S&P500円建て長期リターン
シーゲル二郎です。
米国株式市場を代表する指数として、S&P500指数があります。
これは、スタンダード&プアーズ社が定めるインデックスで、米国を代表する大型優良株500社の時価総額基準インデックスです。
世界で最も有名な指数ともいえるもので、米国のみならず世界の株式市場を表す指数ともいわれています。
NYダウ「俺もいるぞ」
米国市場全体のうち、時価総額基準で約75%をカバーしています。世界で最も力強く成長している指数であり、長期でのリターンは素晴らしいです。
全世界株式に投資するVTに比べても、大きな差をつけています。
ですが、私たちは日本人なので、投資する際に為替リスクが発生します。そのため、ドル建てでは右肩上がりでも、円建て換算で右肩上がりになるとは限りません。
1949年~1971年の間は、1ドル=360円の固定相場制でしたが、現在は変動相場制により毎日変化しています。
本日のレートは1ドル=約113.8円です。円高が進むほど、S&P500などの海外への投資には悪影響です。
もちろん短期的な円高であれば、安く買い増しできるためプラスですが、長期的に円高が進んでしまえば、リターンを失うことになります。
日本人が米国株に投資しても、そのままのリスクとリターンを享受できるわけではありません。日本で生活する投資家は、税引後円建てリターンを最大化するのが唯一の目的になります。いくらドルで増えても、円にしたら減っていたでは意味がありません。
参考記事「ドル建てでは利益出てるという戯言」
また、インフレによる影響も考えなければなりません。ある期間で2倍のリターンを得ても、物価が3倍になっていたらそれは失敗です。
幸い株式は、長期ではインフレの対策になるため、インフレをはるかに超えるリターンを叩き出しています。
ですが、日本で目にするS&P500チャートの多くはドル建てになっています。日本では長らくデフレが続いていたため、インフレの怖さを理解していない平和ボケした人も多くいます。
そのため、日本人向けに調整したグラフを作りましたのでご覧ください。
円建てS&P500(配当込み)リターンと、日本の消費者物価指数を考慮したチャートです。
S&P500(配当込み)に投資した場合のインフレ調整をした円建てリターンになります。税金は考慮されていないのでご注意ください。
1979年を100とした場合の推移です。37年間でおよそ19倍になっており、年率約8.3%で成長しています。
為替レートは1979年~1985年くらいは1ドル=200円~300円と大きく上下しており、その後は一貫して円高が進んでいます。
今回は1979年を基準にしていますが、為替が大きく変動しているので少し年度をずらすと全く違うチャートになりそうです。
いずれにせよ、円建てで見ても右肩上がりで成長しているので、安心して投資できそうです。
来年から始まる積立NISAでは、投資期間が20年となっています。そのため、最も成績が悪いであろう20年間積立した場合の成績を確認してみました。
おそらく最悪の期間と思われる20年間で積立してみます。1989年~2008年です。
1989年は米国経済の景気がピークだったころで、同年の円建てリターンは約51%もありました。ですが、今回のシュミレーションではその直後からスタートです。
2008年はリーマンショックで-49%を記録した年です。積立投資では、取り崩し時期に暴落が来ることが最大のリスクになります。
1989年に一括投資した場合は、20年間でたったの2.4倍にしかならず、リターンは年率4.5%と低めになります。
1989年の好景気~2008年の不況という悪い状況で積立していきます。
1989年から2008年まで毎年40万円を積立して、2008年に一括で売却するとします。
チャートは物価調整済みですが、追加資金はインフレに関係なく40万円の固定としているので、多少額にずれが生じている点はご了承ください。
とはいえ20年間で物価上昇は13%ほどしかないので、おおよその参考にはなると思います。
取り崩しタイミングの20年目にリーマンショックが来ているので、評価額は1,000万円を下回っています。投資総額が800万円なので、20年間でたったの25%程度しか利益が出なかったことになります。
一括投資では2.4倍になっていましたが、積立投資では割高な期間が多かったため、あまり利益が出ませんでした。
とはいえもう一年待てば30%増えて1,300万円くらいになります。
最悪の20年間でも、何とかプラスにはなった点に注目です。また、2012年~2014年にかけては大幅に上昇しており、もしあと6年間保有していれば追加投資なしでも3,400万円まで上昇します!
積立NISAでは投資期間が一応20年となっていますが、積立投資の後は一括で売るのではなく少しずつ売っていくのが好ましいです。
ですが、もし20年目にちょうど暴落が来てしまったら、少しずつ売らずに全部売ってしまう人がほとんどだと思います。
「半分になったけど今のうちに売ればプラスで終われる」という希望がある状況で、どれだけの人が売らずにガマンできるでしょうか?
上記のシュミレーションではプラスにこそなっていますが、20年間でたった+25%の実質リターンではほぼ失敗のようなものです。
一括投資では、全ての上昇と下落を体験できますが、積立投資はそのタイミング次第で大きくリターンが左右されてしまいます。
積立投資は決してリスクとリターンを改善するための投資法ではありません。
ですが、積立投資では少額から始めるので、最初のうちは暴落が起きても損失は少ないです。
800万円を一括で投資する人と、40万円を20年間積立する人では、最終的な投資資金は同じでも最初に背負うリスクが全く違います。
800万円を一括投資をする人は一時的に数百万の損失になる覚悟で投資をする必要がありますが、積立する人は最初のうちは少額だし、積立するから暴落してもダメージは少ないです。
ですが、後半戦になるにつれ、背負うリスクが比例して大きくなっていきます。そしてやがては何百万の損失を覚悟しなければなりません。
そのため、積立投資は最初のうちは気楽でも、終わりが近づくにつれリスクがだんだん成長していくのです。コツコツ積立はだんだん利益も増えていきますが、下落リスクという名のプレッシャーも合わせて増えていく投資法です。
そのような意味では、下落の時に狼狽売りしてしまう心理が働きやすい投資法ともいえます。長期投資で最も大きなリスクは、株価が下落することではなく、ビビッて途中で売ってしまうリスクです。
長期投資は、自分自身との戦いでもあるのです。
そういった意味では、積立投資は一括投資よりもハイリスクな戦略といえるかもしれませんね。
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