金や売却益にかかる税金が非課税という制度であるため、原則として利益が出ていなければメリットがないどころか、デメリットになってしまう可能性もあります。
しかしこれは、「期間内に売却して利益を確定しなければならない」という意味ではありません。
もし投資期間を30年間と想定するのであれば、最初の20年間はつみたてNISAで保有して、期間終了後に課税口座で10年間保有するで全く問題ありません。
期間内に売却しなければ意味がないどころか、むしろ売却しないでずっと保有しているほうがNISAのメリットを最大限に活かすことができます。
具体的な例で考えてみる
一般NISAでの投資シミュレーションをもとに、期間終了まで売却しなかった場合の節税額を計算してみます。
次のようなケースを考えてみます。
・一般NISAで120万円を一括投資する。
・配当金は出ないとする。(無分配型投信や無配当株を想定)
・5年間のチャートは以下の通り。
チャートは適当です。ジグザグですが5年後には無事利益が出ているような状態です。
各年度に売却した場合、利益額と節税額は次のようになります。
利益額 | 節税額 | |
1年目 | 20万円 | 4万円 |
2年目 | -10万円 | 0円※ |
3年目 | 20万円 | 4万円 |
4年目 | 40万円 | 8万円 |
5年目 | 30万円 | 6万円 |
※NISAでは損益通算が不可能であるため、逆に余計な税金を払うことになる場合もあります。
単純に利益額は、各評価額から最初に投資した120万円を引けば簡単に求めることができます。
もし課税口座での運用であれば売却益に20%されてしまっていたところだったので、利益額の20%相当がNISAを利用することで節税できた額となります。
2年目に売却してしまった場合は残念ながらNISA口座の意味がなくなってしまいましたが、その他の年度であれば利益がでているため、NISAのメリットをしっかり活かすことができました。
そして今回の誤解で重要なのは、5年後に売却しなかった場合についてです。
5年間売却をしなかった場合、期間終了時点の評価額で課税口座に移管されます。
今回の場合は、5年終了時点の150万円が取得単価となり、課税口座内で保有されることになります。
その後も課税口座内で保有し、さらに評価額が上昇したとしましょう。
6年目7年目は一般NISA口座ではなく課税口座での保有なので課税されてしまいますが、さらに利益を増やすことができました。
取得単価は150万円になっているので、評価額から150万円を引いて20%をかければ課税額が求められます。
例えば6年目の場合、
(170万円-150万円)× 20% = 4万円
となります。
もし仮に最初から一般NISAを使わず課税口座のみで6年間投資していた場合、取得単価が当初の120万円になるので、
(170万円-120万円)× 20% = 10万円
となり、一般NISAを利用した場合と比べて6万円も多く課税されてしまうことになっています。
一般NISAを利用した場合と利用しない場合における課税額を表にまとめると次の通りです。
一般NISA利用 | ずっと課税口座 | |
6年目 | 4万円 | 10万円 |
7年目 | 10万円 | 16万円 |
一般NISAを利用…1~5年目は一般NISA、それ以降は課税口座で保有。
ずっと課税口座…一般NISAを利用せず最初から課税口座で保有。
注目してほしいのは、どちらの年度を見ても、課税される額が6万円違っているということになります。
これは、今後評価額が大きく変化したとしてもこの金額は変わりません。
なぜなら一般NISAを1~5年目に利用した場合、当初の取得単価120万円を150万円に出来た時点で節税できた額が6万円に確定されるからです。(差額30万円×20%=6万円)
これは1番最初に載せた表の、5年目時点節税額とも一致します。
つまりNISAは、期間終了時点の評価額で節税額が確定する仕組みになっているということです。
期間中に売却して利益を確定させずとも、含み益をキープできれば節税メリットをしっかり享受できます。
ちなみにこれは一般NISAだけでなくつみたてNISAでも全く同じです。
したがって、「NISAは期間中に売らないと意味がない」というのは全くの嘘ということになります。
