高配当株の是非を考えるために必要な4つの要素
つみたて次郎です。
米国の長期金利上昇を受け、高配当株の調子があまり良くありません。
そのため、高配当株の配当金再投資戦略について否定的な声が多く上がってきました。元々批判していた人だけでなく、実行していたけど他戦略に乗り換えた人もいます。
つみたて次郎は当然ながら高配当株を肯定する派です。(ほぼ実践していないのはお察しください)
とはいえ、確実な投資法などは存在しませんから、賛否両論の声があるというのはとても健全なことです。逆に一方的にたたえられる戦略など、投資するに値しません。
しかし、肯定派にも否定派にも、要領を得ていないような発言が多くみられているように感じましたので、今回は高配当株について考察する際に当然必要な要素を4つに分けて紹介してみます。
①配当金は資産の取り崩し
これは株に限らず債券でもそうですが、配当金というのは空から降ってくるものではありません。
企業の場合、配当金の原資となるのは株主資本です。つまり、株主→株主という流れでお金が動いているにすぎず、配当金そのものが利益になるわけではありません。
企業が得た利益は、配当金だけでなく、自社株買いや企業買収などにも活用できます。
したがって配当金を出すために何かしらの犠牲を払ったということに過ぎず、配当金はあくまでリターンに中立な存在です。
②配当金は税制上不利
日本では、株式の値上がり益と配当両方に課税されます。
しかし、値上がり益は売却するまで繰り延べできるのに対し、配当金は問答無用で課税されてしまうため、課税繰り延べ効果がありません。
また、日本国内での課税は値上がり益と配当金どちらも20%ですが、配当金の場合はさらに外国で課税されます。米国の場合は10%です。
参考記事「配当課税の恐怖と高配当戦略」
したがって再投資する前提なら、配当利回りが高いほど税制上不利になります。
③高配当株は過去長期で高リターン
米国の場合ですが、高配当株は長期でよいリターンをもたらしています。
1957~2006年においては、S&P500のトータルリターンは11.13%だったのに対し、配当利回り上位20%だけに投資した場合は14.22%でした。
参考記事「高配当戦略の有効性」
配当利回りが高い株式は、総じて成熟企業が多く、相対的に割安なことが多いです。
様々な考察は可能ですが、事実として過去長期において高配当株の再投資は有効な戦略でした。
ちなみに過去10年では、FANG含む無配当株及び低配当株のほうがリターンが良かったです。
④配当金と自社株買いは違う
これまで株主還元といえば配当金の事を指すことが多かったですが、近年では自社株買いによる株主還元が盛んになっています。
株主資本を使って流通している株式を買うだけですので、保有者にとっては株主→株主という流れでお金が動いているだけであり、配当金再投資と同等の効果をもたらします。
それどころか、配当金と違い課税を発生させないので、税制上有利というオマケがつきます。
理論上だけで言えば、自社株買いは配当金の上位ともいえる存在です。
しかし現実として、同じ働きをしないということを指摘したのがシーゲル教授です。
配当金は、企業の財政が健全であることの証拠であり、減配は大きなイベントとして投資家に受け止められます。しかし自社株買いは、他の使用用途が見つかれば中断されてしまい、結果として無駄に使われてしまう危険性があります。
また、配当金は実際に現金を配る必要があるため、誤魔化すことができません。
配当金による株主還元は、自社株買いに比べ信頼性が高いということになります。
まとめ
4要素を簡潔にまとめてみます。
配当金は資産の取り崩し
→配当利回りはリターンに直接影響しない
配当金は税制上不利
→課税の繰り延べ効果が弱くなる
高配当株は過去長期で高リターン
→少なくとも過去では有効だった
配当金と自社株買いは違う
→配当金が優先されることが多い
どれも当たり前の事なのですが、この4要素を無視して議論している方が多いように思います。
高配当再投資戦略を肯定するのであれば、税制上不利であっても超過リターンを今後も得られるという視点を持って語るべきです。
高配当再投資戦略を否定するのであれば、なぜ過去において有効だった戦略が直近では通用せず、今後も不調が続くのかという視点を持って語るべきです。
過去の実績は未来を証明するものではありませんが、各投資家は何かしらの根拠を過去に探しているはずです。
肯定派も否定派も、有意義で建設的な議論を交わしてほしいものです。