つみたてNISA恒久化と年金問題と金融庁
つみたて次郎です。
「年金2,000万円問題」で荒れに荒れている金融庁の報告書ですが、その件に関する鋭い考察がありましたので紹介します。
外部リンク…金融庁の報告書が実はとんでもない軽挙のワケ
いくつかポイントがあるので、項目ごとに分けてつみ次郎の感想を述べていきたいと思います。
金融機関と金融庁の共通点
金融庁報告書の中身を読んでいくと「公的年金だけだと不足する→NISAやiDeCoで資産形成」というおおまかな流れを感じることができますが、その誘導が金融機関のセールストークと似ているという指摘がされています。
一部引用します。
平均値を顧客に示したほうが生活費の不足に危機感を抱き、株を買ってくれそうな人たちが多くなるからである。中位値や最頻値を示していては、恐怖をあおって商品を販売するマーケティング手法が成り立たない。
これと同じ手法が、今回の金融庁の報告書で使われていた。この報告書を読んだFP(ファイナンシャルプランナー)など多くのお金のプロたちは、「なにこれ?こんな形で老後資産の不足を求めるのは、金融商品を販売するときのアプローチと同じじゃない」と思ったようである。
出典「東洋経済ONLINE」
これはまさにその通りで、結果として金融庁に対して不信感を抱くような人が増えてしまった大きな原因の1つであると思っています。
その一方、国民に対して投資を普及させようとするのであれば、ある意味仕方がないという側面もあると考えています。
誰かに投資を始めてもらうためには、次のどちらかのパターンでアプローチしていくのが分かりやすいです。
①投資で得られるリターンをアピールして、稼げた場合の成功事例を語る
極端な例…〇〇に投資すれば短期間で一攫千金!君も億万長者の仲間入り!
②投資をしなかった場合の暗い将来を語り、不安を煽る
極端な例…日本も年金も近い将来破綻する!円を海外資産に変えて財産を守ろう!
どちらかの要素がないと、投資に興味がない人を引き込むのは難しいのではないかと思います。
上記の文章だけ見ると悪徳業者の手口のように見えてしまいますが、大なり小なり様々なビジネスに関しても共通することですし、大事なのはその程度ではないかと思います。
極端に夢を語ったり不安を煽るのはもちろんダメですが、どこまでがOKでどこまでがOUTなのかの線引きはかなり難しいですね。
今回の金融庁報告書は(結果的に)②をベースにした組み立てということになってしまいましたが、どのような表現にすれば丸く収まったかと言われればかなり難しい話になりそうです。
少なくともつみ次郎は思いつかないです(笑)
元記事の通り、中位値や最頻値で表記していればマイルドな表現になりますが、今度は「中位値や最頻値って何?」という人も少なからず出てきてしまうので、多くの人が理解している「平均値」で数字を出したほうが自然な感じもします。
つみたてNISA恒久化の追い風
上記のようにやや強引な手法を金融庁が用いたとされる背景として、次のような見解が述べられています。
実は、あの報告書で最も大切なのは、「つみたてNISA については(中略)時限を撤廃し、恒久的な措置とすることが強く望まれる」という一文であった。というのも、あの報告書は、金融庁が財務省につみたてNISAの税制優遇を求めるためにまとめられた陳情書だったからである。
出典「東洋経済ONLINE」
「つみたてNISA恒久化」という要素についてつみ次郎はすっかり忘れていましたが、そのように考えるとかなりわかりやすいですね。
金融庁としては、NISAの必要性について訴えるはずが、結果として「年金が不足する」という部分に注目が集まってしまい、さらに悪い意味で目立ってしまうという最悪のシナリオだったといえます。
元記事では、報告書が炎上した理由の1つとして「現在の年金制度改革を無視した報告書を提出したから」という説明がされていますが、厳しく言えば金融庁の身勝手がもたらした結果ということもできそうです。
今回の失態で恒久化だけではなく、その他のつみたてNISA制度改良の道も大きく閉ざされてしまったといえるかもしれません。
つみ次郎が思いつくものも含めて、
・非課税期間を20年以上に延長
・非課税枠を年間40万円以上に増額
・条件スイッチングを可能にする
・未使用投資枠を繰り越し可能にする
などの改善案が考えられますが、このような話も今後は出しにくくなってしまうことが容易に想像できます。
個人的には年金問題なんかよりも、この件で金融庁の力が弱まり、投資家優遇政策が出にくくなってしまいそうなことを心配しています(泣)
つみたてNISAは高資産家向け?
全体を通して納得できる部分が多いですが、1か所だけ気になる点がありましたので引用します。
WPPの真ん中のP、プライベートペンションが幅と厚みを増してくれるためにも、つみたてNISAやiDeCoなどの充実は望ましいとは思う。ただし、詰めなければならない側面はいくつもある。
なぜ、老後資金を託す先が元本割れのおそれもある株式なのか、つみたてNISAは中所得者の利用もあるだろうが、この活用は、キャピタルゲイン課税が緩いとみなされているこの国で高資産家を一層優遇することにはならないか、老後の資産形成のために設けられているほかの税制優遇措置との整合性をどのように図るべきか等である。これらの問題はしっかりと議論されるべきであろう。
出典「東洋経済ONLINE」
このうち「高資産家を一層優遇することにはならないか」という部分についてです。
つみ次郎の見解としては、つみたてNISAは年間40万円までという比較的上限の低い制度なので、むしろ高資産家にとっては使いづらい制度ではないかと思っています。
なので分かりやすく考えれば投資可能額がちょうど年間40万円の人が最も有利になる制度という見方もできます。
高資産家優遇を避けたいのであれば、極端な話キャピタルゲイン課税強化+NISA制度強化を同時に進めていくことで、高資産家冷遇+その他優遇という状況を作ることができます。
ある意味では、金融所得に対する累進課税のような役割を果たすのがNISAやiDeCoのような非課税投資制度といえますね。
NISA制度を強化すると高資産家も有効活用できるのは事実ですが、せいぜいほんの少しリターンを改善できる程度の話です。
その一方、年間投資額が40万円前後な人にとっては、年平均リターンが1%くらい改善できるかもしれない素晴らしい制度となります。
参考記事…つみたてNISAの節税メリットは年間○%のリターン分に相当する
逆に言えば枠を使いきれない人は相対的に不利ともいえるので、現在の年間40万円というのは多すぎず少なすぎずの絶妙な額ではないかとつみ次郎は考えています。
国民の多くが無理なく投資できる額に合わせて非課税枠を設定するのが一番理想的ですからね。
なので年間投資額の引き上げ以外の制度改善については、積極的にやってほしいというのがつみ次郎の要望です。
余談ですが、年間上限額が120万円もある一般NISAは個人的に金持ち優遇政策だと思っています(辛辣)
元記事に戻りますが、「老後の資産形成のために設けられているほかの税制優遇措置との整合性」という視点が重要というのは完全に同意ですので、金融庁及び関連組織の利害関係を調整しつつ、良い着地点を見つけてもらいたいですね。
今後の金融庁の名誉挽回に期待したいところです。
最後に再度リンクを張っておきますので、併せてぜひ読んでいただければと思います。
外部リンク…金融庁の報告書が実はとんでもない軽挙のワケ
諸連絡
なろう系の主人公みたいな表情だなw pic.twitter.com/QnqtSkQkAd
— エスピーファイブ (@esupifive) 2019年6月29日
本記事のサムネ画像はこちらから拝借させていただきました。
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