100年複利の威力と錯覚

つみたて次郎です。

投資家は未来を予想して投資行動を判断していかなければなりませんが、未来を予想するためには過去のデータが大きく役立ちます。

過去に起きたことが必ず繰り返されるとは限りませんが、過去の傾向から何かを読み取ることは出来ます。

そして長期投資家の場合、過去の株式市場や債券市場が右肩上がりであったことがその根拠になることが多いですが、今回は超長期における株式や債券のリターンについて考えていきたいと思います。

まずは下記のグラフをご覧ください。

 

参考文献「証券市場の真実―101年間の目撃録」

これは、各国の1900~2000年の101年間における、年平均実質リターンをまとめたグラフです。

実質リターンですので、インフレなども考慮された数値になっています。

このグラフから受ける印象は人それぞれですが、主に読み取れるのは次の3点です。

・株式のリターンは債券を上回っている
・株式は全ての国でプラスになっている
・敗戦国のリターンはあまり良くない

もし上記の傾向が続くなら、株式フルインベストメントというのは有力な戦略となります。

今回は、このグラフを色々変換して遊んでみたいと思います。

 

101年後の投資成績に置き換える

最初のグラフは過去101年間の年平均なので、逆に101年間運用していた場合の最終的なトータルリターンを計算してみます。

参考文献「証券市場の真実―101年間の目撃録」一部加工

1900年に投資した元本を1とした場合の最終結果です。

スウェーデン株式とオーストラリア株式は1,000倍越えという素晴らしいリターンを叩き出しています。複利のパワーを感じますね。

その一方、日本国債、ドイツ国債、イタリア国債では大きく元本割れと残念な結果になっています。

101年間という長期のデータをもとに作成しているので、勝ち組と負け組の差が大きくついています。

とはいえこの結果をもとにスウェーデン株式に集中投資しろ・日本国債を空売りしろ等の結論に結びつけることは難しく、過去の超長期におけるデータをどのように分析していくかが重要ですね。

 

最初に見せたグラフに比べ、かなり違う印象を受ける方も多いのではないでしょうか?

また、横の軸を見ていただくとわかりますが上記グラフは対数表示をしています。

本当は対数ではない普通?のグラフにしようと思ったのですが、数値の差があり過ぎて歪な方になってしまうのでやめました(笑)

また、現実に101年間投資を続けるというのは非現実的なので、実際に得られるリターンを考えるためにはさらに工夫する必要があります。

 

 

20年間の運用成績に置き換える

実際に101年間投資を続けるというのは非現実的なので、1人の人間が運用できる現実的な投資期間として20年で再度計算してみます。

参考文献「証券市場の真実―101年間の目撃録」一部加工

今度は対数ではありません。

それぞれ比較した時の力関係は当然変わりませんが、その差がかなり縮んでいるように見えます。

101年間で1,000倍以上に増えたスウェーデン株式やオーストラリア株式も、20年では4倍程度にしか増えていません。

個人的にはこの手の平均リターンについて考察する場合、現実的な投資期間に置き換えて考えるというのがとても大切ではないかと思っています。

 

全部同じことを表したグラフ

今回3種類のグラフを紹介しましたが、いずれも同じデータを元に加工したものに過ぎず、言っていることはほぼ一緒です。

しかし人間というのはグラフといった視覚的情報や、なんとなく計算できる数字をイメージして物事を判断してしまいがちです。

特に複利計算などの「べき算」については、イメージと現実の差がとても大きく感じる筆頭です。

べき算に関連しては「新聞紙を〇回折ると月まで届く高さになる」という有名な話がありますが、ほとんどの人が実際よりかなり多い回数だと予想してしまうのではないかと思います。

ちなみに答えは42~43回らしいです(反転してね)

 

今回紹介した3つのグラフをパッと見て、全く同じ印象を受ける人であれば問題ありませんが、そのような人はかなり少数派かと思います。

例えば最も成績が良かったスウェーデン株式の場合、

・年平均リターンが7.6%
・101年で1,633倍に増えた
・20年で4.3倍に増えた

という3つの結論が出ていますが、投資リターンという意味ではどれも同じことを言っています。

各グラフを作成したつみ次郎自身でさえ、それぞれから受ける印象はバラバラです。

また、今回は全て株式リターンの高い国順にグラフを作成していますが、入替すればまた違った印象になるかもしれません。

逆に違うグラフに見えてしまうということは、そこに人間の直感や理解と現実にズレがあるということになります。

言葉でも「物は言いよう」「朝三暮四」なんてものがあるように、数字やグラフも見せ方次第でいくらでも印象を変えることができます。

そこに悪意がある場合はもちろん、今回のデータのようにそうでない場合でも1つの方面から得られる情報というものには限界があります。

何か言われたことを「自分の言葉で置き換える」と理解しやすいように、データも自分が分かりやすいように加工して眺めると見えてくる景色も変わってくるのではないかと思います。

その一方、無意識に自分の都合よく解釈してしまうこともありますので、その点には注意が必要です。

にほんブログ村 株ブログ 米国株へにほんブログ村 株ブログ つみたてNISAへにほんブログ村 株ブログ 投資信託へ
ブログ村ランキング

101匹次郎

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください