【年金】金融庁報告書を巡る攻防と対策【2,000万円】
つみたて次郎です。
先日6月3日、金融庁より次のような報告書が発表されました。
外部リンク…金融審議会 「市場ワーキング・グループ」報告書 の公表について
国民の資産形成や年金といった問題についてまとめられています。
以前本ブログでも登場した報告書(案)の正式版ですね。
参考記事…老後までに2,000万円貯めるゲームが始まりました
書かれている内容は非常に多岐に渡りますが、その中で「老後に2,000万円必要」という部分が大きく取り上げられている印象があり、大きな反響を呼んでいます。
政府の中でも様々な動きがあり、その中で特に重要なのは次の2つです。
①麻生大臣が報告書の撤回を求める
報告書に対して賛否両論はありましたが、「政府の見解と異なる」「平均で考えるのは無理がある」「赤字になってしまうという表現は不適切」などといった理由から麻生氏は報告書を受け取らないという姿勢を発表しました。
また、安部首相からも「不正確で誤解を与えるものだった」という厳しいコメントも出てきます。
外部リンク…「老後に2000万円」撤回へ 金融相「報告受け取らぬ」
外部リンク…老後資金の不足問題、国会で応酬 首相「誤解与えた」
上記の表向きの理由は一理ありますが、実際のところ「年金だけで生活できない」という事実の発表に対してこれほど批判が集まるのは予想外で、やむなく別の理由をつけて撤回したと考えるのが自然ではないかと思います。
来月には参院選も控えているので、タイミングも悪かった感じですね。
②金融庁局長が報告書について謝罪
上記の動きを受け、報告書をまとめた金融庁より「配慮を欠いた対応だった」と謝罪のコメントが出されています。
外部リンク…金融庁局長「配慮欠いた」と陳謝 2千万円報告書巡り
これにより、政府にとって報告書は完全になかったことになりましたが、一度世に出回った以上そううまくは収まりません。
報告書の内容は素晴らしかっただけに、結果として与党にとっては「臭いものに蓋をする対応」、野党にとっては「無責任な報告と撤回について批判」といった政治の材料に使われてしまうのは残念ですね。
投資クラスタと世間の温度差
今回のような金融・投資に関する話題がニュースとして広まった場合、マスコミや世間の見解に対して「いや、それは違う!」というツッコミを入れがちな投資クラスタですが、今回は特にその傾向が強いといえます。
今回の報告書に関するニュースは半月ほどに渡って続いており、それだけ「老後に2,000万円必要」という言葉のインパクトは大きかったようです(マスコミにとって都合の良いネタだったというだけかもしれませんが)
そのため肯定派・否定派問わず様々な意見が広がっています(建設的な議論であれば有意義なことです)
投資クラスタの場合は次のような要素があるため、肯定的な立場になりやすいです。
・以前から資産形成の必要性を理解している
・高所得な人が多いため2,000万円にビビらない
これは当然の話ですが、老後資金を十分蓄えられる見込みがある人であれば、報告書に対して批判的な立場にはなりづらいですからね。
そもそも若い世代であっても金融資産2,000万円を達成している人はザラにいるのが投資クラスタという魔境ですからね(ドヤ顔)
つみ次郎も順調に行けば65歳に2,000万円は確保できるはずです(脂肪フラグ)
今回の報告書に対しては、老後は公的年金だけでは生活できないという「年金制度に対する不信感」に対して批判が集まっているような印象ですが、本当に公的年金だけで生活できると思っていた人は少数派であると考えています。
みんななんとなく年金だけでは足りないことを理解しつつ各自蓄えをしていたところに、「平均で2,000万円必要」という具体的かつ平均的な人では厳しい数字を突き付けられたことで、年金制度に対する不満が爆発したというのがより正しいのではないかと思います。
2,000万円用意できない者の末路
あくまで平均にすぎませんが「2,000万円」という数字を出した意味は大きいです。
個人差はありますが、少なくとも数百万~千数百万円は必要になると考えたほうがよいでしょう。
じゃあ準備できなかった人はどうすればいいかというと、次の2つが解決策となります。
①定年後も生活費を確保するため働く
公的年金以外の収入がなくなってしまうのが根本的な問題ですので、働き続ければ問題はありません。
