iFree 年金バランスを分析。GPIFと同じポートフォリオで運用されるバランスファンド。
つみたて次郎です。
今回は、「iFree 年金バランス」を分析していきます。
内容はよくあるバランスファンドですが、その資産配分の決め方に大きな特徴があります。
名前についている「年金」は、国民年金・厚生年金等の公的年金を意味しており、これらの運用元である年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)のポートフォリオを運用基準に定めています。
つまり、公的年金と同じ内容で運用されるというコンセプトを持ったバランス型投資信託ということになります。
基本情報
項目 | データ |
ファンド名 | iFree 年金バランス |
運用会社 | 大和証券投資信託委託㈱ |
設定年月日 | 2018年8月31日 |
ベンチマーク | GPIF基本ポートフォリオ |
為替ヘッジ | なし |
信託報酬 | 0.17172% |
信託報酬は非常に低く、これは全バランスファンドの中でも最低水準を誇ります。
ベンチマークは「GPIF基本ポートフォリオ」となっており、名前の通りGPIFに合わせ資産配分を都度変更させていくことになります。
ポートフォリオについて
現時点では、次のような配分になります。
株式と債券の比率は半分ずつになっており、債券クラスは日本債券の比率が多めになっています。
あくまで現時点の資産配分なので、GPIFの動向に合わせその比率は変化していくことになります。
クラス別のベンチマークは次の通りになっています。
・日本株式…TOPIX
・外国株式…MSCIコクサイ
・日本債券…ネオ・ジャパン債券(アクティブ)
・外国債券…FTSE外国債券インデックス
GPIFが運用する資産の大部分はパッシブ運用されているため、インデックスファンドを組み合わせることでおおよその再現が可能です。それを自動で行ってくれるのが本ファンドといえます。
ちなみに外国株式・外国株式とありますが、新興国は一切含まれていません。
本家GPIFにおいては、一部アクティブ投資や新興国への投資も行われているので、あくまでも簡易的な再現となります。
注意点としては、日本債券クラスがアクティブ運用のマザーファンドが採用されている点です。
とはいえ、債券クラスではインデックスとアクティブに大きな差はつかず、コスト高にもつながっていないことから、あまり気にしなくてもよさそうです。
そのため完全にGPIFの運用成績と一致するわけではありませんが、ほとんど誤差の範囲といっていいでしょう。
GPIFを再現するという要素を考慮せずとも、信託報酬最安値のバランスファンドということで、非常に優秀な投資信託であるといえます。
ちなみに日本債券を減らし先進国債券を増やすと、4資産均等型と同じような資産配分となります。
現在4資産均等型の信託報酬最安値はeMAXIS Slim バランス(8資産均等型)と<購入・換金手数料なし>ニッセイ・インデックスバランスファンド(4資産均等型)が同率で0.17172%とまったく同じになっています。
こちらは4資産を25%ずつで固定なのでジャンルは少し違いますが、十分比較対象になりそうです。
GPIFのあれこれ
あまり知られていないかもしれませんが、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は世界でも有数の超巨大な資産運用機関です。
2018年3月末時点での運用額は約156兆円となっており、これは年金基金として世界最大です。(ちなみに2位はノルウェー政府年金基金)
また、公的年金が株式や債券などのリスク資産で運用されていること自体知らない方も多数いると思われます。
その莫大な資産をリスク資産で運用するため、その損益の数字も桁違いです。
2015年には、一時的に5兆円の損失を出したことから、民進党が「年金5兆円損失追求チーム」を結成しています。
政治利用されることもしばしばあり、良くも悪くも影響力の大きい機関です。
そしてGPIFの運用成績が、私たちが将来もらえるの年金を左右するというのも忘れてはなりません。
政治家だけでなく国民レベルでも「年金を株式のようなギャンブルにつぎ込むなどけしからん!」という意見はよくあり、投資クラスタとしてはとても悲しい気持ちになります。
GPIFというブランド価値
少し話がそれましたが、GPIFは身近な私たちの年金を運用しているという親近感や、世界最大の資産運用期間という肩書があり、一般の方に投資を広めていくためのきっかけとしてはとても都合の良い存在です。
これが悪質な投資ファンドなどであれば大問題ですが、GPIFはその知名度だけでなく、運用内容も比較的堅実であり、パッシブ運用を基本とした再現性の高い投資を行っています。
私たちが将来受け取る予定の年金ですから、きちんと運用してもらわないと困りますからね。
いわば「投資の教科書」として素晴らしい要素を兼ね備えており、金融機関・金融庁・個人投資家いずれにとってもアピールに活用しやすいという莫大なメリットがあります。
そしてGPIFの運用を真似していく本商品はその究極ともいえ、これ以上にない最高のアピールポイントを持っていることになります。
DCファンドのデフォルト用?
ツイッターにて、本商品に関する面白い考察がありましたので紹介します。
GPIF連動型は、DCのデフォルトファンドとかに使われるんじゃないじゃないかな。資産配分の根拠を受益者から問われた時に、責任をお上に丸投げできる点は企業とかからすれば魅力的ですから。
— 菟道りんたろう (@udohrintaro) 2018年8月16日
とても鋭い考察で、もうそのための商品としか思えないくらいしっくりきますね。
通常、DC(確定拠出年金)におけるデフォルト商品は、元本保証型になっていることが多いです。
しかし米国等では、株式や債券を組み合わせたバランスファンドがデフォルトになっているのが基本だそうです。
また、日本でも2018年5月より楽天・インデックス・バランス(DC年金)が楽天証券のiDECO(個人型確定拠出年金)のデフォルト商品になるなど、その流れは日本にもきています。
今回登場したiFree 年金バランスは、前述の通りGPIFに沿った運用という大義名分があるため、デフォルト商品として相応しい内容だと思います。
資産配分をGPIFに委ねる危険性
ここまでは肯定的な意見をまとめてきましたが、本項目は否定する内容になります。
GPIFに追随するといえば聞こえはいいですが、実のところ資産配分を丸投げしているにすぎず、各投資家の投資方針やリスク許容度に合わなくなる可能性があります。
個人的には資産配分は、投資家自身がコントロールしていくべき要素と考えています。
したがって、バランスファンドを選ぶのであれば、資産配分が明確な基準に沿って決められている物を基本とするべきだと思っています。(4資産均等型など)
また、GPIFは前述したとおり政治家のアピール道具として悪用されることも多く、極端にリスク許容度を下げたポートフォリオに改変されてしまう危険性があります。(日本の現状を考えれば、逆に極端に株式比率を高めたハイリスク運用になることはないでしょう)
資産配分を外部に委ねるという意味で、ロボアドバイザーと同じような弱点を抱えています。
参考記事「ロボアドバイザーが危険だと思う理由」
とはいえ、コスト面でのデメリットがない分大分マシ…というよりトータルで見ればかなり有力な投資対象であると思います。
まとめ
賛否両論あると思いますが、つみたて次郎としては総合的にとても高く評価します。
それは、GPIFの真似をするという初心者にも分かりやすいコンセプト・シンプルで無難なポートフォリオ・低コストファンドに負けない低い信託報酬など、痒いところに手が届くバランスの良いバランスファンドだからです。
あまり好ましいとはいえませんが、何かのきっかけで爆発的に流行する可能性も十分考えられます。(確率は低いと思いますが)
ごく一般の方が投資に興味を持つきっかけとして、広く活躍してほしいと思います。
ブログ村ランキング
GPIF次郎