今回は、ローパー・テクノロジーズ(ROP)を分析していきます。
連続増配歴は25年となり、2018年から米国配当貴族指数として採用されています。資本財セクターに分類されています。
事業範囲は多岐にわたり、CCD検出器・電子顕微鏡などの工業機器が中心となっています。
多くのニッチ市場でトップを取っているコングロマリットであり、なんとなくスリーエム(MMM)を思い出しました(時価総額は5分の1程度ですが)
アセットライトビジネス(最小限の資産保有による効率的な運営形態)を基本としており、利益率やキャッシュフローを重視した経営戦略をとっています。
売上のほとんどは米国内で稼いでいます。
資本財セクターながら、リーマンショックでの影響は軽微です。
アセットライトビジネス戦略により、投資CFは最小限になっています。とても美しいキャッシュフローです。
2017年における配当性向は11%と低めになっています。
資産をあまり持たない割には自己資本比率はそこそこあり意外です。
過去10年の株価チャートはこのようになっています。
現時点情報(2018/3/13)
株価…281.66ドル
予想PER…30.89倍
配当利回り…0.58%
連続増配…25年
S&P500と比較すると、とても良いリターンを叩き出しています。
PERは30倍を超えておりやや割高です。そして配当利回りが非常に低いです(笑)
事業形態や経営戦略などはとても素晴らしいですが、配当貴族のメンバーと考えると微妙ですね。
基本的に連続増配によるスクリーニングは、ある程度配当性向が高くないと効果半減です(簡単に達成できてしまうため)
参考記事「配当性向は高いほうがいい」
1つの株と見ればとても素晴らしいと思いますが、配当貴族の一員として迎え入れるには複雑な心境です。
以前も述べましたが、配当貴族=成熟バリュー株ではない点には注意しましょう。
]]>今回は、バンガード・米国資本財・サービス・セクター(VIS)分析を分析していきます。
セクターETFの1つで、資本財セクター全体に投資できるETFです。
バンガード・米国資本財・サービス・セクターETF (2017/3/31現在)
項目 | データ |
信託報酬 | 0.10% |
銘柄数 | 346 |
PER | 23.9倍 |
PBR | 4.1倍 |
ROE | 18.3% |
利益成長率 | 5.3% |
売買回転率 | 8.3% |
標準偏差 | 12.75% |
特筆すべきは、標準偏差の高さです。同じ時期のS&P500は10.41%だったので、かなり変動幅が大きいETFだといえます。
S&P500との比較チャートです。リーマンショックではVISのほうが大きくへこんでいますね。その後も、下落するときは大きく、上昇するときも大きい典型的な景気敏感株の動きになっています。
資本財セクターが含まれる企業は、主に次の通りです。(2017/3/31現在)
業種 | 構成比率 |
航空宇宙・防衛 | 19.8% |
コングロマリット | 18.7% |
産業機械 | 10.4% |
その他 | 51.1% |
その他には、鉄道・輸送・部品製造などが含まれています。基本的には製造業が多いように見えます。資本財は、企業が利益を上げるために必要な財のことです。基本的には企業が商売相手のBtoBがほとんどです。
BtoB企業は、ブランドを生かしずらく、利益率が低くなりがちです。
参考記事「BtoB < BtoC」
上位10銘柄は、次の通りです。
順位 | 会社名 | 構成比率 |
1位 | ゼネラル・エレクトリック | 9.9% |
2位 | スリーエム | 4.3% |
3位 | ザ・ボーイング | 3.9% |
4位 | ハネウェル・インターナショナル | 3.4% |
5位 | ユナイテッド・テクノロジーズ | 3.3% |
6位 | ユニオン・パシフィック | 3.3% |
7位 | ユナイテッド・パーセル・サービス | 2.8% |
8位 | ロッキード・マーチン | 2.7% |
9位 | キャタピラー | 2.0% |
10位 | フェデックス | 1.9% |
上位10銘柄合計 | 37.5% |
シーゲル二郎が大好きなコングロマリットが多く含まれています。製造業の「モノづくり」企業が多いので、実体経済で本当に役立っている企業ばかりです。いくらサービス業やIT技術が発展しようと、生活を陰で支えているのはいつも製造業ですね(達観)
1位は堂々のゼネラルエレクトリック(笑)です。
資本財セクターは、BtoBでもイメージしやすい企業ばかりです。
エンジン・飛行機・戦闘機・建設機械・戦車
漢のロマンが詰まったセクターといえます。
