スリーエム(MMM)分析
シーゲル二郎です。
今回はスリーエム(MMM)について分析していきます。
正式な会社名は「3M」で、非常にシンプルです。日本ではあまり馴染みがないかもしれません。
何をしているかというと、いろいろありすぎて説明できない会社です(笑)
連続増配…59年
S&P格付…AA-
採用インデックス
・NYダウ
・米国配当貴族指数
・S&Pグローバル100
・S&P500
連続増配は59年で、全企業のうち3位です。
様々な事業を行う典型的なコングロマリットで、製品は多種多様です。
一般消費者向けの商品では、付箋、接着剤、テープなどの、文房具が多いようです。その他にも、スポンジやマスクなど、幅広い商品を販売しています。
出典「3Mジャパン」
特に付箋は、3Mが開発したもので、「ポストイット」ブランドで販売されています。
付箋は、粘着が弱い接着剤の失敗作をヒントに生み出されたものです。
また、テープ類は、「スコッチ」、スポンジ類は「スコッチ・ブライト」というブランドで販売されています。このあたりは近所のホームセンターなどでよく見ると思います。
製品別売上です。上記の一般消費者向けの商品では、高いシェアを誇っていますが、3Mにとっては、事業のうちの1つにすぎません。
メインの事業は、研磨剤、医療機器、道路標識版などの、BtoB向けの製品が多いです。
詳しく説明したいですが、メンドクサイので公式ホームページを見てください。
外部リンク「3Mジャパングループ 製品一覧」
複雑多岐にわたるため、3Mの本当のビジネスを見極めることは困難でしょう。(コングロマリット全般に言えることですが。)
3Mは、もともと研磨剤からスタートした化学製品を開発する企業でした。そこから、粘着性に注目してテープや付箋を開発したりして、あらゆる科学分野に派生していきました。
そのため、製品の多くは、ニッチ市場のトップを取るような商品ばかりであり、オンリーワンの製品がひしめくような状況です。
非常に美しいバランスです。言わば世界トップシェアを取っている地元の町工場が、集結したような大企業です。
スリーエムの社風では、15%ルールというものがあり、勤務時間のうち15%は、業務に直接関係ないことに使っていいというルールがあります。
この自由に使っていい15%の時間に、様々な発明のヒントが生まれ、今のスリーエムの繁栄につながっているのです。
日本のブラック企業も意味のない研修会なんてしないで、自由な時間を与えればいいのに(笑)
やはり人間余裕がないといいアイディアも生まれないのかもしれません。
リーマンショックでも、かすり傷程度で済んでおり、他の資本材企業とは一線を画しています。
資本財セクターは景気に左右されやすいはずですが、スリーエムにその常識は通用しないようです。
スリーエムは、「5年以内に開発した商品の売上が全体の30%を超えるようにする」という目標を掲げており、研究開発に熱心です。
しかし、営業キャッシュフローが莫大であるため、全体で見れば微々たるものです。
営業キャッシュフローは、毎年20%前後であり、現金をしっかり獲得できています。
配当性向は、今まで50%を下回っていましたが、直近では50%を超えました。
増配率が上がったことによるものであり、むしろスリーエムのポテンシャルを考えればもっと多くの利益を配当に回してくれたほうがよさそうです。
自己資本比率が最近低下していますが、ROEが上がっており、さらに高収益になりそうです。
レバレッジはここ10年で2倍から3倍に上昇しています。スリーエムのキャッシュ獲得能力を考えれば、問題ない水準です。
現時点情報(2017/8/19)
株価…203.53ドル
配当利回り…2.3%
連続増配…59年
素晴らしい右肩上がりのため、決して割安とは言えません。配当利回りが2.5%を超えたらいい水準だと思います。
スリーエムは、セクター上は資本財となっていますが、他の資本財セクター企業と比べて大きく違うのは、消耗品が多いということだとシーゲル二郎は考えています。
例えば、他のキャタピラーやボーイングは、取り扱い製品がそれぞれ建設重機と飛行機であり、頻繁に購入するようなものではありません。
しかしスリーエムの場合、文房具や研磨剤、フィルターなどが多く、不況であっても定期的に買い替えが必要なものばかりです。
そのため、安定的に消費される生活必需品に近いともいえます。
もちろんこの仮説が正しいかどうかはわかりませんが、キャッシュフローを見れば、他の資本財セクター企業と比べて圧倒的に安定している事実は変わりません。
そのため、長期投資にも非常に向いている銘柄だと思います。
多彩な製品ポートフォリオ、15%ルールによる開発土壌、不況耐性など、はっきり言って欠点が見つかりません。
しいて言えば、スリーエムという名前に対するブランドが弱いことでしょうか。
しかし、あくまでスリーエムはBtoBが中心ですから、ネームブランドはそんなに意識する必要はないでしょう。
また、製品群は圧倒的開発力により生み出されたものであり、ブランドよりも実力で売っている部分が大きいです。(これはメリットともデメリットともいえますが)
コカ・コーラやフィリップモリスなどと違い、本当の意味で必需品と呼べる商品ばかりなので、会社が傾くことは考えられにくいでしょう。
15%ルールのほかにも、「上司の命令に背く研究でも定時後こっそりやっていいよ」などといったおもしろい決まりがあり、このルールを決めた人たちは本当にアイディアを生み出すのが好きなんだなと思いました。
このように、人々の生活に必要なものを日々販売し、新しいアイディアを出し続け変わり続けるスリーエムは、きっと永続する企業の1つになるとおもいます。
もしシーゲル二郎が、全財産で株を1銘柄だけ買えと言われたら、このスリーエムか、ジョンソン・エンド・ジョンソンのうち割安な方を選びます。(どんな時でもバリュエーションは大事)