【書評】日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル

つみたて次郎です。

橘玲氏著「日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル」を読んだので書評です。

日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル

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発売されたのは2013年と少し古く、アベノミクスに関する記載も多くあります。

もっとも本書では「アベノミクスで日本経済はどうなるか」といった予想について考察されたものではなく、起こる可能性のあるシナリオについて提示をしています。

①楽観シナリオ アベノミクスが成功して高度経済成長がふたたび始まる
②悲観シナリオ 金融緩和は効果がなく、円高によるデフレ不況がこれからも続く
③破滅シナリオ 国債価格の暴落(金利の急騰)と高インフレで財政は破綻し、大規模な金融危機が起きて日本経済は大混乱に陥る
出典「日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル」

また、経済には強い継続性(粘性)があるとし、ある朝目覚めたら日本円が紙くずになっていた、などということは絶対にあり得ないという主張をしており、もし破滅シナリオが現実になるとしても段階を踏んでいくことを説いています。

第1ステージ 国債価格が下落して金利が上昇する
第2ステージ 円安とインフレが進行し、国家債務の膨張が止まらなくなる
第3ステージ (国家破産)日本政府が国債のデフォルトを宣言し、IMFの管理下に入る
出典「日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル」

基本的には上記の話が本書全体のテーマとなっています。

また、よくありがちな日本破産を予想する本ではなく、破産するとすればどのような流れになるか、段階ごとにどのような予兆と対策があるかといった点に重点が置かれています。

 

もし日本が国家破産したら?

第1章のタイトルは「<近未来小説>日本人を待っていた浅い眠り」となっており、日本が破産した後の生活について描かれています。

テーマ自体はよくある話ですが、本書の1章丸々全てが小説となっており、この手の話にしてはかなり長編作品となっています。

内容も具体的で、実際に起きた出来事の解説を読んでいるような気分でした。

 

ステージ別の推奨資産

上記のステージ別に、比較的安全な資産の置き場所として次のような例を挙げています。

第1ステージ…普通預金
第2ステージ…日本国債ベアファンド、外貨預金、外貨MMF、物価連動国債
第3ステージ…外国銀行の外貨預金、日本国債ベアETF

普通預金からベアETFまでかなり幅広い金融商品が挙げられています。

また、通常日本経済破綻を想定する場合、普通預金や国債等は選択肢に入らないことが多いので珍しいと思いました。

少なくとも破綻の予兆が見えるまで、極端な対策を取る必要はないということですね。

また、日本破綻を煽る金融機関が紹介する商品(外貨ファンド等)に対しては「日本が国家破綻するリスクよりも勧められるファンドのリスクのほうがはるかに大きい」という皮肉も述べられています。

 

 

リスクの取り方について

もし第2ステージ(日本経済の恐慌)に突入してしまい、普通預金による資産保全も難しく、本格的な決断を迫られることになります。

平均的な日本人サラリーマンの主要な資産は不動産(マイホーム)と公的年金であり、この部分が毀損されてしまうなら金融資産でリスクを取るしかないということが解かれています。

リスクを取り金融資産を増やしていく方法として、次の3つが挙げられています。

①投資元本を大きくする
②リスクを取って投資利回りを上げる
③投資にレバレッジをかける

これ自体はセオリーな方法ですが、不動産を売って賃貸に引っ越す、人的資本を成長させてどんな環境でもお金を稼げる能力を身に着けるといった、ちょっと変わった視点からのリスクの取り方についても解説されています。

投資に限らず、どのようにリスクをとっていくかというのは永遠のテーマで、個人的には一番興味深い部分でした。

 

いろんな意味で幅が広い

タイトルには「日本破産」とありますが、前述したとおり日本破産を予想している本でもなく、何らかの未来を予想しているものでもありません。

起こりうる未来のパターンを提示して、その内容に応じた対応策について淡々と述べられています。

普通預金の有効性から始まり、金融資産によるリスクの取り方、一部ではインデックス投資に関する記述もあります。

また、人的資本(稼ぐ能力)で国家破産による損失をカバーできない人に対しては、一発逆転的な方法としてデリバティブについても解説されています。

具体的にはFX(レバレッジ有)・先物・オプション・株の信用取引等です。

「初心者が安易に手を出すことはお勧めしません」という記載はあるものの、普通預金からデリバティブまでという幅広いジャンルを抑えているのは面白いですね。

本書全体を通して尖った主張が多い印象でしたが、そのバリエーションが非常に豊富で大変参考になりました。

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