靴下と株の共通点

シーゲル二郎です。

イギリスの思想家、ジョン・ロック氏が挙げた話に、「靴下の話」というものがあります。要約すると次の通りです。

お気に入りの靴下に穴が開いてしまったので、あて布をして補強した。次に別のところが破けてしまったので、再度あて布をした。何度かあて布を繰り返し、やがてもともと靴下を構成していた繊維はすべてなくなってしまった。この靴下は、最初のお気に入りの靴下と同じであるといえるか。

人間の細胞も、10年くらいで全て入れ替わってしまうようですが、10年前も今も同じシーゲル二郎という人間です。

この問題は、アイデンティティ(同一性)について問いかけされたものです。

シーゲル二郎は哲学者ではないので、この結論を出すつもりはありません。ただ、この考えは、株式投資でも関係してくるのでこれから説明していきます。

シーゲル二郎は、この靴下に株式会社の事業を当てはめてみました。

例えば、シーゲル二郎が大好きなコングロマリット企業を例に挙げてお話しします。コングロマリットは、創業何十年何百年の老舗企業が多いです。昔ながらの製造業で、時代が進むについて古い機械は使われなくなり、製造される製品も変わっています。

 

出典「emerson.com

このグラフは、シーゲル二郎が愛してやまないエマソン・エレクトリック(EMR)の事業の移り変わりです。1990年からの移り変わりということで、たった27年前の話です。

事業はダイナミックに変動していますが、27年しかたっていないので、全て入れ替わってはいません。ただ、創業1890年の老舗なので、無くなってしまった部分も多いのではないでしょうか。

他にも、ゼネラル・エレクトリック(GE)は、エジソンが創立した企業で、家電メーカーとして出発しましたが、現在は重工業と金融が中心であり、家電部門はすべて売却してしまいました。全てが入れ替わった靴下状態です。

他にもコングロマリットではありませんが、FANGの一角で急成長企業とされるネットフリックス(NFLX)も似たような入れ替わりをしています。もともと郵送によるCDレンタル業者でしたが、現在はオンライン配信に完全にシフトしています。

多くの企業は、生き残るために、靴下の繊維を入れ替えて続けているのです。哲学的には分かりませんが、投資家にとっては、これらの企業は昔も今も同じです。なぜなら、事業が全て入れ替わったとしても、企業が倒産しない限り利益を得ることができるからです。

投資家にとっては、靴下の繊維がどれだけ変わろうが関係ありません。永続する企業が利益をもたらすのですから、生き残るために必要な入れ替えはどんどんするべきです。ただ、入れ替えにはコストを伴うので、むやみにしてはいけないだけです。

上記の企業たちは、ずっと同じお気に入りの靴下です。

ただし、逆のパターンもあります。例として、かつて世界一の自動車メーカーだったゼネラル・モーターズ(GM)を挙げます。トヨタ自動車に潰された負け組メーカーです(笑)

ガソリンが安い時代に調子に乗ってバカでかい車ばっかり作っていたので、原油高によるコンパクトカーブームに乗り遅れ、リーマンショックも重なり2009年に破綻し、一時は国有化されました。

現在は、アメリカ政府保有株式もなくなり、もとの民間企業として再スタートしています。

再スタート後も、今までと同じ「でかいダサい燃費悪い」のコンセプトに基づいた車をバンバン開発しています。車を買う側の顧客から見れば、昔も今も同じゼネラル・モーターズです。しかし、破綻前に投資をした株式は、事実上紙屑になっているので、投資家から見れば大きな違いです。新しい靴下を買い替えたようなものです。

長々と綴りましたが、何のことはない当たり前のことを言っているだけです。一番伝えたいのは、商品やブランドが永続すること=永続する企業というわけではないということです。

ゼネラル・モーターズは、アメリカの象徴的な企業ですから、ブランドそのものは生き残っています。ただ、投資としては一度倒産しているわけで大失敗です。シーゲル派は、コカ・コーラやマルボロというブランドは不滅だと思っていますが、あくまで投資家がその利益を享受するには、企業そのものが永続していることが必要です。例え倒産しても、これらのメガブランドはどこかに救済されるでしょう。ただ、もともとの投資家が利益を得ることもできません。

最近の生活必需品セクターの債務超過ブームも、万が一資金繰りに失敗すれば、ブランドは永続したとしても株主利益は途絶えます。

何よりも長期投資で大事なのは、企業が永続すること。商品やブランドが生き残ることではないということを忘れないでください。

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