「毎年違う投信を買って節税」の具体例と節税効果
つみたて次郎です。
先日投稿した、投信における節税テクニックについての補足です。
元ネタは東大バフェット氏です。
外部リンク…【節税】投資信託を毎年変えれば節税になりません?
おさらいすると、類似の金融商品を複数、別々のタイミングで買付しておくことで、売却時に含み益の少ない物から売ることができる…という裏ワザです。
つみ次郎としてはこれまで誰も話題にしなかったのが不思議なくらい画期的なテクニックだと思っていますが、イマイチ盛り上がっていない(失礼)ようなので具体的な実践例を挙げてみようと思います。
米株投信派つみ次郎の場合
つみ次郎のアセットアロケーションを再現しつつ実践しようとした場合、以下のような投信が候補になりそうです。
・楽天・全米株式インデックス・ファンド(楽天)
・eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)(Slim)
・SBI・バンガードS&P500インデックス(SBI)
・iFree S&P500 インデックス(iFree)
※本記事では()を略称とします。
癖のない米株投信&低コストという条件で考えるとこのくらいでしょうか?
ほとんど同じする動きをする投信同士といっていいでしょう。
楽天だけ連動指数違うけど気にしないでください(震え声)
ネット証券の多くでは投信買付時に受取型/再投資型を選ぶことができますので、それを踏まえれば実質8パターンとなります。
また、証券会社を分散することで別枠として買付できますので、3社用意すれば合計24パターンとなり、かなりの長期投資にも耐えうることができます。
例えば楽天証券・SBI証券・マネックス証券の3社を用意して24年間の積立投資をやる場合、以下のような買付をすればよいことになります。
年数 | 略称 | コース | 証券会社 |
1年目 | 楽天 | 再投資型 | 楽天証券 |
2年目 | Slim | 再投資型 | 楽天証券 |
3年目 | SBI | 再投資型 | 楽天証券 |
4年目 | iFree | 再投資型 | 楽天証券 |
5年目 | 楽天 | 受取型 | 楽天証券 |
6年目 | Slim | 受取型 | 楽天証券 |
7年目 | SBI | 受取型 | 楽天証券 |
8年目 | iFree | 受取型 | 楽天証券 |
9年目 | 楽天 | 再投資型 | SBI証券 |
10年目 | Slim | 再投資型 | SBI証券 |
11年目 | SBI | 再投資型 | SBI証券 |
12年目 | iFree | 再投資型 | SBI証券 |
13年目 | 楽天 | 受取型 | SBI証券 |
14年目 | Slim | 受取型 | SBI証券 |
15年目 | SBI | 受取型 | SBI証券 |
16年目 | iFree | 受取型 | SBI証券 |
17年目 | 楽天 | 再投資型 | マネックス証券 |
18年目 | Slim | 再投資型 | マネックス証券 |
19年目 | SBI | 再投資型 | マネックス証券 |
20年目 | iFree | 再投資型 | マネックス証券 |
21年目 | 楽天 | 受取型 | マネックス証券 |
22年目 | Slim | 受取型 | マネックス証券 |
23年目 | SBI | 受取型 | マネックス証券 |
24年目 | iFree | 受取型 | マネックス証券 |
なんとか見栄えの悪い表にまとめてみましたが、これでイメージが湧くのではないかと思います(自画自賛)
例えば投資1年目は、楽天VTIの再投資型を楽天証券で買付するという事になります。
買付するのは年初一括でもいいですし、1年間毎日積立のどちらでも大丈夫です。
肝心なのは、2年目以降の投資内容と一切被らせないということです。
こうすることで、1年目の時点で投信の取得単価が確定するため、将来売却する時にこの部分だけをピンポイントで売ることができます。
基準価額が順調に右肩上がりになる前提であれば、1年目に投資した分が最も含み益を抱えることになる確率が高いですから、できるだけ売りたくない部分になっている可能性が高いはずです。
結果として24パターンの含み益・含み損が発生するので、含み損あるいは含み益の少ない部分から優先して売却し、含み益の多い部分は最後まで取っておくことで、キャピタルゲイン税の支払いを極限まで遅らせることができます。
上記のように一覧にして初めて気づいたのですが、このパターンだと複数の口座を頻繁にチェックする必要はなく、証券口座の切り替えは8年に1回で十分なんですね。
