債券の利率と株式の配当利回りを比較する意味はあるのか?
チェリー🍒次郎です。
投資に回せる資金というのは有限ですから、どの資産にどれだけ投資するかを考えることが非常に重要です。
様々な投資候補を比較し、そこから導き出した答えがポートフォリオになるといえます。
その中でも、株式と債券は伝統的金融資産であり、多くの投資家がその扱いに頭を悩ませています。
一般的には、相場が好調な時は株式・不調な時は債券の比率を高めるのがセオリーですが、どのタイミングで比率を変更させるかというのは多くの投資家が直面する永遠のテーマといえます。
株式と債券は、保有するだけで一定のキャッシュを受け取ることができます。
株式の場合は配当金で、投資元本に対する比率が配当利回りになります。
債券の場合は利息で、投資元本に対する比率が利率になります。
そして、株式と債券の優劣を考える際に、株式の配当利回りと債券の利率を比較するという手法が存在しています。
今回は、配当利回りと債券利率を比較することの意味や妥当性について考察していきたいと思います。
米国株VS米国債券で考える
つみ次郎は米国株クラスタ(自称)なので、まずは米国市場を例に挙げていきます。
先日利下げが行われましたが、米国の長期金利は大体2%くらいになっており、債券の利率もその前後になっています。
そして、米国市場を広く反映するS&P500指数の配当利回りも大体2%くらいになっています。
米国においては、偶然にも株式の配当利回りと金利が同じくらいなっているといえます。
(特に理由なく)株式や債券が暴落すれば、それぞれの数値は上昇しますし、逆であれば下落します。
あり得ない例えですが、もし明日S&P500指数が50%暴落し、配当金はそのまま維持される見込みであれば、配当利回りは4%くらいまで上昇することになります。
S&P500(ファンド)を保有していれば4%の配当金を受け取れるのに、わざわざ長期国債を買って2%ぽっちの利息を受け取るのはもったいないという考え方ですね。
単純に債券の金利が上がれば株式の魅力は下がりますし、逆も然りです。
ただし、超低金利が続いているような日本やヨーロッパの国等では、全く機能しない理論でもあります。
当然ですが債券の金利が限りなくゼロであれば、常に株式を買えという暴論になってしまいますからね(笑)
直接比較するのは適当でない理由
株式と債券はその性質が大きく異なるように、株式の配当利回りと債券の利率を直接比較するのはあまり適当ではありません。
その理由は主に以下の2点です。
配当金は不確定、利息は確定
配当利回りを左右する配当金は、株式会社が稼いだ利益がその原資となっています。
そのため、企業の業績によっては増減しますし、減配・無配転落になる可能性もあります。
また、通常債券に比べ株式のほうが上昇幅が大きいので、同じ年率〇%でも大きく意味合いが違ってきます。
配当利回りがずっと2%だとしても、その間に株価が2倍になっていれば配当金も2倍になっていますし、逆に株価が半分になっているのに2%のままであれば、配当金は半分になっていることになります。
その一方、利率を左右する利息はあらかじめ約束された数字であり、デフォルトしない限り安定して受け取れるものです。
同じく利息が約束されている現金(キャッシュ)と債券の利率を比較するのであればともかく、株式の配当利回りと比較する意味はあまりないと思います。
配当金は株式リターンに比例しない
当ブログでも再三主張していることですが、配当金はどこまで行っても株式リターンに中立の存在です。
理論上は、配当金を多く出そうが全く出さまいがトータルリターンに直接影響することはありません。
単にそれぞれの企業にとって配当金を出したほうがいいor出さないで別の用途に使ったほうがいいという資本政策が存在しているだけです。
また、最近では第2の株主還元である自社株買いに積極的な企業も増えており、特に米国市場においては配当還元性向が減少しています。
出典「LEGG MASON」
極端な話、「もう今後は配当金出すのやめて自社株買いオンリーにしようぜ!」という取り決めをすれば配当利回りを0%にすることもできます(笑)
企業の資本政策次第で、配当利回りは高くも低くできてしまう数値です。
少なくともここ数年の傾向としては、配当金より自社株買いという風潮が続いていますので、配当利回りで株式のバリュエーションを評価すると実力よりも過小評価してしまうということになりかねません。
なので、債券の利率と比較するのは不適当であると考えています。
つみ次郎的の感覚だと、配当利回りと金利を直接比較するのは銀行預金だと利率低いから高配当株買ったほうがマシくらいの大雑把な話だと思っています(煽り)
別の例を挙げると、配当利回り〇%以上なら割安という判断も、同じような問題点を抱えています。
補足ですが、つみ次郎が目指している高配当戦略は配当利回り上位〇%という考え方がベースなので、あくまで相対評価であることが大きな違いです。
配当利回りではなく株式益回りが適当
株式における配当利回りは、企業の意向次第である程度コントロールされてしまうため、株式リターンを求める数値としては微妙です。
配当利回りよりも、株式益回りのほうがより適当な指標だと思います。
株式益回りは、1株当たり純利益÷1株単価で求めることができ、ようするにPERの逆数です。
PER20倍の株なら株式益回りは5%という計算になります。
企業が稼ぎ出す利益こそ株式リターンの源泉ですので、純利益をベースに考えるのは自然です。
米国市場の長期平均PERは15倍前後だったので、株式益回りは約6.6%になります。
米国市場の長期実質リターン6.7%に近い数値になるのも偶然ではなさそうです。
よほどの不況でない限り、純利益の一部を配当金として出すのが基本ですので、ほとんどの時期で配当利回りよりも株式益回りのほうが大きくなります。
株式の長期リターンは6%前後ともいわれているのに、リターンの一部に過ぎない配当金だけで計算される配当利回りをベースに考えるのは不自然ではないか?という話です。
株式益回りを用いたほうが、株式VS債券等の比較をする上では適当だと思います。
ただし、PER同様株式益回りの数値は純利益に左右されるため、利益変動が激しい企業や地域の場合はブレ幅が大きくなるというデメリットもあります。
また、現在多くの先進国で低金利が続いているので、株式益回りと債券の利率に大きな差がついてしまうことが多いです。
機械的に株式益回りVS債券の利率で比較するなら、その結論はほとんどの場合株式(特に低PER株)に投資しろになってしまいます(笑)
また、この場合は債券の利率ではなく、元本の変動も考慮した債券利回りで比較するのがより適切ですね。
結局のところ、目に見える配当金や利息といったインカムゲインだけでなく、値上がり益(キャピタルゲイン)も考慮したトータルリターンで考える必要があるということです。
債券の利率VS配当利回り まとめ
つみ次郎の見解としては、債券の利率と比較するなら配当利回りではなく株式益回りのほうがまだマシだが、それでも前提条件が違いすぎて参考にならないのではという感じです。
その数値そのものを株式のアレコレに当てはめて答えを出すというのは難しそうです。
なので株式VS債券で直接比較するのではなく、それぞれ別々に割安度や魅力を評価していく必要があるのではないかと思います。
例えば、株式が割安と判断できる材料があるが、債券には特にないから株式を多めにする…といった感じです。
別々に集めた材料で、優劣を決めていくということですね。
ちなみにつみ次郎は、基本的に債券ゼロ・株式全力ですので、明らかに株式が割高かつ明らかに債券が割安という判断材料があった時のみ、債券への投資を検討するつもりです。
現時点ではどちらも割高という意見が多いので、株式100%ポートフォリオをしばらく維持していくつもりです。
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債券嫌いのつみ次郎