iシェアーズ 米国優先株式(PFF)を分析。高配当で値動きが緩やかな優先株ETF

つみたて次郎です。

今回は、「iシェアーズ 米国優先株式(PFF)」を分析していきます。

米国の優先株式にまとめて投資できる海外ETFです。

 

優先株式とは?

配当金を多く受け取ることができたり、企業が解散・倒産した時の残存財産を優先的に受け取れるなど、通常の株式と違う権利が付与されている株式のことです。

その代わり、議決権が付与されていないことが多く、株主総会への参加が制限されています。

株価の値動きも穏やかなことも多く、普通株式と債券の中間の性質を持っているといえる資産クラスです。

企業が倒産した場合、残存財産の配分は債券の保有者が優先され株式の保有者は後回しになりますが、優先株式はその中間の立場になります。

 

PFF基本情報(2018/9/6現在)

項目 データ
信託報酬 0.46%
銘柄数 303
PER 15.66%
PBR 1.23%
売買回転率 22%
配当利回り 5.57%
配当頻度 毎月分配

 

信託報酬はETFとしてはかなり割高な水準になっています。

各種指標は割安ですが、優先株式は安定した配当金と引き換えに事業が好調であっても増配や値上がりが期待できないため、他ETFと直接比較するのは不適切かもしれません。

そして最大の特徴は、5%越えの高い配当利回りです。また、毎月ごとに分配されるため、定期的なインカム収入を求める方に人気が高いです。

その一方、毎月分配されるたびに課税されてしまうので、複利効果が弱まってしまうのは大きなデメリットです。

なお、米国株の場合は配当金に対し国内で20%・米国で10%課税されてしまうため、外国税額控除をしない場合受け取れる配当金の利回りは4%前後にまで低下していしまいます。

 

 

セクター比率(2018/9/6現在)

セクター 比率
銀行業 34.68%
各種金融 24.81%
不動産 14.09%
保険業 10.22%
エネルギー 3.73%
公共事業 3.21%
ヘルスケア 2.23%
生活必需品 1.86%
資本財 1.02%

 

セクター比率にも大きな特徴があります。金融に関するセクターだけでも全体の7割近くを占めています。

優先株式は金融セクター企業の資金調達として用いられることが多いため、このようになっています。

 

基準価格とトータルリターン

リーマンショック時には大きな下落を経験していますが、それ以降は35~40ドル付近で推移しており、ボラティリティは非常に小さいです。

逆にいえば、値上がり益を狙うタイプのETFではなく、リターンのほとんどは配当金によるものになります。

リーマンショックの時も配当金はしっかり維持されたので、当時は利回り15%越えという絶好の買い場でした。

 

配当金を再投資した場合のトータルリターンは次の通りです。リーマンショック時を除けば、ゆっくり右肩上がりになっています。

ただしこのチャートは、税引き前の配当金を再投資した場合なので、実際の成績はこれよりも低くなります。

 

確かに高配当ETFだが…。

一時期米国株クラスタで大流行した、配当利回りに注目する高配当戦略にはピッタリに思えます。

しかし個人的には、課税によるロスが大きすぎるのではないかと考えています。

課税前の配当利回りが約5.5%なので、単純に国内課税20%と米国課税10%を引いたら実際に受け取れるのは4%くらいになってしまい、5.5%-4%=1.5%が税金として引かれてしまいます。

仮に米国課税分を外国税額控除で全額取り戻せたとしても、1%程度の課税ロスは避けられません。

キャピタルゲインがほとんど狙えず、比較的ローリスクローリターンであるPFFにとっては、非常に大きなコストではないかと思っています。

 

シーゲル銘柄になりうるか?

ジェレミー・シーゲル教授は、株式において配当利回りとトータルリターンに相関があるというデータを発表しており、推奨する投資戦略の1つとして「高配当戦略」を挙げています。

その一方、シーゲル教授は平均回帰性などの理由から債券よりも株式への投資を推奨している面もあります。

優先株式は、前述したとおり債券と株式の間ともいえる性質を有しており、安定性の代わりにトータルリターンを大きく犠牲にしています。

シーゲル流投資=高配当含め高いリターンが見込める普通株式への投資であると私は考えているので、PFFはシーゲル銘柄ではないと思っています。

 

金融危機の際に大きく下落するのは痛い

平常時の値動きは債券ETF並に安定しており、配当金も横ばいです。

ただしリーマンショック時には、50%以上の大暴落を経験しています。優先株式に金融セクター企業が多く含まれていることもあり、金融危機に対する耐性には疑問があります。

そのため債券ETFのように、緊急時のクッションにならない可能性がある点には注意しなければなりません。

優先株式である以上、株式を超えるリターンを得るのはほぼ不可能であり、債券のような暴落時の緩衝材としての役割にも疑問が残るPFFは、攻守ともに中途半端ではないかと思っています。

 

疑問点が多いPFF

米国株クラスタでも比較的人気の高いPFFですが、個人的にはあまり魅力を感じることができません。

トータルリターンを追求するならば、課税ロス以上の超過リターンを見込むことができないため対象にするのは難しいですし、単にインカム収入を求めるならば、高配当な普通株式ETF+債券ETFのほうが適切ではないかと考えています。

つみたて次郎としては悲観的な評価ですが、その一方高い評価をつけている方も多く、PFFへの投資は意見が真っ二つに分かれている印象があります。

PFFへの投資を検討している人は、特に慎重な投資判断が求められそうですね。

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PFF次郎

iシェアーズ 米国優先株式(PFF)を分析。高配当で値動きが緩やかな優先株ETF” に対して1件のコメントがあります。

  1. nanasi より:

    記事とは直接関係ないのですが・・・
    多くの投資ブロガーはポートフォリオに(新興国株式)を1-2割入れてる人が多いですが
    ぶっちゃけ入れる意味あるんでしょうか・・・?
    ジローさんは入れてますか?

  2. つみたて次郎 より:

    私は入れていません。
    1〜2割の方は、時価総額比を参考にしているのではないかと思います。
    割安を評価してオーバーウェイトというのも有力な投資法であり、新興国株への投資比率こそ投資家の考え方がよく見えるポイントなのではないかと思います。

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