なお余談ですが、今回のシミュレーションで最も節税額が大きくなるのは、「4年目に一旦売却し課税口座で買い戻し」した場合です。(取得単価が160万円になるため)
しかしこれは、高い時に売れば儲かるということにすぎず、今回の本質からは外れます。
期間終了と同時にスイッチングはOK
長期保有が前提であれば、NISA期間中または期間終了後にわざわざ売却する必要はありませんが、見方を変えれば税金を気にせずスイッチングが可能なタイミングともいえます。
含み益がある商品は売却時に課税されてしまったり、NISAで運用中の商品は売却すると枠がその分使えなくなってしまいますが、NISA期間終了に合わせればどちらの問題もクリアできます。
特に一般NISAは2014年からスタートしており、2014年度投資分は今年2018年度末で期間終了となりますので、ポートフォリオを調整したい人は事前に考えておきたいですね。
逆に2018年から始まったばかりのつみたてNISAの場合、2018年度投資分が期間終了になるのは2037年となるためまだまだ気の長い話になります。
節税額の平準化という考え方
NISAは利益が出て初めてメリットがあり、逆に損失が出た場合は損益通算できないというデメリットが発生します。
その意味では、通常の証券口座以上に含み益をキープすることが重要です。
その一方、利益が大きいほど節税額が大きくなるため、基本的にはハイリスクハイリターンな商品をNISA内で保有するのがセオリーとなっています。
もし株式と債券を両方保有するのであれば、NISA口座で保有するのは株式が優先といった具合です。
しかし株式は保有期間が短いと元本割れするリスクも跳ね上がるため、NISA期間終了時に含み損になってしまう可能性も高くなります。
NISA口座で保有するべき商品を追求すると、元本割れリスクが低くてリターンが高いものという矛盾にぶつかってしまいます。
この2つを両立させることは不可能なので、そのどちらかを重視してNISA口座に入れる商品を選ぶことになります。
この考えを元にすると、一般NISAよりもつみたてNISAのほうが節税額を平準化できるということになります。
特に株式においては保有期間が長くなるほど元本割れリスクは減少していくため、結果的に安定した含み益を得られる可能性が高く、安定した節税につながることが期待できます。
つみたてNISAの20年間というのは保有期間として十分に長いため、20年後にはそれなりの含み益が出ていることが期待できます。
その一方、一般NISAの5年間というのは長期投資としては心もとなく、上にも下にも大きくブレる可能性があります。
損失が出る場合はもちろんですが、利益が出ている場合でもそのブレ幅が大きくなり、節税できる額も時期によって大きく変動してしまうという懸念があります。
「NISAを利用することで節税できる額」をリターンと定義するのであれば、一般NISAはつみたてNISAよりもハイリスクハイリターンといえます。
なお一般NISAの大きなメリットとして、レバレッジETFを使うことで疑似的に投資枠を拡大できるという点があります。
米国株ブロガーであるhiroakit氏の記事では、一般NISAでレバレッジポートフォリオを運用する方法として
・節税額の期待値を重視
・安定した節税を重視
といった2パターンが紹介されており、「NISAと節税」について学ぶ具体例として最適なので必見です。
外部リンク「可変レバレッジド・ポートフォリオが優秀なもう一つの理由」
NISAに関する誤解まとめ
長文になってしまいましたが、要点をまとめると次の通りです。
・期間内に売らなくても含み益なら節税につながる
・期間終了時に売っても売らなくても節税額は同じ
・途中で売ったほうが儲かるケースもあるけど結果論
・売る必要はないけどスイッチングの絶好タイミング
・節税額を安定させたいならつみたてNISAが有利
・含み益と節税額の管理をしっかり(特に一般NISA)
「NISAは途中で売らないと意味がない」への反論から、大分話が広がってしまいました。
いずれにせよ、NISAだから特別タイミングを見て売却しなければならないということは一切ありませんので、バイアンドホールド派の方も積極的にNISAを活用していただければと思います。
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