これらの売れ行きは企業の設備投資に連動するので、不況では落ち込み、好況ではうなぎ登りの景気敏感株が非常に多くなっています。標準偏差が高いのもそのせいでしょう。
資本財セクターは、過去の米国セクター別リターンでは、平均を下回っていた悔しい思い出があります。大きな理由としては、当時から現在まで一番幅を利かしているゼネラル・エレクトリックが、PER40倍越えのプチバブルではじけてしまったからです。他には、当初は大きなウェイトを占めていた航空企業が、競争でボコボコに潰れていったからです。
全体的に配当性向も低めで、配当利回りもあまり高くはありません。
景気敏感株・低い平均利回り・過去の実績と3点揃ってポンコツセクターであり、長期投資家からの人気は低いです。
唯一褒められるのは、連続増配企業が多く存在することです。シーゲル二郎が投資している米国配当貴族指数でもセクター別で最も高い割合になっています。
また、NYダウ(ダウ工業平均株価)でも、もともと工業株を中心とした名残で資本財セクター比率が高めになっています。
シーゲル二郎が米国配当貴族指数とNYダウに集中投資しているのも、資本財セクターに投資したい漢の本能が出ているからもしれません(笑)
]]>今回は、ハネウェル・インターナショナル(HON)を分析していきます。
航空エンジンなどを中心とした産業コングロマリットです。
連続増配…6年
S&P格付…A
採用インデックス
・S&P100
・S&P500
資本財セクターに分類されています。資本財の大型株の多くは、NYダウに採用されていますが、このハネウェルは採用されていないので、かなり地味な存在です。(NYダウはもともと工業株の平均だったので資本財の比率が高い)
こう聞くと地味ですが、他企業に負けず劣らずの優良企業ですので紹介していきます。
ハネウェル・インターナショナル(HON)は、宇宙航空を中心とした産業コングロマリットで、業種は非常に幅広いです。
NYダウ銘柄のユナイテッド・テクノロジーズ(UTX)に似たビジネスモデルです。
2016年には、似ているUTXと合併して事業拡大する目論見もありましたが、拒否されて失敗しています。
宇宙航空・・・航空機エンジン製造など。
住宅ビル・・・建物の部品等の製造など。
特殊素材・・・石油精製・化学製品製造、バイオ燃料開発など。
安全装置・・・産業機械や乗用車の安全向上製品など。
事業内容は多岐に渡ります。典型的なコングロマリットであり、ハネウェルの事業を一言で言い表すことはできません。
「インターナショナル」とついてはいますが、海外売上比率は50%未満です。とはいえ4割以上はありますから、及第点です。
2009年にへこんでいますが、その後は回復しています。今後の業績は横ばいです。
リーマンショック中でもフリーCFは横ばいで安定していました。
営業CFマージンは12%前後で推移していて、ユナイテッド・テクノロジーズと同じ水準です。投資CFは少なくなっていて、フリーCFも安定して得ることができています。
2011年の減少理由は分かりませんでした。同年の出来事では、ハネウェルがロビー活動費を利用して脱税をしていたという指摘があり、その関係だと思われます。
2010年に配当据え置きなので、連続増配記録は6年しかありません。公式ホームページで調べたところ、2002年から減配歴がないことが確認できたので、少なくとも14年間は安定した配当金が払われていたようです。
会社の方針として、利益の50%を株主還元、残り50%をM&Aに使うことを目標としているので、配当性向が50%を超えることはないでしょう。そのため、今後も増配率はあまり期待できないかもしれません。
シーゲル派にとっては株主還元100%が好まれますが、M&Aによる生き残り戦略も同じくらい大事だと思っています。50:50なら許容できる配分です。
自己資本比率は35%と低めですが、フリーCFを考えれば問題ないです。ROEは25%を超えており、優秀です。
現時情報(2017/9/23)
株価…141.75ドル
PER…19.27倍
配当利回り…1.88%
連続増配…6年
株価は右肩上がりで、PER、配当利回りから見ると魅力はありません。他の資本財セクター同様、トランプ相場により米国内での活躍が期待されているようです。
総合的に特徴がないのが特徴です。
資本財・コングロマリット・低配当・連続増配歴短い・非NYダウということで、あらゆる長期投資家のスクリーニングから外される悲しい銘柄です。
ですが、利益もフリーCFもそこそこ安定していて、創業1920年の歴史ある大手企業なので、今後永続する企業となる可能性は高いでしょう。
このキャッシュフローを見よ
シーゲル二郎はコングロマリット大好き人間なので、このハネウェル・インターナショナルも有力な銘柄だと思っています。
