ファクター投資と長期市場平均リターンの未来予想
シーゲル二郎です。
いつもお世話になっているサイト「the financial pointer」にて、シーゲル教授に関する興味深い記事が2つありましたので紹介します。
外部リンク…ゼロ取引コストのニュー・ノーマル
外部リンク…FANGアウトパフォーマンスは新パラダイムか
ちなみにこの2つの記事は直接関連していないのでバラバラに考察していきますが、併せて読んでいただくとシーゲル教授の見解に対する理解が深まるのではないかと思います。
今後の年6.7%のリターンは望めない?
シーゲル氏の著書「株式投資の未来」によれば、米国株の長期リターンは平均7%弱ほどになっていました。
ちなみにこの数値はインフレを考慮した実質リターンでの話です。
参考記事…投資期間とリターン
もちろんこの数値は米国経済が堅調に成長してきたことや、基軸通貨が米ドルであるなどの背景があってのことですが、米国以外の国でも株式の長期リターンというのは比較的安定しています。
投資のリターンは実際の成長率ではなく「予想と実際のギャップ」が生み出すので、見方を買えれば長期的に市場は7%のリターンが出るように株価を調整し続けてきたと考えることもできます。
記事中では、現在のPERが15倍、益回りに直すと約6.7%となり長期リターンに近い数値になることから話がスタートしています。
外部リンク…ゼロ取引コストのニュー・ノーマル
ちなみに益回りは株価に対する純利益の比率で、1株当たり純利益÷株価で求めることができます。
いわばPERの逆数なので、PER15倍の株なら益回りは100%÷15倍≒6.66…%となります。
仮に益回りが株式リターンに一致するなら話が早いですが、それならば低PER戦略が最強になってしまいますし、実際は利益成長率やインフレなどの要因が辛んで実質リターンは決定されるのでそう簡単な話ではありません。
シーゲル教授は、インデックス投資の普及とコスト低下が市場平均のリターンを押し下げる可能性があると指摘しています。
昔は低コストでインデックス投資できる人が存在しなかったため、7%の実質リターンを実際に得られた投資家は少なかったのではないかという推測がその大きな理由です。
現在はバンガード等の超低コストファンドに誰でも簡単にアクセスできる状況になったので、その分期待できる実質リターンは下がり、PERも過去平均より高めで推移する可能性があるということです。
また、つみ次郎の見解としては、インデックス含め投資に関する情報が広く普及していることも実質リターンを引き下げる原因になるのではないかと考えています。
株式が長期的に魅力な資産であるということが広く周知されれば、多少割高でも買われてしまいますからね。
また、記事中では債券が割高になっていることが指摘されていますが、元々シーゲル教授の主張は「よほど割高じゃなければ債券より株式の方がマシ」というものですので、皮肉にもこの主張が広く受け入れられるほど株式の優位性は小さくなってしまうかもしれません。
低コストなインデックスファンドの登場・株式への長期投資の有効性の周知というのは各投資家にとっては大きな進歩ですが、同時に市場全体のパイを縮小してしまったのかもしれません。
これからも年7%のリターンが続くという楽観的な予想は禁物ですね。
とはいえ、仮に市場平均リターンがどれだけ下がろうと常に平均点を取れるインデックス投資の優位性は不変ですし、実際に長期投資を継続できる人はほんの一握りであることを考えれば、過度に悲観する必要もなさそうです。
資本主義経済に基づく株式市場が存続する限り、大きく元本割れする可能性は低いと信じたいですね。
ファクター投資とFANG
もう1つの記事では、ファクター投資及びFANGに代表されるグロース株に関する見解がまとめられています。
外部リンク…FANGアウトパフォーマンスは新パラダイムか
おさらいですがFANGとはFacebook・Amazon・Netflix・Googleの4社のことですね。
その他にもFAAMGやGAFAなどのグループ分類がありますね。その中でもFANGは一番古いイメージですが、特に4社に絞った考察というわけではないので割愛します。
シーゲル教授は小型株効果を例に挙げ、特定のファクターのリターンにむらがあることを指摘しています。
特定のファクターが強い時期が続いても、やがては平均回帰する可能性が高いということですね。
なので明言はしていませんが、シーゲル教授は現時点でもFANG含むグロース株の好調が続くことに対しては懐疑的な立場であることが読み取れます。
過去の傾向をどこまで信じるか
グロース株というファクターに懐疑的な見方を示す一方、シーゲル教授が「株式投資の未来」で大きく取り上げているのは「バリュー」「高配当」といったファクター投資の有効性についてであり、見方によっては自分の首を絞めているようにも取れます。
記事元でも、次のような皮肉が述べられています。
市場全体のバリュエーションについては中央回帰しないと主張するシーゲル教授も、ファクターの話では中央回帰を示唆する。
まさに投資の不思議であり醍醐味だ。
出典「the financial pointer」
結局のところ、過去の傾向をどこまで信用するかという話になってくるのではないかと思います。
もし過去のデータをそのまま信じるならフィリップモリス(PM)に全力投資すればいいことになりますし、逆に全く信じないならそもそも投資をする上での手掛かりが一切なくなってしまいます。
少なくとも正しい答えはそのどちらでもなくその中間にあるはずですので、過去の傾向にどこまで未来予想を盛り込むかということにつきます。
過去をそのまま信じてもダメ、過去をまったく気にしないのもダメということですね。
今回のシーゲル教授の話をまとめると、次の2点に集約されるのではないかと思います。
・市場平均のバリュエーションについては理由があるから過去と違う結末になるかもしれない。
・グロース株の高リターンについては理由がないから過去と同じ結末になるかもしれない。
過去の傾向を信じるための根拠、あるいは過去の傾向を無視するための根拠が常に必要ということですね。
シーゲル教授の立場上、FANGが好調だと面白くないという理由も多少はありそうです(笑)
ちなみにつみ次郎自身は、どちらの話も納得できる理屈だと考えています。
実質リターンの見込みが他の投資対象より有効と判断するなら株式を中心としたポートフォリオを組めばいいだけですし、有効なファクターが存在すると思うなら属性を寄せていけばいいだけの話です。
逆に債券やREITなどを組み合わせたほうが有効だと考える人や、ファクター投資はマグレに過ぎないと考える人もいます。
このような人たちの話を両方聞いて、どの意見を取り入れるかが考えていくことが大切ですね。
ちなみにつみ次郎はかつて「シーゲル二郎」を名乗っていましたが、シーゲル教授のアドバイスのうち「国際分散」「セクター戦略」についてはポートフォリオに取り入れていません(笑)
無数に存在するデータや理論からどれを選び、過去と未来をどうつなぎ合わせるかが投資家の仕事ですからね。
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