【バフェット】バークシャーハサウェイの議決権について考えてみる【BRK.B】
つみたて次郎です。
米国個別株投資家に大人気の銘柄の1つに、バークシャー・ハサウェイ(BRK.B)があります。
かの有名なウォーレン・バフェット氏がCEOを務める保険コングロマリット企業で、事実上バフェット氏がファンドマネージャーを務めるアクティブファンドのように扱われることが多いです。
そんなバークシャーハサウェイには、BRK.AとBRK.Bという2種類の株式が発行されています。
BRK.Aは、1株当たりの株価がなんと約30万ドル(≒約3,300万円)もあり、機関投資家や富裕層向けの内容になっています。
BRK.Bは、A株を1,500分の1に分割して誕生した株で、株価はA株の1,500分の1以下になるように推移しています。
現在の株価は約200ドル(≒約2.2万円)となっており、個人投資家でも気軽に買うことが可能です。ただし、議決権はA株の10,000分の1しか付与されておらず、理論価値は次のようになります。
A株1株≻B株×1,500株
A株に対するB株で考えると、株価が1,500分の1なのに議決権は10,000分の1になっており、計算すると同じ投資額に対する議決権の重みは6倍以上違っていることになります。
議決権の価値の分、A株1株のほうがB株1,500株よりも大きくなります。
万が一逆転するような事態があった場合、A株を買い・B株を空売りすることで調整されるような仕組みになっています。
実際に取引できるのはB株のみですが、購入する際にはA株の株価にも気を付ける必要がありますね。
ちなみにほとんどの個人投資家には関係ない話ですが、A株は任意でB株1,500株に交換することができます。ただし、B株→A株に交換することは出来ません。
そして今回は、議決権の重みについて考察していきます。
A株とB株の株価と発行株式数は、次の通りです。(2018年6月12日現在)
株価 | 発行株式数 | 時価総額合計 | |
A株 | 292,770ドル | 約74.7万 | 約218億ドル |
B株 | 195.53ドル | 約13.46億 | 約263億ドル |
A株とB株の時価総額における比率で考えてみると、B株のほうが大きいようです。これは意外な事実でした。
時価総額を合計すると約481億ドルとなり、これはバークシャーハサウェイ全体の時価総額とほぼ一致します。
そして株式の種類別に議決権の重みを計算してみました。
バークシャーハサウェイに対する議決権の保有割合
A株全部…全体の約85%
B株全部…全体の約15%
A株の時価総額に対する割合は半分を下回っていますが、議決権で考えると全体の85%近くを持っていることになります。
BRK.Bを保有している個人投資家が全員束になっても、株主総会をひっくり返すことは出来ません。
つみたて次郎は、株式における議決権をかなり重要な要素だと考えています。
バフェット氏の名言に、「株ではなく事業を買う」という言葉があります。
株式投資のリターンの源泉は企業が稼ぎ出すリターンであり、優良な事業を適正な価格で買うのはバフェット氏の基本戦略となっています。
つみたて次郎もこの言葉に深い感銘を受けており、例え個別株を直接保有しないETFや投資信託への投資であっても、その背景にある事業に目を向けていく必要があると思います。
そして株式投資とはその企業のオーナーになることに等しいですが、果たして議決権のない株式は本当の意味でオーナーになっているのか?という疑問があります。
参考記事「無議決権株に対する不信感」
そのため、議決権が付与されない優先株式や無議決権株に対し、あまり良い印象を持っていません。
そして今回のBRK.Bも、議決権が不完全という意味では同様のケースです。
そもそもバークシャーハサウェイがA株→B株への株式分割を行ったのは、金融機関の思惑を避けるためという消極的な理由があります。
昔からBRK.Aは値嵩株として有名で、株価が高すぎて買いたくても買えない投資家がたくさんいました。しかし、質の良い投資家に長期保有してもらいたいということで、株式分割は一切しない方針でした。