あらゆる面で地味なので、ひっそりと暴落する場面があれば拾っておくと救われそうです。
参考記事「コングロマリットが高いリターンをもたらす理由」
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今回は、ゼネラル・エレクトリック(GE)を分析していきます。
発明家エジソンが創った会社であり、世界最大のコングロマリットです。
連続増配…0年
S&P格付…AA-
採用インデックス
・NYダウ
・S&Pグローバル100
・S&P500
NYダウに採用されており、当初1896年から唯一現在も残っている老舗優良企業です。
非常に幅広く展開しているコングロマリットの代表であり、資本財セクター全体でも時価総額最大の超巨大企業です。1980年代には敏腕CEOのジャック・ウェルチ氏によるリストラ、事業買収を中心とした戦略で急成長を遂げました。「世界で1位か2位でなければ撤退する」という考えは、現在米国企業の合言葉ともいえる「選択と集中」という経営理念に生かされています。
さて、シーゲル二郎お気に入りのコングロマリットで、なおかつ最大なわけですから、さぞ素晴らしい企業なんでしょう(フリ)
選択と集中により事業内容は世界1位か2位のものだけです。(実際は知らんけど)
それでこれだけ多彩な事業ポートフォリオを組めるのですから、いかにゼネラルエレクトリックが巨大であるかが分かります。
特に航空エンジンは、世界3大エンジンメーカーの1つであり、残りはプラット&ホイットニーとロールスロイスです。
医療機器は、世界№1のジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ)に次ぐ規模です。
もともとはエジソンが発明した照明器具を中心とした家電メーカーでしたが、2016年に中国のハイアールに売却しています。
シーゲル二郎の住んでいる家具付きアパートの冷蔵庫と洗濯機はハイアールでした(泣)
現在の中心は、発電所などのインフラ事業関連を強化しているようで、重工業を中心にシフトしていく方針です。
多国籍展開もばっちりです。BtoBが中心なので、知名度はあまり?ありませんが、生活に欠かせない機械を製造しています。
比較的なだらかですが、リーマンショックでだいぶやられています。もともとGEキャピタルという金融部門を持っており、自社製品のリース契約から関係ない消費者金融まで幅広く手をだしていました。
リーマンショック前は、利益ベースで4割ほどを生み出す稼ぎ頭でしたが、その後はお察しください。GEキャピタルの撤退を2015年に決定しており、そのため同年は赤字になっているようです。
直近はマイナスになっていますが、金融部門の再編と原油安によるものかと思うので、今後は安定するでしょう。営業CFマージンは最近を除けば25%にせまる迫る勢いで、製造業?としては驚異的です。
リーマンショックで減配しており、元の水準には戻っていません。リーマンショック前後で大きな違いです。稼ぎ頭のGEキャピタルがいなくなったので、今後戻るまで時間がかかりそうです。
自己資本比率は20%と低めです。今後のフリーCFが安定しないと危険な領域です。
現時情報(2017/9/7)
株価…24.92ドル
PER28.56倍
配当利回り…3.85%
連続増配…0年
1株あたりの株価が24.92ドルと非常に低いので、巨大企業でありながらNYダウの構成比率は1%を切っています。NYダウなんて時代遅れの指数ですね。
最近の赤字やグダグダがあり、配当利回りは4%近くあり割安といえます。
いろいろとみてきましたが、はっきり言って難しい株です。いいところと悪いところがはっきりしすぎています。
まず、創業は1892年の老舗であり、すぐにNYダウに採用され、現在に至ります。しかし、途中で何回も外されているし、そもそも当時の家電製品部門を売却しているので、よく見かける「当初から採用されている唯一の企業」という肩書はあってないみたいなものです。
また、営業CFマージンは20%を超えていて立派ですが、利益率の高い金融部門を切り離したので、今後どのような数字になるのか不明です。自己資本比率も低くて不安です。
また、配当金もリーマンショックで切れてしまっているので、連続増配の意識も確実に減っているでしょう。
いろいろとありますが、やはり一番はGEキャピタルを抱えていたことです。ゼネラルエレクトリックは「選択と集中」という言葉を生み出したにもかかわらず、高収益に目がくらみ金融に手を出してしまったということです。
もちろん時代ごとに儲かる事業は違うので、多角化するのは間違っていませんが、利益の半分近くを依存するのは間違っています。金融業ばっかりやってるソニーとかも同類です。