文章化するとこんな感じです。
①1年に1回証券口座にログインして買付する内容を変更する
②8年に1回証券会社を切り替える(元の口座もそのまま残す)
流石に毎年必ず1回は商品変更のためにログインする必要はありますが、少なくとも買付する時点ではそこまで作業が面倒ということにはならなそうです。
トータルリターンの計算が大変だったり、売却する時は全ての証券口座を全部並べて吟味するので面倒ですが、節税メリットに比べれば些細な問題でしょう(笑)
上記の例では24年間積立するという前提でしたが、このくらいの期間であれば多くの人の投資期間はカバーできそうです。
※1月22日追記…SBI証券は受取型/再投資型に分けることができず、別々で注文しても最初に選んだコースに統一されてしまいます(詳しくはコメント欄参照)。
そのため、上記の方法では24パターン確保することはできません。上記シミュレーションは参考程度にお願いします。
また、マネックス証券については当方口座を持っておらず確認できないため、確認したことのある方がいればコメント欄にて情報提供いただければ助かります。
なお、楽天証券についてはコース分けして保有できることを確認済みです。
また、今回は米株投信にスポットを当ててみましたが、MSCIコクサイなどであれば(信託報酬の差はともかく)さらに豊富なファンド本数がありますので、より細かく分けたプランも立てられそうですね。
極端な話、可能な限りパターンを分けるほど含み益・含み損をはっきりさせることができるため、例えば2020年1月分・2020年2月分・2020年3月分…みたいにすればより節税になります(流石にそこまでやるメリットはなさそうですが)
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過去10年間のS&P500リターンで検証
過去10年間におけるS&P500の円建てリターンをもとに、実際にどのくらい節税できるか検証してみます。
厳密には信託報酬や配当課税等の影響があるため、S&P500投信に投資しても全く同じリターンを得ることはできませんが、目安として考える分には十分代用できるでしょう。
参考に、過去10年間のS&P500指数円建てリターン(配当込)は以下の通りです。
2010年 | +0.4% |
2011年 | -3.3% |
2012年 | +30.8% |
2013年 | +60.8% |
2014年 | +30.3% |
2015年 | +1.1% |
2016年 | +8.9% |
2017年 | +17.4% |
2018年 | -8.0% |
2019年 | 32.8% |
この数値をもとに、毎年年初に100万円ずつ、10年間で合計1,000万円投資した場合についてシミュレーションしていきます。
投資した年 | リターン | 含み益 |
2010年 | +320% | 320万円 |
2011年 | +319% | 319万円 |
2012年 | +333% | 333万円 |
2013年 | +231% | 231万円 |
2014年 | +106% | 106万円 |
2015年 | +58% | 58万円 |
2016年 | +56% | 56万円 |
2017年 | +43% | 43万円 |
2018年 | +22% | 22万円 |
2019年 | +32% | 32万円 |
総合計 | +152%※ | 1,520万円 |
※10年間の投資元本1,000万円に対するリターン。
過去10年においては、どのタイミングで100万円を投下してもプラスになりました。
含み益と投資元本を合わせて、税引前の評価額は2,520万円となります。
本当はリーマンショックとか挟んで含み損の期間も演出したかった
毎年同じS&P500ファンドに投資していた場合、上記の表における総合計に近い状況となります。
全部一括で売却する場合、含み益である1,520万円の20%(304万円)が税金として引かれることになります。
もし全体の10%(評価額でいえば252万円に相当)を売却する場合は、税金も10分の1(30.4万円)引かれることになるため、実際手に入れることができるキャッシュは252万円-30.4万円=221.6万円となります。
しかし今回の裏ワザを用いて、それぞれ年別に投信を分けていた場合、含み益の少ない部分から252万円分売却することができます。
上記の表でいえば2018年分と2019年分を売却すればほぼ同じになりますね。
投資元本200万円+含み益54万円=254万円
