「長期投資のワナ ほったらかし投資では儲かりっこない」を読んだ感想【書評】
つみたて次郎です。
セゾン投信㈱の社長である中野晴啓氏(以下:中野社長)が書いた「長期投資のワナ ほったらかし投資では儲かりっこない」を読んだので感想文です。
写真の真ん中の本です。右に行くほどネガティブな感じがします(笑)
左右に並べた本についても感想文を以前書いていますのでよろしければご覧ください。
参考記事…投資なんか、おやめなさい
タイトルには「ワナ」「儲かりっこない」というフレーズが使われており、一見長期投資に否定的な本のように見えます。
しかし著者である中野社長はセゾン投信の経営者であり、同社はインデックスファンドを用いた長期・分散・積立投資を広く推奨している立場です。
セゾン投信について知っている方であれば、タイトルに違和感を覚えるのではないかと思います(つみ次郎含め)
なんとなく予想はつきましたが、長期投資を根元から否定しているような内容ではなく、長期投資における疑問点や注意事項についてまとめたような内容になっています。
中野社長とセゾン投信について
セゾン投信は直販系の投資信託運用会社で、代表的な商品はセゾン・バンガード・グローバルバランスファンドやセゾン資産形成の達人ファンドなどがあります。
特に前者は国内におけるインデックスファンドの先駆けといえる存在であり、インデックス投資クラスタでも根強い人気を誇ります。
信託報酬は今となっては少し割高な0.60±0.02%となっていますが、株式と債券ずつを半分というバランスや、時価総額に基づいたセオリーなパッシブ運用というのはまさにインデックスファンドの基本形とも呼べる内容になっています。
中野社長は「積立王子」という愛称で呼ばれており、セゾン投信の顔ともいえる人物です。
バイアンドホールドに対する見解
セゾン投信では長期積立投資を推奨しており、実質的にバイアンドホールド(継続的な買い持ち)も推奨していることになります。
しかし本書では、長期投資=バイアンドホールドとは限らないというのが前提になっています。
最初のほうでは、アクティブファンドであるさわかみファンドのファンドマネージャー、澤上篤人氏との会話をもとにした長期投資の在り方について述べられています。
一部引用します。
投資対象に対する信頼感が不変であれば、いくら長期投資のファンドといっても、買いたい株価に落ち着いたら買い、想定している株価よりも極端に上昇したら売却して、繰り返し利益を確定させるのは真っ当なアプローチです。
引用「長期投資のワナ ほったらかし投資では儲かりっこない」
文中に登場する「長期投資のファンド」というのは顧客側ではなく運用者側から見た表現ですので注意。
長期投資=常に持ち続けるではないという、当たり前ですが見落としがちなポイントについてまとめられています。
その一方、投資信託の場合は①基準価格には適正価格の割安割高が存在しない、②リバランス等の運用管理を行うファンドマネージャーが内部にいるという2つの理由から、売ったり買ったりを繰り返すのはナンセンスだと評価しています。
個別株投資と投資信託ではそもそものスタイルが異なっているということですね。
ドルコスト平均法に対する見解
みんな大好きドルコスト平均法ですが、積立王子だからといって強く推奨しているわけではなく、「私自身もドルコスト平均法が万能だとは思っていません。」と述べられています。
それを前提として、「自分の買値がいくらか分かりにくくなる」という点をメリットの1つとして挙げています。
買値がハッキリしていなければ、余計な売買で失敗する可能性も低くなるという理屈です。
精神的なメリットに過ぎませんが、無視できない要素ではないかと思います。
ドルコスト平均法含め積立投資に対するまとめとして、次のように述べられています。
特に資産運用になれていない人が、長期投資を始めようとする場合、まず考えるべきは長期にわたって続けられる仕掛けを考えることです。これなら、長期で積立を続けるモチベーションにもつながると思うのですが、いかがでしょうか。
引用「長期投資のワナ ほったらかし投資では儲かりっこない」
見落とされがちですが、とても重要な考え方だと思います。積立投資はそれ自体がメリットというよりも、投資を半自動化して継続しやすくするためのルールであるとつみ次郎は考えています。
セゾン投信の話がほとんどでてこない
中野社長の本を読むのは初めてでしたが、最後のほうにはセゾン・バンガード・グローバルバランスファンドの宣伝が載っていると勝手に思っていました(笑)
しかしほとんどセゾン投信の商品に関するページはなく、良い意味で裏切られました。
もしつみ次郎が書くとしたら、最後の1章丸々使ってセゾン・バンガード・グローバルバランスファンドとかをガッツリ宣伝すると思います(笑)
本の内容を考えると、具体的な投資商品として積極的にアプローチしていても良かったと思えるほどです。
珍しい立ち位置の投資本
長期投資を全力で肯定するわけでも否定するわけでもなく、珍しい立ち位置から書かれた本という印象です。
もちろん全体的に見れば長期投資に肯定的な内容が多いですが、タイトル通り長期投資のワナについてまとめられた本であることには間違いありません。
インデックス投資に関する内容が多いかなと思いましたが、結構幅広いテーマについて語られていました。
特に面白かった項目のタイトルだけ紹介します。
・10年持っても長期投資とは言わない
・バリュートラップに気をつけろ!
・マイナーなインデックスは無意味
・インデックスの気持ち悪さ
・得意ジャンルが分かれるFP
タイトルだけで中身が何となく予想できたらなかなかの投資マニアかもしれません。
真相はあなたの目で確かめてください(よくあるフレーズ)
本書全体として説明されている内容自体はごくありふれたものでしたが、中野社長の考え方は中立的で納得させられる部分も多く、勉強になりました。
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