本当に何でも手を出すのはコングロマリットではありません。あくまで自社の強みが生かせる分野に限定して、なおかつ多角化していくのがコングロマリットの極意です。(偉そうにすいません。)
つまり、ゼネラルエレクトリックは、コングロマリットの道を踏み外したまさに外道であり、前科持ちであるといえます。
とはいえ、圧倒的事業規模、ブランド力、技術力は素晴らしいです。金融部門、さらには元祖である家電部門の売却による、本当の「選択と集中」が今後拝めると思うと心躍りますね。
言わばいい子がグレてヤンチャしたけど、改心しようとしているところです。今後の業績は期待できるのではないでしょうか。株価も割安なので、仕込んでおくと長期で報われそうです。
長々と書きましたが、腐っても優良企業ですので、みなさんどうかよろしくお願いします。
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今回は、ボーイング(BA)を分析していきます。
2大飛行機メーカーの1つです。名前でピンとくる人も多いと思います。
連続増配…5年
S&P格付…A
採用インデックス
・NYダウ
・S&P500
2大航空機メーカーです。欧米ボーイング VS 欧州エアバスという図式になっています。エアバスは、ボーイングの独占を危惧してフランスとドイツ企業が共同出資して設立されたという歴史があります。大型航空機はこの2社でほど独占されており、シェアはほぼ半分ずつで、順位もしょっちゅう入れ替わっています。
また、政治的にも、ボーイングはアメリカ政府と、エアバスは各ヨーロッパ政府とつながりが強いです。そのため、この2社は犬猿の仲といってもいいでしょう。
ボーイング777です。飛行機好きはもちろん、一般の方でもボーイングという言葉から飛行機が連想できるのではないでしょうか。
事業内容としては、民間旅客機が中心ですが、戦闘機などの軍用機も製造しており、軍需企業としての側面もあります。そのため、アメリカ政府とのつながりも深いです。しかし、最近では利益率の高い民間機への集中を進めているようです。
売上先地域も分散しています。ボーイングとエアバスしか企業が存在しないので当然ですが。
リーマンショックでの落ち込みは激しいです。しかし、その後は横ばいであり、意外に安定している印象です。
こちらもリーマンショックでは営業CFがマイナスですが、2012年からはいつもの日常を取り戻したようです。きれいに右肩上がりです。営業CFマージンは10%前後であり、高収益とはいえません。
2011年には減配しなかったものの増配はなしで据え置きでした。そのため連続増配は5年ですが、配当金の安定性は問題ありません。意外とリーマンショックでも配当性向100%超えていないのが驚きでした。
リーマンショック以降ROEが激減していますが、自己資本比率が低すぎるゆえの問題なので、ROEは無視してもいいでしょう。自己資本比率は、フリーCFのバラツキを考えると危険な水準です。従業員への企業年金支払いが大きな負担になっているようです。
一度破綻したゼネラルモータズも企業年金の負担が原因の1つだったので、少し不安が残ります。しかし、こちらはシェアを奪われてボロ負けという可能性は低いので、大丈夫でしょう。 多分ね…
現時情報(2017/9/7)
株価…234.62ドル
PER…20.54倍
配当利回り…2.42%
連続増配…5年
景気敏感株であり、最近のトランプ相場で上昇しています。配当利回りも少し前まで3.5%ほどあったので、魅力はありません。
全体を通した印象としては、意外と業績が安定しているなといったところです。ただ、リーマンショックでがっつりへこんでいるのは思った通りです。ようするに、平時は問題ないが、緊急時に役に立たないということです。某漫画の格言を思い出します。
航空機も頻繁に買い換えるものではないので、不況ではしっかり落ち込みます。また、電車やバスなどの公共機関と違って、飛行機は旅行や出張で使われることが多く、不景気では利用者も減ってしまいます。そのため、典型的な景気敏感株といえます。
景気敏感株の中では安定感抜群なので、長期投資でも毛嫌いせずポートフォリオに入れてみてもいいのではないでしょうか。直近10年では赤字を出していませんし、配当性向は一度も100%を超えていませんから、どこぞの石油企業よりも安定性は高いですよ。
シーゲル二郎的にもつかむタイミングさえ間違えなければ、十分な優良企業かと思います。ただし、現在は絶好調なので、今買ってはいけないと思います。第2のリーマンショックが起きるまでは我慢です。
]]>今回は、キャタピラー(CAT)を分析していきます。
建設重機で世界シェア1位の巨人です。
連続増配…23年?