含み益は54万円ですので、売却時に課税されるのはたった10.8万円です。
そのため、手に入れられるキャッシュは254万円-10.8万円=243.2万円となります。
それぞれ250万円強の投信を売却したという状況は変わらないのに、課税される額が大きく違うというのがこの裏ワザの真骨頂と言えます。
逆の見方をすれば、同じ額のキャッシュを手に入れるために売却する投信が少額で済むともいえますね。
最終的に含み益の多い投信も売る必要があるためあくまで税の繰り延べに過ぎませんが、取り崩しタイミングが遅ければ遅いほどメリットも大きくなります。
メリットは大きいが…
具体的な投信選び・節税額等について考察してきましたが、つみ次郎がこの裏ワザを実践することは当面ないでしょう(掌返し)
まず大前提として、この裏ワザは非課税口座(NISAやiDeCo)には関係のない話なので、投資資金の大部分がつみたてNISAとiDeCoになっているつみ次郎の場合はほとんどメリットにつながらないからです。
また、課税口座(特定口座)では比較的癖の強い投信やETFを買っているので、そもそも裏ワザができるほどのファンド数を確保できません。
話をまとめると、この裏ワザを利用するためには
・投資資金の多くが特定口座になっている
・ETFではなく投資信託で投資したい
・買付候補となる投資信託が存在している
・口座管理等のある程度の手間を許容できる
といった要素を満たしている必要があります。
ですが、特定口座をメインにするほど入金力のある人は、投信よりもETFを重視しているイメージがありますし、逆に投信派な人は口座管理に時間をかけたくない人が多そうなので、なかなか該当する人は少なさそうな気はしますね。
それを差し引いても、税引後トータルリターンに直結する裏ワザだけに、もっと周知されて議論が深まってほしいなと思うつみ次郎でした(完)
おまけ
2010年~2019年の年初に一括投資した場合、2019年末の時点でどれだけのリターンになっているかグラフにしてみました(記事中に載せるタイミングがなかった)
例えば2010年の場合、2019年末時点では+320%のリターンとなり、投資元本が4倍以上に増えた計算になります。
2019年の場合、2019年初~2019年末となるので年間リターンと一致します。
こうしてみると、2010年~2013年はとんでもない幸運な相場だったといえますね。
当然ながら、年別のリターン変動幅が大きいほど裏ワザのメリットも大きくなります。
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エスピージロウ
いつも記事を楽しみにしています。独特な視点と切り口が面白いです。
わかりやすい実例ありがとうございます。私も以前に同じようなことを考えたことはあったのですが、数字を見るとそこそこ効果があるように見えますね。
これに一般口座での購入も加えて確定申告不要の範囲で売却してゆくと、より節税になりそうです。
ETFも、数社に分けて購入はできますが、資金移動など考えると、より手間になりそうです。
少なくともSBI証券は1ファンドにつき受取型/再投資型のどちらかしか選べない(先に選択した方に固定になる)はずですよ。
でも、色々分散を駆使して、いざ取り崩すときは含み益の少ないものから…という節税戦略は支持します。
ちなみに記事には入ってませんが、楽天VYMのリターンが他より少なくて不満です。課税口座だし、このままだといざというときの取り崩しの第一候補になりそうです…。
>>ヨナ様
いつもありがとうございます。
私自身も具体的に計算したのは初めてですが、結構差があったので驚きましたw
一般口座のアイディアもなかなか面白そうですね(投資額が少ないほど相対的に効果的)
ETFの場合でも同じようなことは可能ですが、投信と比較した場合ファンド数を用意するのが難しく、(口座が分かれるため)配当金再投資が面倒なのも大きなデメリットとなりそうです。
>>匿名様
情報提供ありがとうございます。
SBI証券について確認してみましたが、同一日に同一投信の金額指定買付は不可能なようですね。
どちらかしか選べないというのは恥ずかしながら知りませんでした(私の口座でも再度チェックしてみます)
ちなみに楽天証券はコース分けできることを確認済み・マネックス証券は口座を持っていないので確認不可能です(念のため明記)
節税戦略については、かなり可能性を感じますね。
(私も持っている)楽天VYMの成績が冴えないのは残念ですが、含み益の少ないファンドから売っていく…というのは特別準備しなくても実行できるお手軽な戦略と言えますね(複雑な心境)