PBRの欠点
シーゲル二郎です。株価の割安感を示す指数にPBRがあります。PBRとは、1株当たりの会社が持っている純資産(資産-負債)から見て、現在の株価が何倍かということを表しているものです。
たとえば、次のような株式のPBRはいくつになるでしょうか。
株式会社シーゲル二郎
資産 (現金や土地) 100万円
負債 (借金) 70万円
発行株式数 50株
現在の株価 9,000円
まずは、純資産を求めます。資産-負債で求めます。
100万円-70万円=30万円
つまり、この会社を丸々買収すれば帳簿上30万円の価値があるわけです。次に、発行株式数で割ります。
30万円÷50株=6,000円
この会社1株あたり6,000円の価値があることがわかりました。しかし、実際の株価はそれよりも高く、現在の株価÷1株あたり純資産は次のようになります。
9,000円÷6,000円=1.5倍(PBR)
ここででた1.5という数字がPBRになります。1を超えている場合、会社が持っている価値より高い値段で取引されているということになります。通常、株式会社はどんどん成長し続けるので、1を超えているのが通常です。
しかし、1を下回っている場合もあります。もし上で例に挙げたシーゲル二郎の株価が3,000円だったとしたら、
3,000円÷6,000円=0.5
となり、会社が持っている価値より安い値段で購入できてしまいます。もし会社の株をすべて買い占めて、企業を清算してしまえば、買った値段よりも多くのお金が手に入ることになります。しかし、実際は、次の理由によってうまくいかないことが多いです。
PBRの計算のもとになる資産は、取得した時の金額で帳簿に載ることが多いです。例えば、バブル経済の時に買った土地があれば、今現在の価値よりはるかに高い金額になってしまい会社の資産が実際よりも多く見えてしまします。
また、工場などで持っている機械は、用途が特殊だったりして、買い手が見つからなかったり、売れたとしても安く買い叩かれてしまうのがオチです。
したがって、PBRを調べるときには、本当にその会社が持っている資産に価値があるかどうかに気を付けなければいけません。お買い得だと思ったら、中身は二束三文のガラクタだった、なんてことがないように。
逆に、1を大きく超えている場合もあります。PBRが会社の資産を基に計算しているなら、資産が少ない会社は、PBRが大きくなる傾向があります。
コンサルタントなどの会社は、会社の資産は優秀な社員たちですが、社員は資産に計上できません。また、製薬会社などは、莫大な研究開発費が必要ですが、その多くは費用として計上され、会社の資産にはなりません。利益を生み出すために必要なものが資産に計上できない会社は、おのずと帳簿上の資産が少なくなり、結果PBRも高くなってしまいます。
また、PBRがマイナスになるというケースもあります。次のような会社の場合、資産よりも負債が多く、債務超過になっています。計算すると、
資産 150万円
負債 200万円
発行株式巣 50株
現在の株価 5,000円
150万円-200万円=-50万円(BPS)
5,000÷(-50万円÷50株)=-0.5倍
となり、株式を持っているだけで負債を抱えていることと同じことになります。(もっとも、株式は有限責任なので、会社が破綻しても借金を肩代わりするわけではありません。)
このような会社は、2パターンあり、一つ目は、赤字を垂れ流していて、借金がどんどん増えているダメ企業です。これはイメージしやすいかと思います。
もう一つは、笑いが止まらないくらい儲かりすぎて借金まみれになるというパターンです。このブログでは、米国優良企業への投資を推奨していますが、キンバリークラーク、フィリップモリス、コルゲート、マクドナルドなどがこのパターンになります。
会社は、資産をため込むことが目的ではなく、株主にリターンを与えることが目的です。上記の会社は、利益をため込まず、配当金や自社株買いなどの株主還元に積極的です。現在、長期金利が歴史的な低水準なため、お金を借りる側に非常に有利です。この状況を利用し借金して株主還元をした結果、債務超過になったということです。
債務超過とは、一般的には倒産寸前の企業に思えますが、優良企業であれば、事業から得られる営業キャッシュフローが莫大であるため、債務超過であっても倒産することなく企業を存続させることができます。
企業が倒産するかどうかは、支払いに必要な現金(=キャッシュ)が尽きてしまうかどうかです。赤字や債務超過なんて関係ありません。
つまり、株主還元によって債務超過になった企業は、PBRでは図ることができないが、投資先として非常に魅力的であるということです。
PBRで銘柄を選ぶときには、数字だけにとらわれないようにしましょう。