S&P格付…A
採用インデックス
・NYダウ
・S&Pグローバル100
・S&P500
事業内容は猫も芋虫も関係ありません。ショベルカー、ブルドーザーなどの建設重機で世界1位です。いわゆる「働く車」を製造しています。
建設現場でよく見かけると思います。男のロマンですよね。ちなみに世界シェア2位は日本の小松製作所で、この2社で大きなシェアを握っている寡占市場です。
日本では、青いマークの「KOMATSU」のほうが有名ですね。日本企業にしては珍しく、海外展開に積極的で、特にアジア地域に強みがあります。品質の良さに定評があり、高収益企業でも有名です。上記のキャタピラーに負けず劣らずの優良企業で、数少ない投資に値する日本企業株といえます。
1位のキャタピラーと2位のコマツが圧倒的シェアを握っています。現在、コマツがキャタピラーのシェアを少しずつ奪っており、珍しく米国企業が追い詰められているパターンです。キャタピラーは北米に強く、コマツはアジアに強いと棲み分けがされています。
建設現場で作る機械のほかに、石油や鉱山を掘るため重機も製造しています。見た目は工事現場のやつと同じですが、サイズが桁違いに大きいです。タイヤが人の背丈の何倍もあったりして、まさに漢のロマンです。また、機械が故障してしまうと作業に支障が出てしまうので、予備部品の保管やアフターフォローが欠かせず、販売してすぐ終わりという商売ではありません。
キャタピラーは手厚いサポートで信頼を得ており、ブランド力を磨き続けてきました。創業1925年の老舗企業で、今後も繁栄していくのではないでしょうか。
全体で見れば大型重機製造業がほとんどで、みんなのイメージ通りのコテコテの資本財セクター企業です。
あくまで北米がメインですが、多国籍展開も十分できています。アジア太平洋の行方が今後のキャタピラーVSコマツの勝負を決めるでしょう。
リーマンショックで利益激減の典型的な景気敏感株です。売上は右肩下がりで減少中で、2016年は若干の赤字になってしまいました。今後はトランプ大統領のインフラ事業拡大により業績は期待されています。
営業CFマージンは直近では15%近くあり、収益性は十分高いです。しかし、重機は単価が高いため、安定して買われるものではありません。また、エネルギーや鉱山資源の価格が高い時は掘りたい企業が多いのでよく売れますが、逆に価格が安いとには誰も買わなくなってしまいます。
景気変動による振れ幅が大きいのは要注意です。
2016年は赤字です。利益もバラバラです。2013年に減配しているように見えますが、キャタピラー公式ホームページでは23年連続増配となっていたので、グラフが間違っている可能性が高いです。グラフのデータ元はモーニングスター社です。
外部リンク「Caterpillar」
外部リンク「morningstar」
配当金は無視するとして、利益のバラツキが激しく、投資タイミングを間違えるとヤケドしそうですね。
自己資本比率が20%しかなく、意外と低い印象です。ROEはお察しください。
現時情報(2017/9/8)
株価…117.77ドル
PER…27.87倍
配当利回り…2.65%
連続増配…23年?
