コングロマリットディスカウントは悪いことなのか

つみたて次郎です。

今回はコングロマリットディスカウントについて解説していきます。

その前にコングロマリットとは、直接関連しない事業を多角的に展開する巨大複合企業のことです。

日本だとソフトバンクや楽天あたりが代表的で、M&Aを通じて他企業を買収し巨大化していくことが多いです。

コングロマリットは様々な方法で利益を得ることができるため、万が一どこかの部門が不調になっても他部門でカバーできるというメリットがあります。

その一方、部門数が多いため経営資源をうまく活用できなかったり、投資家が正しく企業価値を分析するのが難しいというデメリットがあります。

上記のデメリットによりコングロマリット企業の価値が低く見られてしまうことをコングロマリットディスカウントといいます。(ディスカウント=割引)

 

米国株だとゼネラルエレクトリックやスリーエムといった資本財セクター企業がコングロマリットの代表例とされることが多いですが、今回はヘルスケア企業として有名なジョンソン&ジョンソン(JNJ)を例に具体的なケースを考えていきます。

同社は大きく分けて下記の3部門が事業の柱になっています。

・医療機器部門
・製薬部門
・日用品部門

JNJの時価総額は2019年1月時点で約3,500億ドルになっていますが、もし仮にこの3部門が別々の会社として独立した場合、それぞれの時価総額の合計は3,500億ドルを超えるかもしれません。

つまり全ての部門を合計した額よりも別々の部門を合計したほうが価値が高いという試算結果が出れば、コングロマリットディスカウントにより過小評価されているという結論を出すことができます。

ただし実際に分離してみなければ本当にディスカウントされているかは分からないので、コングロマリットディスカウントという概念は絶対的なものではなく、経営者や投資家の分析によって判断される相対的なものになります。

 

 

コングロマリットディスカウントはコングロマリットという経営スタイルが原因で発生するものですが、理由を大きく分けると次の3つになります。

①利益率の高い優秀な部門が生み出した利益を利益率の低い粗末な部門が食いつぶしてしまう。
②事業の幅が広すぎるため、投資家が正しく企業分析するのが困難。
③事業の分散は投資家が分散投資をすれば達成できるため、各企業は自社の強みを伸ばせばいい。

基本的に上記のデメリット面を強調されることが多く、コングロマリットという言葉はあまり良い意味では使われていない印象です。

上記を解消するために行われるのが「選択と集中」であり、多角化ではなく自社の強みに特化するような経営方針のことを言います。

バークシャー・ハサウェイ(BRK.B)のCEOのウォーレン・バフェット氏も「理解できないものには投資しない」という方針を掲げコングロマリットへの投資は消極的です(皮肉にもバークシャー自身はコングロマリット企業ですが)

 

上記のうち①はぐうの根も出ない理由ですが、②については反論の余地があります。

事業が広すぎて評価できないから割安ということは、本来の企業価値からみて割安で放置され続けている可能性があります。

仮にずっと割安で放置され続けているのであれば配当金再投資によって株数を増やすことが可能ですし、将来的に評価されることになれば大きなリターンを得ることができます。

参考記事…株を半額で買える権利

また、本当にコングロマリットディスカウントが理由で株価が低いのであれば、企業分割によってリターンを得ることもできます。

 

コングロマリットディスカウントは株価が過小評価される要因なので、経営者にとっては全く歓迎できない現象です。

その一方、株式を保有する株主にとっては下記のようなメリットが存在するため、一概に悪い現象ともいえないような気がします。

①企業分割によるプレミアムが期待できる
②割安な評価なら配当金再投資が捗る

ディスカウントが解消されればプレミアムを得られるし、そうでなくても割安で放置され続けること自体に大きな価値があります。

1960年代の米国ではM&Aブームが発生し、積極的に買収を行って巨大化するコングロマリット企業が高く評価されていました。

ディスカウントではなく、むしろコングロマリットであることがプレミアムにつながる時代だったといえそうです。

しかし会計上のテクニック駆使してPERをよく見せるという手口が横行していて、企業価値とはかけ離れた株高が演出されていたというオチがついています。

そんなコングロマリット黄金時代を経て現在、コングロマリットという言葉は無計画な多角化という悪い意味で使われることが多く、あまり良いイメージはありません。

逆にコングロマリットに対する低い期待がコングロマリットディスカウントを生み出すことで、将来のリターン向上につながるかもしれません。

本件に限らず、特定の理由で割引されがちな資産というのは魅力的に見えてしまいますね。

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コングロマリット次郎

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