生活必需品セクターとヘルスケアセクターの過去成績を再チェックしてみた
つみたて次郎です。
ジェレミー・シーゲル氏の著書「株式投資の未来」では、様々な投資戦略について考察されていますが、その中でも特に有名なのがセクター戦略です。
具体的には、過去長期リターンの良かったセクターとして生活必需品セクター・ヘルスケアセクターを挙げており、ポートフォリオの一部に組み込むことを推奨しています。
米国株式市場の1957年~2003年においては、S&P500の実質トータルリターンが年間10.85%だったのに対し、生活必需品は13.36%、ヘルスケアは14.19%と大幅にアウトパフォームしています。
また、個別株ではなく、ETF等を用いてセクター全体に投資することも推奨しています。
現在ではセクター別ETFが登場していますので、少なくとも米国株に絞れば個人投資家でも容易に実践することができます。
つみ次郎がブログを始めたばかりの2017年頃は、特に生活必需品セクターに強気な米国株クラスタの方が多くいたような気がしますが、現在ではそこまで大きな勢力を持ったジャンルではない感じですね。
また、ヘルスケアセクターについても、鉄壁のディフェンシブ株といわれていたJNJの訴訟問題や、製薬業界全体に対する圧力等への懸念から、以前ほどの盛り上がりはありません。
過去15年成績について
そんな生活必需品セクター及びヘルスケアセクターですが、最近の成績はどのようになっているか調べてみました。
それぞれのセクターを代表して、以下2つのミューチュアルファンドで比較します。
・VCSAX(生活必需品)
・VHCIX(ヘルスケア)
余り馴染みのないファンドですが、それぞれバンガードETFであるVDC及びVHTの投資信託版です。
この2つは特に国内でも人気の高いセクターETFですね。
ETFだと長期間のシミュレーションが難しいので、便宜上ミューチュアルファンドのほうで検証していきます。
検証はPORTFOLIO VISUALIZERというサイトにて行いました。
以下、本記事で掲載するデータ及び画像は上記サイトから引用しました。
過去最長で2004年3月~2019年7月の約15年間におけるシミュレーションができましたので、名目トータルリターンを比較してみました。
Portfolio1がVCSAX(生活必需品)、Portfolio2がVHCIX(ヘルスケア)、後は比較用のS&P500です。
トータルリターンはヘルスケア>生活必需品>S&P500になっており、過去の傾向通りの並びです。
偶然ですが、ちょうど検証可能期間の始まりが2004年だったので、シーゲル教授の検証データと繋がりますね(笑)
それぞれの各種データについて抜粋してみます。
生活必需品 | ヘルスケア | S&P500 | |
平均トータルリターン | 9.33% | 9.93% | 8.44% |
単年度最高 | +27.98% | +42.68% | +32.18% |
最大ドローダウン | -29.34% | -35.1% | -50.97% |
シャープレシオ | 0.77 | 0.68 | 0.57 |
純粋にリターンの高いヘルスケア、ディフェンシブ力に優れた生活必需品という結果になっており、いずれにせよS&P500に対して有利なセクターになっていました。
どちらもリーマンショック時における落ち込みが小さかったのも、S&P500をアウトパフォームした大きな要因といえそうです。
過去10年・5年成績について
逆に、リーマンショックを挟まない場合の成績についてもチェックしてみました。
まずは2009年7月~2019年7月における過去10年間の場合です。
トータルリターンはヘルスケア>S&P500>生活必需品となっており、残念ながら生活必需品セクターはアンダーパフォームという結果になってしまいました。
次に2014年7月~2019年7月における過去5年間については以下の通りです。
トータルリターンはヘルスケア>S&P500>生活必需品となっており、生活必需品が出遅れているのは同じですが、ヘルスケアとS&P500の差はかなり小さくなっています。
とはいえ、元々ディフェンシブ性の高いセクターですから、金融危機でも下げ幅が小さい&上昇相場でも市場平均並みという最強のセクターであるともいえます(笑)
状況はあまり変わらない
大体予想していた通りの結果ですが、強いて言うならヘルスケアセクターが過去5年単位で見てもS&P500を上回っているのは驚きました。
とはいえ、生活必需品・ヘルスケアのディフェンシブ性を考えれば、少なくとも上記データをもとにヘルスケアセクターはOK、生活必需品はNGと判断はできないでしょう。
次の下落相場でダメージを抑えられるか、その後の上昇相場で市場平均並みのリターンを叩き出せるかが注目ポイントです。
また、特定のセクターに集中投資するという性質上、セクター特有のリスクが跳ね上がる点には気を付ける必要があります。
ヘルスケアセクターについては、前述したように訴訟リスクや値下げ圧力という分かりやすいリスクが潜んでいますし、生活必需品については時価総額で全体の10%ほどを占めるタバコ株銘柄も同じようなリスクを抱えています。
というか少し前まで全体の20%くらいタバコだった気がするんですが、いつの間に大分減っててビビりました(これが一番意外だった笑)
また、生活必需品セクターには日用品メーカーや実店舗小売業といったAmazonに駆逐されてしまいそうな企業が結構含まれていることや、炭酸ジュース・スナック・フラペチーノといった砂糖と油まみれの不健康なジャンクフードを主力製品とした企業も多く存在するため、ローテク企業と言えど時代の流れを無視できるわけではありません。
総じてどちらも、世界情勢や景気変動といった外部要因には強い一方、それぞれ独特なリスクを抱えているといえるでしょう。
その分、分散投資先として有効だったりするのかもしれませんけどね。
どちらにせよ、いわゆるシーゲル流のセクター戦略を組み込むのであれば、そういった荒波にも耐える必要があるというのは言うまでもありません。
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