PERは27倍越えと高めです。配当利回りは約2.7%と標準的ですが、トランプ相場前では4%を超えていたので魅力はありません。直近では大きく右肩上がりであり、今買うべき株ではありません。NYダウの中ではトップクラスに価格変動が激しい難しい株です。
建設や資源開発は、今後新興国の発展のために必要であり、先進国であっても需要はなくなりません。世界中の土地に建物が建ってすべての資源が掘られるなんてことは我々の生きているうちにはないでしょうから、そういった意味では安泰の業界です。
特に資源開発に使うほうはサイズが異常にでかく、部品一つ作るのにも運ぶのにも莫大なコストがかかります。そのため、現時点ではキャタピラーとコマツの独壇場といってもいいです。業界そのものは古臭いですが、IT技術を駆使し、世界中で稼働している機械の場所を調べたり、ローンが未払いの機会を動かないようにしたりといった技術も取り入れられており、機械もどんどん進化しています。
日本の小松製作所は、最近までROEが10%を超えていたり、海外売上比率が8割近いといった、日本に多く存在するポンコツ企業とは一線を画した優良多国籍企業です。そのため、キャタピラーは若干劣勢ではあります。しかし、2社による寡占市場であるので、競争は緩やかでしょう。
問題は、新興国の景気や、石油や鉱山資源の価格です。景気が悪ければ建物が建てられないので、機械も必要ないし、資源価格が安ければだれも掘らないので同じく売れません。これは、コマツも同様であり、2社はライバルというより運命共同体といったほうが正しいかもしれません。重機の需要が全てです。
原油安で苦しんでいた、トランプ相場前の時が絶好の買い場でした。一般的には、キャタピラーのような株は長期投資に向いておらず、不況に仕込んで好況に売る短期投資が向いていると思われています。しかし、みんながそう思っていれば長期投資でも報われるかもしれません。短期投資家が多いということは不況の時の下支えがないので、企業価値より下落する可能性は高いです。そのため、下落した時にがっちりつかんで離さないという方法でも十分なリターンを得られると思います。キャタピラーのような市場を支配している老舗企業であればなおさらです。
総合的にクセは強いですが、NYダウに相応しい優良企業です。あと2年で連続増配25年なので、貴族の資格も得ます。データはあまり褒められませんが、ビジネス内容が好きな企業なので、早く椅子に座ってほしいです。もちろん減配したら即切り捨てますが。
]]>今回は、ユナイテッド・テクノロジーズ(UTX)を分析していきます。
重工業を中心としたコングロマリットです。
連続増配…23年
S&P格付…A-
採用インデックス
・NYダウ
・S&Pグローバル100
・S&P500
連続増配は23年で、貴族の資格はもうすぐです。NYダウに採用される巨大企業で、典型的なコングロマリットです。
日本では、あまり馴染みがありませんが、エレベーターや航空システムで世界トップです。
空調・セキュリティ…火災安全、セキュリティ、ビルオートメーション、暖房、換気、空調、冷凍システムなど。
航空機エンジン…傘下のプラット&ホイットニー社が担当。世界3大航空エンジンメーカーの1つ。
航空システム…ほぼすべての航空システムに採用されている。
エレベーター…傘下のオーチス社が担当。世界トップシェア
4部門バランスよく事業展開しています。他のコングロマリット比べて、なんとなくイメージしやすいですね。ヘリコプター事業も行っていましたが、2015年にロッキード・マーチン(LMT)に売却しており、当然のように選択と集中が行われています。
「ユナイテッド」と名がついていますが、事業展開は世界各国に渡る正真正銘の多国籍企業です。
利益率はあまり高くありませんが、売上、利益ともに安定していて美しいです。取扱商品の単価が非常に高いので、景気の波に左右されそうですが、リーマンショックでも影響は少なかったです。
2016年の減少は不明ですが、利益は横ばい予想なので、多分一時的かと思います(適当)
それ以外は、投資CFが意外とぶれていますが、フリーCFだけで見ると安定しており、利益に応じて設備投資を調整しているようです。
営業CFマージンは12%前後で推移しており、高収益ではありませんが安定しています。
配当性向は50%を切っており、利益も横ばいで美しいです。最近は自社株買いにも積極的のようです。
退屈な横線で、素晴らしいです。自己資本比率は30%ほどと高くはありませんが、キャッシュフローの安定を考えれば上出来です。
現時情報(2017/9/2)
株価…117.92ドル
PER…18.05倍
配当利回り…2.37%
連続増配…23年
利益やキャッシュフローは安定的ですが、株価は波があります。PERや配当利回りは標準的で、面白くありません。
さて、シーゲル二郎お気に入り銘柄の1つです。(投資はしてないけど)
事業内容は重工業なので、消耗品とは正反対ともいえる事業です。そのため、バフェット派からは嫌われています。また、「資本を食う豚」と比喩された資本財セクターなので、シーゲル派からも嫌われます。