「人生100年時代」という言葉もあるように、平均寿命が延びているのであれば労働期間を長くするというのは自然な発想です。
逆に言えばこの解決策を素直を受け入れられる人が少ないからこそ、労働問題や年金問題の調整はデリケートで難しい問題であるともいえますけどね。
②生活水準を下げて節約する
年金額を考慮しない生活をしようとするから不足するのであって、年金額の範囲内で生活費をコントロールすれば問題ありません。
厳しく言えば「身の丈に合った生活をしろ」ということです。
報告書によれば、老夫婦の毎月平均収支は次のようになっています。
・収入(公的年金等)…約21万円
・支出(生活費)…約26万円
出典「現代ビジネス」
なので差額の5万円をなんとかするために自力で蓄えろという話に発展していますが、いろいろツッコミどころはあります。
特に食費・交通通信・教育娯楽あたりはまだまだ削れそうな感じがしますね。
また、その他の消費支出の割合が高いので、家計を工夫すれば5万円は余裕で節約できそうです。
節約しながらカツカツな老後生活なんてしたくない?じゃあ自力で毎月5万円分蓄えよう(辛辣)
逆に、住居費がわずか1万3千円というのも気になりますね。
持ち家の人と賃貸の人の全体平均なので仕方がありませんが、この数値が根拠になっているということは賃貸派の人は2,000万円どころでは済まないということになります。
あくまで平均なので歪みはありますが、老夫婦二人の生活費が毎月26万円というのは賃貸住まいを仮定しても十分余裕があるように感じますし、毎月21万円に切り詰めることは十分可能でしょう。
もちろん高級車を乗り回したり、頻繁に旅行に行ったりという贅沢は厳しいですけどね。
①②にどちらも確実かつ現実的な方法ですが、これを大きく主張する政治家は落選するでしょう(笑)
今回の報告書が炎上したのも、あまりに正論すぎる耳が痛い内容であったからだといえます。
特に、今から2,000万円を準備するのが難しいであろう40代~50代くらいにとっては、ある意味梯子を外されたようなものですからね。
現役世代はどうすればいいか?
上記資産はあくまで「現時点での平均」ですので、少子高齢化が進む現状を考えれば、そもそも公的年金で毎月21万円確保すること自体が難しくなるでしょう。
なので2,000万円という数字ですら、今年金保険料を納めている現役世代にとっては生温い金額なのかもしれません。
確かに年金制度そのものは、支給額や支給開始年齢の見直しを行っていけば今後何十年に渡って存続可能かもしれませんが、結果として私たちの生活を圧迫することは間違いありません。
もし日本の年金制度がより良い方向に向かっていくとしても、根本的な解決に向かうためには経済成長や少子高齢化の改善といった長期的な話になるので、今後十数年で解決できる類の問題ではありません。
なんかこの画像が流行ってて草
落としたら2000万円もらえるんか?(錯乱) pic.twitter.com/D2fIAhOf2I— iFree次郎 (@tsumitatejiro) 2019年6月11日
GPIFの運用方針を変えたり、他の出費を削って補填するといった短期的な方法では解決策にならない以上、どちらに転ぶとしても長い歳月が必要であるということは心得ておかなければなりません。
必要額2,000万円という数字は参考にすぎませんが、この数字が将来はゼロになる(=公的年金だけで余裕のある生活ができる)ことはなく、どう少なく見積もっても数百万単位の金融資産は必要になるはずです。
将来どれだけの金融資産を蓄えられるか・将来どれだけ年金がもらえるか・将来どのくらい生活費がかかるかは不確定である以上、無理のない範囲で投資・貯金を心がけていくしかありません。
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つみたて2000
自分が投資クラスタだということを始めて自覚した次第です。
>>you様
投資クラスタとして世間から一歩引きつつ、世の中を眺めていく姿勢が大切ですね。
もしかしたら平均ではなく中央値で出したほうがそれっぽい数字になったかもしれないですね。
厚生年金は厚生労働省の管轄なので金融庁が殴り込みに行った可能性。
>>ぱんかす様
中央値だったらここまで荒れることもなかったような気もしますね(笑)
年金問題について直接の管轄ではない金融庁が見解を出したというのも、今となっては悪手だったといえるかもしれません。