現金(キャッシュ)を組み込んだバランスファンドがないのはなぜだろう?
つみたて次郎です。
複数の資産クラスを組み込んで運用されているバランスファンドは、単体で広く分散投資ができる便利な投資ツールです。
国内資産と海外資産の比率、株式や債券の比率なども大きく異なっており、それに伴い期待できるリスクリターンの数値もかなり違っています。
ほとんど株式のみで構成されるような積極的にリターンを狙いに行くファンドから、国内債券を多く組み込んでリスクを抑えているようなファンドまで幅広いバリエーションがあります。
リスク許容度に応じて複数商品を用意しているバランスファンドもあり、例えば楽天・インデックス・バランス・ファンドの場合は株式と債券の比率が異なる株式重視型・標準型・債券重視という3パターンが存在しています。
株式と債券の比率を調整することで、投資家のリスク許容度に応じた選択肢を用意しています。
株式と債券の比率というのは投資家の永遠のテーマですので、ファンドを保有する顧客にとっても、ファンドを設計運用する金融機関にとっても大きな意味を持っています。
さらにバランスファンドの場合、特に国内債券の比率を増やしてリスクを抑えるという調整がされていることが非常に多いです。
中身の大部分が国内債券になっているファンドも結構あり、かなり保守的な運用になっています。
姉妹サイト…債券重視バランスファンド比較(つみたてNISAとは?)
国内債券は円建てで発行される債券であり、為替リスクもなく全体的にローリスクローリターンな資産となっています。
現金(キャッシュ)や個人向け国債等の無リスク資産には劣りますが、これらに次ぐ守りの要になります。
しかし現在の超金利状態ではあまり投資するメリットがなく、金利上昇を考えると割に合わない投資先ではないかと考える人も多いようです(つみ次郎も含め)
リスクを抑えたい時の選択肢
一旦バランスファンドから離れて、個人投資家がポートフォリオ全体のリスクを抑えたいときに取れる調整について考えてみます。
・株式比率を下げる
・債券比率を上げる
・現金比率を上げる
実際はREITやコモディティなんかもあるのでもっと複雑ですが、話を単純化するとこの3つが基本になるのではないかと思います。
また、この3つは完全に独立しているものではありません。
現金比率を上げたいのであれば、何らかの資産を売却して捻出しなければなりません。
株式を売って債券と現金を増やせば、同時に上記3つの調整を行っていることになります。
つみ次郎の資産は現在ほとんどが米国株インデックスファンドであり、資産クラスでいえば株式100%状態です。
ただしリスク許容度は徐々に下がっていく予定なので、その時は現金(キャッシュ)の比率を増やして調整していきたいと考えています。
なのでつみ次郎が一番重視したいのは「現金比率を上げる」ことによるリスク調整といえます。
バランスファンドと現金
バランスファンドの多くは、次の8資産の組み合わせで構成されています。
・国内株式
・先進国株式
・新興国株式
・国内債券
・先進国債券
・新興国債券
・国内REIT
・先進国REIT
特にインデックス型のバランスファンドの場合、上記のどれを採用しどのくらい組み込むかというのが最も重要なポイントといえます。
ちなみに上記8資産を全て均等に持つと8資産均等型と呼ばれるバランスファンド群になります。
しかしバランスファンドでは、個人投資家では基本的なリスク調整手段である「現金比率を調整する」という選択肢が存在していません。
ファンド内部で現金(キャッシュ)に近い流動性の高い資産を保有している場合もありますが、多くの場合はほんの数%にとどまり、資産クラスの1つというよりは投信の解約に備えた資金という側面が強いです。
キャッシュ比率の高い投資信託としては、アクティブファンドの結い2101があります。
直近のレポートでは、全体の約40%がキャッシュ等になっています。
外部リンク…結いだより109号(鎌倉投信)
始めからリスクを抑えるという目的でキャッシュ比率を高くしており、投信としては非常に珍しいです。
その他では、みんな大好きひふみ投信も市況に応じて現金比率を最大50%まで引き上げる可能性があります。
ただし直近では現金等は4%ほどになっており、緊急時の避難先という意味合いが強いです。
外部リンク…ひふみのあゆみ(2019年3月)
自由度の高いアクティブファンドではキャッシュポジションを投資方針に組み込んだ投信がいくつか存在しますが主流とはいえず、バランス型含めインデックスファンドにおいては皆無といっていいでしょう。
投信に現金を組み込みずらい理由
アクティブ型インデックス型問わず、投資信託は顧客から預かったお金を運用する仕組みです。
なので顧客から預かったお金をそのまま現金として放置しておくのはあまり見栄えが良い状況とはいません。
また、現金部分にも信託報酬は発生しているので、顧客としてもあまり面白いとはいえません。
「手数料取ってるんだからしっかり全額運用しろ!」ということですね。
なのでもし現金(キャッシュ)を相当比率組み込むことを前提としたファンドを設計する場合、次の2点をクリアしなければなりません。
・十分に低い信託報酬
・現金の有効活用
アクティブファンドであれば「普段は現金で待機してチャンス時に大きく張る」というコンセプトは面白そうですし、バランスファンドであれば「現金比率を保ちながらリバランスする」という投資の自動化につながります。
特に保守的なバランスファンドに多く組み込まれがちな国内債券に懐疑的な人は結構いそうなので、国内債券部分を現金に置き換えたファンドはそこそこ需要があるのではないかと考えています。
さらに話をシンプルにまとめると、全世界株式+キャッシュ〇%という単純明快なバランスファンドも面白そうですね。
バランスファンドに求める要素
金融商品としてのバランスファンドにつみ次郎が求める要素は、大きく分けて次の2つです。
・複数の資産にまとめて投資できる
・シンプルに投資を自動継続できる
前者はバランスファンドというよりも、投信やETF全体に求められている要素でもあります。
個別で株式や債券を買い集めるのが難しければ、投資信託やETFを用いることで多少のコストと引き換えに広く分散投資が可能になります。
後者は、投信の自動積立だったりバランスファンドの内部リバランスなどによって、投資にかかる判断や作業をいかに省略できるかという要素です。
バランスファンドを複数組み合わせたり機動的に売買するという利用法も考えられなくはありませんが、やはり一番重要なのは保有ファンド数や売買頻度をいかに減らせるかということではないかと思います。
ですが現状では現金比率まで考えられたバランスファンドは存在しないので、現金比率を調整するための売買までは省略することができません。
なのでバランスファンドを売り込んでいくのであれば、各投資家の理想に近いファンドを設計していく必要がありますし、その意味で現金(キャッシュ)をあらかじめ組み込んだバランスファンドというのはアリなのではないかと考えています。
信託報酬がもったいないという意見もありそうですが、元々バランスファンド自体がある程度のコストを犠牲にして利便性を得る道具と考えていますし、それでもロボアドなんかと比べれば全然マシです。
突き詰めてしまえばバランスファンドに組み込まれがちな国内債券ですら信託報酬の面でもったいない(期待リターンに対するコスト比率が高い)のですから、国内債券と現金(キャッシュ)の間に大きな違いはないと思います。
国内債券と現金(キャッシュ)、どちらを重視するかは人それぞれですが、個人投資家においては選択肢の1つにすぎない「国内債券比率を高める」というリスク軽減方法が、バランスファンド業界では多用されている現状に違和感を感じてしまうのは私だけでしょうか?
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