楽天・米国高配当株式インデックス・ファンド vs 本家VYM

つみたて次郎です。

来年1月10日から販売が予定されている超絶ウルトラスーパー投資信託である「楽天・米国高配当株式インデックス・ファンド(以下:楽天VYM)」は、バンガードの人気ETF「バンガード・米国高配当株式(以下:本家VYM)」をひたすら買い付けるだけの商品です。

 

そのため、楽天VYMと本家VYMそれぞれの投資先は全く同じになります。各投資家の事情に合わせて、どちらかを選んでいくことになるでしょう。

ファンドの実質的な投資先は、米国の大型高配当株になります。詳しくは参考記事をどうぞ。

参考記事「バンガード・米国高配当株式(VYM)分析

確実にリターンに影響する信託報酬は、楽天VYMが0.2096%、本家VYMは0.08%となっており、ここだけ見れば圧倒的に本家VYMが有利に見えます。

しかし、楽天VYMは、本家VYMと違い配当金がファンド内で再投資される可能性が高いです。

無分配型投資信託は、発生した配当金にかかる国内課税を無視して再投資できるため、税制上非常に有利です。(売却時にキャピタルゲイン税として徴収される)

さらにVYMのような高配当ETF(配当利回りは3%弱)の場合、配当課税の影響を抑えることができるのは大きなアドバンテージとなります。

楽天VYMが無分配型であると仮定して、楽天VYM vs 本家VYMでリターンのシミュレーションをしてみたいと思います。

前回も似たような比較を行っていますが、今回はつみたて次郎のVYMに対する愛を感じ取ってもらうために、より詳細な条件で勝負させたいと思います(笑)

参考記事「楽天VT vs 本家VT
参考記事「楽天VTI vs 本家VTI

前回は、あえて楽天側に不利な条件を課すことで、「意外と投資信託も負けてないでしょ」という印象操作をさせていただいたのですが、今回は逆に楽天側に有利な条件でスタートしたいと思います。

 

共通条件

・トータルリターンは年7%(値上がり4%、配当利回り3%)で固定する。
・100万円を一括投資して、30年後のリターンで比較する。
・どちらもすべて特定口座(売却益課税20.315%)で運用するものとする。
・トラッキングエラー等の隠れコストは考慮せず、信託報酬=実質コストとする。

 

楽天VYM側

・信託報酬含む実質コストは0.2096%で固定とする。
・配当金は30年間一切でないとする。
・ファンド内の配当金は米国課税分10%を引いた2.7%を再投資されたとする。
ポイント還元率は0.048%とし、楽天VYMを追加で購入する資金とする。(楽天証券参考)

 

本家VYM側
・信託報酬含む実質コストは0.08%で固定とする。
・配当課税のうち米国課税分は一切取り戻せないこととする。
・配当金は、米国課税分10%と国内課税分20.315%を引いた2.151495%を再投資する。
・売買手数料は片道0.486%とする。(SBI証券参考)
・本来不可能だが、端数を出さずにピッタリ再投資できるものとする。

 

投資信託の一番の問題である隠れコストを無視するうえに、海外ETFの強みである外国税額控除による配当課税の取戻しは一切考慮しないという、清々しいくらい楽天に有利な条件です。

この条件であれば、楽天が勝てなければおかしいですね(笑)

結果は次の通りになりました。

課税後評価額 年平均リターン
楽天VYM 5,540,154円 5.8727%
本家VYM 5,159,333円 5.6217%

※1月4日修正…再度計算してみたところ、ほんのわずかに本家VYMの評価額・リターンが減少しました。0.25%の差という結論には影響ありませんでした。

100万円が30年で5倍以上になりました。

楽天VYMのほうが、年間で0.25%ほどリターンが良くなっています。

ただし、この比較には楽天VYMの隠れコスト本家VYMの米国課税回収分が含まれていません。

投資信託の場合、ETFに比べてトラッキングエラーが発生しやすいので、指数から下方乖離することがしばしばあります。

参考記事「楽天・バンガード・ファンド11月レポート

また、海外ETFの場合、外国税額控除を申請することで、米国にとられた配当課税(今回の場合は約0.3%)を一部取り戻せる可能性があります。

 

まとめると、次のような推測を立てることができます。

楽天VYM側の隠れコストと、本家VYM側の外国税額控除で取り戻せる配当課税の合計が、年間0.25%以内に収まるなら楽天VYMが税引後トータルリターンで勝つ(多分)

はっきり言って、年間0.25%以内は厳しい数字かと思います。

楽天VYMの隠れコストは未知数なので、年間で0.25%を超える可能性は十分あるし、外国税額控除も満額取り戻せるならそれだけで0.3%になります。

ただ、もともと外国税額控除をする気がない人や、収入が少なかったり住宅ローン控除などを使用していて取り戻せる配当課税額が少ない人であれば、楽天VYMにもチャンスはありそうです。

いずれにせよ、楽天VYMの隠れコストが年間0.25%に収まらなければ話になりませんので、楽天投信投資顧問さんには頑張ってもらいたいですね。

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楽天VYM

楽天・米国高配当株式インデックス・ファンド vs 本家VYM” に対して1件のコメントがあります。

  1. とっつぁん より:

    お疲れ様です!
    なるほど、厳しいですか〜(汗)
    積立NISA不採用だしNISAや課税ならETFだよね
    投資は401Kの月2万3000円だけ…な俺が偉そうな事言えないか(笑)
    401K採用なら組み込みます!