しかし、キャッシュフローを見ると、たいして設備投資がかかっているわけでもないし、不景気時の落ち込みもかなり緩やかです。
シーゲル二郎はコングロマリット大好き人間なので、バイアスがかかっていると思いますが、それを踏まえてもこのユナイテッド・テクノロジーズは、決して高収益ではありませんが、今後何十年も永続する企業の筆頭ではないでしょうか。
配当金や自社株買いなどの株主還元も十分積極的ですし、株価もやや割安といえます。長期投資で報われるのはこういった地味な企業なのではないでしょうか。
余談ですが、妄想記事「シーゲル二郎10種」を考えていた際に、すっかり忘れていたくらい陰の薄い企業です(笑)
あと2年で配当貴族の資格を得ます。早く椅子に座ってほしい超優良銘柄です。
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今回は、イリノイ・ツール・ワークス(ITW)を分析していきます。
産業機械を中心とするコングロマリットです。
連続増配…45年
S&P格付…A+
採用インデックス
・米国配当貴族指数
・S&P500
コングロマリットなので、事業は非常に多岐にわたります。
自動車OEM…自動車部品類(ファスナー、装飾用品、ブレーキシステムなど)
試験と計測…機械類の特殊テスト及び計測ソリューション
エレクトロニクス…半導体、産業等の保守修理
食品機器…食器洗い機、調理器具など
特産品…食品・医療品パッケージングなど
ポリマー&流体…接着剤、コーティング剤など
建設製品…エンジニアリング締結システムおよび関連する 消耗品およびソフトウェア
溶接…付加価値機器および特殊消耗品
長々と書きましたが、理解できませんし、する必要もありません。コングロマリットなので、事業バランスは企業が勝手に調整してくれます。
海外売上比率は半分を超えており、海外展開は十分です。
コングロマリットらしく、多少のぶれはありますが安定感は抜群です。
営業CFマージンは10~18%と比較的ぶれていますが、キャッシュそのものはしっかり獲得できています。コングロマリットは製造業が多いので、設備投資が必要なイメージですが、実は少なめです。イリノイ・ツール・ワークスも、営業CFに対して投資CFは非常に少ないです。
利益はバラバラですが、配当性向は50%を切っており、安心できそうです。
自己資本比率が低下していますが、おそらく自社株買いの影響です。ROEは右肩上がりで上昇しており、レバレッジを効かせているようです。
現時情報(2017/9/1)
株価…137.51ドル
PER…22.26倍
配当利回り…2.27%
連続増配…45年
株価は勢いよく右肩上がりです。各指標で見ると若干割高かと思います。
シーゲル二郎が愛してやまないコングロマリットということで期待しておりましたが、そこそこの優良企業でした。とはいえ、事業多角化のおかげでキャッシュフローは安定していますし、今後の成長予想も程よい感じです。
配当利回りが高くない資本財でコングロマリットなので、バフェット派、シーゲル派、高配当派いずれの投資家にも引っかからず、非常に地味です。事業内容は時代とともに激しく入れ替わるため、イリノイ・ツール・ワークスという企業自体が生き残る可能性は高いでしょう。そのため、長期投資で報われる可能性は高いと思います。
そのため、長期投資で報われる可能性は高いのではないでしょうか。コングロマリット全般の話になってしまいましたが、配当貴族にふさわしい地味な貴族です。
]]>今回は、ペンテア(PNR)を分析していきます。
資本財セクターに属しており、水処理用品・流体制御の大手企業です。
連続増配…40年
S&P格付…BBB-
採用インデックス
・米国配当貴族指数
・S&P500
格付けがBBB-と、ギリギリ投資不適格級であり、早くも不安です。
事業内容は、シーゲル二郎には理解できませんが、幸い公式ホームページに画像が多くイメージしやすかったので、載せておきます。
出典「pentair」
部品パーツの画像も分かりやすかったので、ぜひ見てください。日本語翻訳も忘れずに(笑)
2012年には、スイス複合企業のタイコ・インターナショナル(TYC)が分離したパイプ・バルブ事業を統合し、事業の幅を広げました。
海外売上比率は40%とまずまずです。
2011年はわずかに赤字です。2012年以降は、タイコから事業統合した関係で、売り上げは急に伸びています。それを踏まえても純利益の変動が激しく汚いです。今後の純利益は、増加が見込まれています。
2012年のタイコ事業統合により、2012年を境に全く違う数字になっております。投資CFは意外と低く、安定してフリーCFを生み出せているのは素晴らしいです。営業CFマージンは、最近は15%を超えてきており、及第点です。
利益は全く安定しておらず、不安が残ります。利益予想は増益なので、増配は問題なさそうです。
ROEはジグザグです。自己資本比率は40%近くで、十分です。
現時点情報(2017/8/30)