その状況に目を付け、BRK.Aの権利を分割して個人投資家に売りつけようとする金融機関が現れ、それを阻止するために先手を取って株式分割に踏み切ったという経緯です。
分かりやすく例えれば、楽天バンガードのような間接投資ファンドを立ち上げられないように、自分たちで直接少額投資可能な状況を構築したといったところですね。
と、ここまではバークシャーハサウェイの投資家に対する情熱がよく伝わるエピソードなのですが、なぜその際に議決権の重みを細工したのかが非常に気になります。
やはり議決権が小口投資家にバラけるのを嫌ったのかもしれません。
ここまでバークシャーハサウェイの議決権について批判的な立場で解説してきましたが、バークシャーハサウェイの議決権についてはかなり特殊なケースであると考えています。
通常の株式会社であれば、議決権の有無や重みが違う株式を発行することで、議決権を維持しつつ増資することが可能です。
しかしこれは、投資家と経営陣の間にズレが生じることになり、一般的には悪材料になります。
しかしバークシャーハサウェイの場合、バフェット氏やその右腕マンガー氏の手腕を信じて投資している人がほとんどであり、むしろ創業者たちで全て議決権を保有しているほうが投資家としては安心できるかもしれません。
もし一部のBRK.A株主が結託してバフェット氏をクビにしようとしたら、その他大勢の株主は大反対すると思います。
これが上場株式ではなく未上場のミューチュアルファンドだとして考えれば、外部の影響でカリスマファンドマネージャーがクビになったらファンド保有者はたまったものではありませんよね。
先日、フェイスブック(FB)の多議決権株の廃止を求める声が上がっているというニュースがありました。
外部リンク「米フェイスブック、外部投資家の大半が多議決権株式に反対」
これは、CEOであり議決権の過半数を握っているマーク・ザッカーバーグ氏への信認が揺らいでいると考えることもできます。
マーク・ザッカーバーグ氏の手腕を信じてFBに投資している人もいれば、ただ単にフェイスブックという事業を信じて投資している人もいるはずで、多議決権株は後者の株主にとって不都合な存在です。
しかしバークシャーハサウェイに投資している人は、ほぼ100%バフェット氏の投資手腕を信じてBRK.AやBRK.Bを保有しているはずであり、仮に議決権の100%をバフェット氏が握っていてもあまり気にならないような気がします。
バークシャーハサウェイ≒バフェット氏やマンガー氏らの投資会社という状況が続く限り、バークシャーハサウェイの議決権はあまり大きな意味を持たないのではないかと考えています。
ただしいずれにせよ、特定の経営陣に依存した株式会社は好みではないので、つみたて次郎がBRK.Bに投資することはおそらくないでしょう。
最後に、バフェット氏の格言の1つを紹介して終わりたいと思います。
ブログ村ランキング
BRK.A欲しい
納得のいく内容でした。
最後の格言は暗にそれを示唆しているのだと思いますが。
バフェットが馬鹿だと思うならバフェットは買えないし、
バフェットが利口だと思うならバークシャーは買えない
それをバフェットが言うところが面白いですね。
次郎さんのスタンスは、
「バフェットは好きだし、
A株orB株ならB株だけど、
(バフェットの言葉に感銘を受けるのだから当然)バークシャーは買わない」
ということだったんですね。
どうもありがとうございます。
バフェット氏の投資哲学や格言も、バフェット氏の投資方針と照らし合わせると必ずしもそうであるとは限りませんからね。(悪い意味ではなく、むしろ当たり前の事ですが)
また、バフェット流投資法は「優良企業を安く買う」という定性的な内容であるため、個人投資家がマネするのは非常に難しいと思っています。
したがってバフェット氏の投資手腕を信じるのであれば、素直にBRK.B(買える人はA)を買うのが無難だと思います。
ただ私自身は、バークシャーの今後についてはそれほど興味がなく、単なるアクティブファンドの1つとしてしかとらえていません。
バフェット氏の投資に対する考え方は今後も学んでいきたいですが、具体的に私の投資方針に影響を与えることはないでしょう。