銀行にお金を預けるくらいなら銀行株を買え

つみたて次郎です。

現在、日本では超低金利状態が続いており、銀行にお金を預けてもほとんど利息が付かない状況です。

メガバンクの場合、普通預金の利率は以下の通りです(2019年8月現在)

銀行名 利率(年)
三菱UFJ銀行 0.001%
三井住友銀行 0.001%
みずほ銀行 0.001%

 

わずか0.001%の利率ということは、1億円預けて1,000円にしかならないということです。

ATM手数料で簡単にマイナスになってしまう水準です。

一般庶民が数十万~千数万程度の預金を持っている程度ならば、利息なんてほとんど充てにできないようなもんです。

そのため、ほとんど利息が付かない銀行預金にしておくのはもったいない!という風潮もあり、金融機関が株式や投資信託を売りつける際の決まり文句になっています(笑)

その中で特にわかりやすいのが、タイトルになっている銀行にお金を預けるくらいなら銀行株を買えというフレーズです。

上記で紹介したメガバンク3社(厳密にはその親会社)は東京証券取引所に上場していますので、株式という形で投資することができます。

これらの銀行株は、配当利回りが比較的高めで、いわゆる高配当銘柄に該当します。

2019年8月8日現在における、各社の予想配当利回りは以下の通りです。

銘柄 配当利回り
三菱UFJファイナンシャルグループ(8306) 4.90%
三井住友ファイナンシャルグループ(8316) 4.96%
みずほファイナンシャルグループ(8411) 4.83%

 

いずれも予想配当利回りは5%近くになっており、単純計算すれば普通預金の5,000倍です。

1億円分の株を買えば、税引後でも年間400万円近い配当金を受け取ることができ、夢の配当金生活が実現します。

しかし、だからといって銀行にお金を預けるくらいなら銀行株を買えというのは、あまりに大雑把すぎる理論なのは当ブログの読者様であればすぐにわかるはずです(笑)

今回は、なぜこの理論が成り立たないのかについて、理由などを考察していきたいと思います。

 

抱えているリスクが違う

元本保証であり、名目リターンで絶対にマイナスにならない銀行預金と、場合によっては紙屑になって価値ゼロになる可能性がある銀行株では、そもそものリスクが全然違っています。

万が一銀行が倒産しても、銀行預金であればペイオフ(預金保護)により1,000万円まではしっかり守られるので、1,000万円以下の預金であれば銀行の信用リスクを抱える必要はありません。

その一方、銀行株については、金融機関が倒産すればモロにダメージを受けるので、銀行の信用リスクをダイレクトに抱えることになります。

価格変動リスク・信用リスクという2つの面で銀行預金は圧倒的に優れており、銀行株その真逆で価格変動リスク・信用リスクも非常に大きいです。

単に銀行預金が低利率なのはローリスクローリターンだからであって、銀行株が高利率なのはハイリスクハイリターンなだけという話です。

 

配当金は超過リターンじゃない

そもそもの話として、株式の魅力を考えるうえでは配当金だけでなく、価格変動についても考慮しなければなりません。

どれだけ配当利回りが高くても、株価が下がり続けるなら意味がないですし、逆に株価が上がり続けるなら配当金なんてなくてもよいです。

配当利回りゼロの銀行株より銀行預金のほうがマシという理屈も通ることになってしまいますからね。

ちなみに、国内の銀行株×配当利回りゼロでスクリーニングしたらスルガ銀行(8358)が該当しました(笑)

配当利回りが0%だろうが20%だろうが、銀行預金等の利率と直接比較するのは不適切です。

これは、債券の利率でも同じことが言えます。

参考記事…債券の利率と株式の配当利回りを比較する意味はあるのか?

また、配当金を出すのは株価下落の要因になりますので、基本的には配当金を多く出す企業ほど株価下落のリスクも高まるということになるため、むしろ銀行預金と比較するとそのハイリスクさが際立つことにもなってしまいます。

配当利回りの数字だけを全面的に出すのは、あまり感心できる訴求方法とはいえないでしょう。

参考記事…【高配当】One Tap BUYが「つみたてロボ貯蓄」サービスを開始【定期分配型】

 

 

銀行株ではなく銀行社債ならマシ

銀行預金と比較するという前提であれば、銀行株よりも銀行社債のほうが比較しやすいですし、性質も似ています。

例えば、三菱UFJ銀行が直近で発行した第160回普通社債は、以下のような内容になっています。

・年限…10年
・利率…0.631%

払込日は2014年7月だったので直接比較はできませんが、当時の普通預金の利率よりは高いはずです。

さらに正確に比較するなら、10年物定期預金と比較するのが分かりやすそうです。

社債なので、満期までずっと持っていれば元本もしっかり返ってきます。

利率の差は、中途売却すると元本割れするリスク・三菱UFJ銀行の信用リスクを抱えることによる対価となります。

株式より返済の優先度が高いとはいえ、社債も銀行預金に比べれば様々なリスクを抱えています。

あくまで銀行株に比べれば銀行社債のほうがマシという話であり、社債ですら銀行預金と性質の異なる金融商品なので、代替として考えるのは危険だと思っています。

銀行預金・銀行債券・銀行株という資産の間には、とてつもなく大きな壁があるといえます。

 

銀行株は景気敏感だから辛い

百歩譲って銀行預金より株式のほうがいいという理屈で考えるとしても、やはり銀行株は不適切です。

銀行預金をメインに資産運用している人は、当然ながらリスク許容度が低く、リターンを得るというよりも資産保全を中心に考えているとおもわれます。

そのため、リスク資産に投資するならその割合は低めに、そしてより低リスクな資産を選んでいく必要があります。

そのため、銀行預金の代替えとして株式投資をするのであれば、生活必需品セクターや公共事業セクターのような、株価の変動が緩やかで業績が安定している株のほうが向いています。

具体的には、日本たばこ産業(2914)や東京電力ホールディングス(9501)などが定番でしたね(過去形)

そもそも銀行預金の利率と比較する前提であれば、配当利回り1%くらいの低配当銘柄でも問題ありませんし、それより重要なのは株価が安定していて、減配等の心配が少ない等のディフェンシブ性ではないでしょうか?

そのように考えたときに、銀行株というのは典型的な景気敏感株であり、株価も配当金も大きく変動する傾向があります。

そのため銀行預金の代わりに銀行株というのは、株式というジャンルの中で見ても特にミスマッチに思えます。

 

フレーズ自体は悪くないと思う

ここまでいろいろ批判をしてきましたが、銀行にお金を預けるくらいなら銀行株を買えというフレーズ自体は結構好きです(笑)

この一言の中に、銀行という業種の特殊性・株式や債券と銀行預金の違い・配当金狙いの投資法などといった、様々な考えさせられる要素が眠っているからです。

なのでセールストークとしてみればツッコミ所だらけですが、投資初心者が最初にぶつかる登竜門・踏み絵として考えれば、とても素晴らしいのではないでしょうか(ゲス顔)

なぜ銀行預金だとほとんど利息が付かないのに、銀行株だとはるかに多くの配当金を受け取れるのか…投資の世界にフリーランチはありませんので、銀行株にはそれに釣り合うだけのリスクがあるということです。

リスクとリターンは表裏一体であること、人間というのは時に都合のいい面だけ見てしまうということを肝に銘じて、広大な相場という名の海を泳いできたいですね(かっこいい)

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半沢次郎

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