株価…61.06ドル
PER…22.69倍
配当利回り…2.26%
連続増配…40年
PERが高めですが、事業統合による増益が見込まれているので、割高ではないでしょう。
まさに景気に左右される資本財企業といったところでしょうか。しかし、キャッシュフローは安定的なので、シーゲル二郎にはどのような業界なのかわかりませんでした。
企業分析をする上では、純利益を重視する人、フリーキャッシュフローを重視する人がいます。
純利益は、企業の帳簿上の利益であり、減価償却費など、複雑な計算をもとに弾き出された合理的な数字です。しかし、会計方法によって差が出たり、ある程度意図をもって数字を細工できてしまうことが弱点です。
フリーキャッシュフローは、実際に現金がいくら入って、いくら出ていったかを計算するため、単純明快です。会計方法による差もありません。最近では、このフリーCFを優先して考える投資家や経営者が増えています。
どちらが優れているのかは優劣つけられませんが、ペンテアの場合、純利益は不安定だが、フリーCFは比較的安定しています。この場合、投資判断はどのようにすればいいのか難しいです。
一つ言えるのは、企業が倒産するのは、赤字が続くからではなく、支払いに必要な現金がなくなってしまうからです。黒字倒産も、利益が出ているのに現金が手元に用意できなかったから倒産してしまったんです。
そのため、自由に使えるお金(=フリーCF)が安定してプラスということは、少なくとも短期間のうちに倒産してしまうリスクは少ないです。
ペンテアの場合、フリーCFが安定してプラスなので、赤字が続いても耐えることができそうです。景気に左右されやすい事業ですから、キャッシュフローが安定しているのは非常に心強いです。
企業にとって大事なのは赤字を出さないことではなく、倒産させないことなので、そういった意味では悪くない銘柄かもしれません。
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今回は、スタンレー・ブラック&デッカー(SWK)を分析していきます。
電動工具の製造メーカーで、世界トップシェアです。
連続増配…49年
S&P格付…A
採用インデックス
・米国配当貴族指数
・S&P500
連続増配49年で、今年12月の決算を無事乗り切れれば配当王になります。いわば、貴族から王へのカウントダウンが進んでいます。
事業内容の6割以上が電動工具用品や、収納用品になっています。電動ドリルなどが有名です。
2010年に、スタンレー社がB&D社を買収したため、社名が長いです。事業規模では、スタンレー社のほうが小さかったので、自分よりも大きな企業を買収したことになります。
半分以上を分社化したアボット・ラボラトリーズの真逆ですね。このような大胆な戦略を実行できるのも、米国企業の機動力の高さを物語っています。
海外売上比率は半分近くで、多国籍展開は十分です。電動工具類の世界シェアは3割近くあり、トップです。世界第3位は日本のマキタ社です。事業規模にそれほど大きな差はなく、数社で寡占市場を形成しています。
2010年のB&D社買収後は、急激にグラフが伸びています。まぁ自分より大きい会社を買収したのですから当然ですね。
投資CFはそこそこ必要のようですが、営業CFが安定しているので美しいです。営業CFマージンも、買収後は伸び続け、現在は13%ほどです。
利益はばらついていますが、配当性向は低めなので、配当王になってからも増配は問題なさそうです。利益も今後増収増益が見込まれており、増配率も期待できそうです。
自己資本比率は大型買収がありましたが、一定で美しいです。ROEは直近下がっていますが、今後は回復しそうです。
現時点情報(2017/8/30)
株価…139.01ドル
PER…17.81倍
配当利回り…1.81%
連続増配…49年
きれいな右肩上がりです。配当性向が低いので、配当利回りは2%を切っています。PERは18倍と、やや割安な印象を受けます。
今日まで社名すらまともに知らなかった企業でしたが、優良企業でびっくりしました。2017年3月にも「クラフツマン」というよくわからない名前の工具ブランドを買収しており、事業拡大に積極的です。大型買収を経験しているにもかかわらず、利益、フリーCF、自己資本比率ともに変動は緩やかで、ゆっくり改革が進んでいます。
電動工具類は、一歩間違えれば大ケガにつながりかねないので、品質と信頼性が何よりも大事です。そのため、コモディティ化の進みづらい領域なのではないでしょうか。また、勝手なイメージですが、工具類と聞くと職人気質な人が使う感じなので、お気に入りのブランドをずっと使い続けそうです。
電動工具類もホームセンター同様、米国内の住宅事情に左右される部分がありそうですが、こちらは世界中に道具を売っているので、影響は限定的だと思われます。
バリュエーションにも問題なく、これから配当王に加わる銘柄として不足のない優良企業でした。
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