米フィデリティが信託報酬0.00%のインデックスファンドを新規設定
つみたて次郎です。
資産運用会社大手である米フィデリティより、とんでもない投資信託が新規設定されました。
外部リンク「世界初!米国フィデリティが、年間経費率ゼロの『インデックスファンド』2本を設定!」
外部リンク「バンガード:他商品にしわ寄せされていないか?」
新しく登場した投資信託は以下の2本です。
・フィデリティ ZERO トータルマーケット・インデックスファンド(FZROX)
・フィデリティ ZERO インターナショナル・インデックスファンド(FZILX)
FZROXは米国株式全体・FZILXは米国外株式全体をカバーしているインデックスファンドで、組み合わせることでVTのような全世界株式インデックスを自作することができます。
ただし未上場のミューチュアルファンドなので、日本から投資することは今のところできません。
そしてこの2つの年間経費率は0%です。
いわゆる運用会社に支払う手数料が存在せず、信託報酬が全く発生しないということになります。
運用会社で保有している現物株を利用し貸株収入を得たりすることは可能ですが、通常は信託報酬が主な収入源となるので、ある意味タダでサービスを提供しているような状態です。
参考に、米バンガードが運用しているVTSAX(VTIの投資信託版)は信託報酬0.04%です。
米国株式市場全体に投資するインデックスファンドであり、FZROXと思いっきり競合する内容になります。
FZROXの信託報酬は0.00%ですので、当然ですがコスト面で優位に立っていることになります。
連動指数に大きな差がない限り、信託報酬の差はそのままリターンの差につながりますので、信託報酬0%というのは究極のインデックスファンドであるともいえます。
もしかしたら今後、信託報酬マイナス(=保有していると指数以上に儲かる可能性がある)なインデックスファンドが登場すれば話は別ですが、限りなく不可能でしょう。
そもそも信託報酬0%のインデックスファンド自体が、従来の常識では考えられない幻の金融商品でしたからね。
インデックスファンド業界では、熾烈な競争が繰り広げられています。
最近では、チャールズ・シュワブ(EXE-iシリーズでよく採用されている)や、スパイダーの超低コストETF(先日マネックス証券で取り扱い開始)などが信託報酬最安値を0.01%単位で競い合っています。
しかし信託報酬0.00%が相手では、コスト面で優位に立つことは出来ません。フィデリティはこの競争において、全く違うステージへ進んでしまったことになります。
その一方、低コストファンドの業界リーダーであるバンガード社が、フィデリティに対して興味深いコメントを残しています。
こうした商品が発売された時には、投資家はよく考えなければいけない。
『裏に何があるんだ?』
他の商品で他のことに課金されるようになるんじゃないかと疑うべきだ。
これは非常に強烈な指摘です。
信託報酬0%では、通常のサービスのみでは収入を得ることができず、通常であれば赤字覚悟の特売商品になってしまいます。(赤字どころか売上ゼロにもなりかねない)
通常のインデックスファンドであれば、最初が赤字であっても総資産額が積みあがることで徐々に黒字化していったり、バンガードの様に適切な経費率を設定していくことで、長期的にファンドを運用していくことが可能です。
しかし極端に信託報酬が低かったり、今回の様にそもそも0%であれば、単体でファンドを存続させていくことは不可能です。
フィデリティの思惑は分かりませんが、他商品の収益で本商品の赤字を補うという可能性が高いことを示唆しています。
そして赤字が続くような商品であれば、採算が取れないという理由でいつ繰上償還されてもおかしくありません。
あまりにムシの良すぎるサービスは、企業の方針1つで改悪・廃止されてしまうリスクを常に抱えることになります。
どこかで聞いたことがあるような説明ですが、三菱UFJ国際投信㈱が運用しているeMAXIS Slimシリーズとそっくりです。
eMAXIS Slimシリーズは、現状国内では各ジャンルの信託報酬最安値をキープしているため非常に人気がありますが、全く同じマザーファンドで運用していながら、割高な信託報酬で販売している投資信託が多数存在します。
例えば、先進国株式のインデックス指数である「MSCIコクサイ」をベンチマークとする商品だけでも同社から3種類販売されています。
ファンド名 | 信託報酬 |
eMAXIS Slim 先進国株式インデックス | 0.11772% |
つみたて先進国株式ファンド | 0.216% |
eMAXIS 先進国株式インデックス | 0.648% |
この3商品はほぼ同一の商品ですが、信託報酬だけが違っており、同じ商品を違う価格で販売しているような状態です。
身も蓋もない言い方をすれば、「Slimの低コストを維持するために他2つが犠牲になっている」ということになります。
おそらくですが、先進国株式含めeMAXIS Slimシリーズは単体で採算を取ることができず、赤字覚悟の客寄せ商品というポジションに過ぎないと考えています。(少なくとも現時点では)
その意味では、投資信託の長期的な存続という部分で大きなマイナスポイントです。
もっとも、三菱以外でも多くの運用会社で行われている手口であり、まだまだ国産の投資信託を全面的に信頼することができない理由でもあります。
投資信託が繰上償還されても直接損はしませんが、利益が出ていた場合はその時点で強制的に課税されますし、つみたてNISAや一般NISAで投資していた場合は、非課税投資枠が無駄になってしまうため、長期的に存続するファンドを選ぶというのは非常に重要なポイントです。
フィデリティと国産ファンドでは全く規模の違う話ではありますが、今後も似たようなことが繰り返されていくのかもしれません。
その意味では、外部株主が存在せず低コスト化が可能で、全商品に適切な信託報酬を設定することができるバンガードが、今後も最強であり続けるのかもしれません。
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フィデリティ次郎
凄い世界だ……。