  2. つみたて次郎 より:

    楽天VYMは不確定要素が多すぎますからね。
    仮にリターンで勝ったとしても、繰上償還リスクなどを余計に背負うことになるので、どちらも選べる人は本家VYMが間違いないと思います。
    401kに採用されたら今のNYダウを全額スイッチングします(笑)

  3. ドシロートぢろう より:

    ど素人が書込み申し訳ありません
    高配当ファンド(分配なし)というのはありますが、逆に低配当な株を狙ったファンドが無いのはどうしてでしょうか?
    株は高配当に限るのでしょうか?

  4. つみたて次郎 より:

    コメントありがとうございます。
    確かにバンガードのVYMにも、その対となる低配当ETFは存在していないです(多分)
    私の個人的な考えなんですが、低配当な株式はおのずと成長株になりやすいので、FANG等を個別で保有することが多かったり、ETFであればQQQなどがその役割を兼ねているのではないかと思っています。
    いずれにせよ、高配当ファンドばかり充実していくのは、高配当戦略のリターンを押し下げる原因となりかねないので、つみたて次郎も危険視している部分です。

  5. ドシロートぢろう より:

    ありがとうございます
    ひょっとして、低配当というと言葉が悪いので、成長株ファンドなんて言い換えているのでしょうか?
    ただ、全米成長株ファンドなんてありませんよね?
    ほんと、無知で申し訳ないです

  6. つみたて次郎 より:

    低配当という言葉自体は悪い意味だし、過去低配当な銘柄のリターンは低かったので、商品として売り出しにくいのは確かですね。
    米国の成長株に絞った投資信託はあるかと思いますが、低コストで実用的な商品は特に聞いたことがないですね。(私が知らないだけかも)
    海外ETFであれば、「バンガード・米国グロース(VUG)」あたりがメジャーですね。
    http://siegeljiro.com/vug-bunseki
    少し古い記事ですが、よろしければご覧ください。

  7. あめ より:

    はじめまして。素人がおかしなことを言ってるかもしれませんが
    よろしくお願いします。

    楽天バンガードシリーズはETFの分配金をファンド内で再投資するとありますが
    ここがどうしても引っかかります。
    分配金を再投資するとファンドの基準金額が上がるということなのですか?
    それとも、以前からファンドに投資していた人の購入口数が増えるということでしょうか?

    前者だった場合、これから買おうとする人は分配金が再投資された割高な基準金額で
    買い付けされるということでしょうか。

    その場合、自分でETFを買ってその分配金を再投資するよりも
    積立している人は後から買うほど分配金込みの割高な基準金額で購入してるように思えるのですが
    実際はどうなのでしょうか?

    そこがネックでどうしてもこのファンドに投資する気持ちが起きません。
    特に日本のファンドは悪質なものが多いイメージがあり
    ETFから貰った分配金をファンドがごまかしてくすねているんじゃないかと疑っていたりもします。
    (いつまでたってもETFと基準金額が同じなら間違いなくETFの分配金が再投資されていないことになりますよね?)
    毎年2%ほど複利によりどんどん差が離れていくはずですよね?

    どうお考えか教えていただきたくよろしくお願いします。

  8. つみたて次郎 より:

    どうもはじめまして。
    分配金を再投資することにより、その分基準価格は上昇します。もともと保有している人の口数は変動しません。
    ですが、基準価格の大小とリターンには直接関係はありません。
    確かに、後から買う人は分配金込みの上がってしまった基準価格で買うことしかできないので、損しているように見えるかもしれません。
    ですが、逆に次のように考えてみるとどうでしょうか?

    「今まで保有してた人たちの配当金再投資分のリターンをもらうことができる」

    単純に配当金再投資の効果は、投資年数がたてばたつほど複利で拡大していくので、後から参加したほうが基準価格の上昇幅は間違いなく大きいでしょう(平均で考えると)
    ただし、それに応じた割高な基準価格で買わざるを得ないため、結局のところ損得はありません。
    分配金再投資による基準価格上昇のせいで不利になることはありませんのでご安心ください。

    日本のファンドに対する不信感というのは、これまでの歴史を考えれば無理もありません。
    ただ、通常の証券会社で販売されているような商品であれば、あまり気にすることはないかと思います。
    日本のファンドが悪質なのは、詐欺のような犯罪的なものより、高額な信託報酬や手数料を駆使した合法的なボッタくりが多いように思います。
    したがって、開示されている情報そのものは信じていいのではないかと思います。
    配当金をちょろまかすようなことはないと思いますが、トラッキングエラーや繰上償還リスクなどを考えると、まだまだ海外ETFの信頼性には到底かなわないのが現実です。

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